過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とロクへの投資についてコメントします。
会社概要
ロク(Roku, Inc.、ROKU)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:映画・娯楽
株式時価総額:608億ドル(2021年6月末)
ロクは、アメリカに本拠を置く、メディアストリーミング端末の提供やプラットフォームを提供する企業です。
アメリカでは、ケーブルテレビや衛星放送からネットフリックス等のストリーミングサービスへ移行する人が増えており、ストリーミングサービスの利用において、ロクのプラットフォーム(メディアストリーミング端末等)を使用することが多いです。
利用者がロクのプラットフォームを通じてストリーミングサービスに加入するとロクの収益になるほか、膨大な視聴者のデータを活用してロクのプラットフォームで流れる広告を配信することで収益を得ています。
配信サービスであるロクチャンネルでは、サービスが先行したこともあり、有料、無料を問わず多くのコンテンツを備えている点が強みです。
また、アメリカのスマートテレビ(コネクテッドテレビ)の約4割に、ロクのOS(オペレーティングシステム)が搭載されており、市場拡大の恩恵を享受できます。
(参考)競合他社(映画・娯楽)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ウォルト・ディズニー(DIS) | 3,194 |
ネットフリックス(NFLX) | 2,342 |
ロク(ROKU) | 608 |
スポティファイ・テクノロジー(SPOT) | 526 |
ヴィヴェンディ(VIV.PA) | 356 |
テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME) | 262 |
ライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV) | 192 |
ワーナー・ミュージック・グループ(WMG) | 185 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は17.8億ドルと、前年度比+57.5%、過去5年間で年率+40.9%となりました。

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は6.5億ドル(前年同期比+81.2%)と、コンセンサス(6.2億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・プラットフォーム(広告等):5.3億ドル、前年同期比+117%
・ハードウェア:1.1億ドル、前年同期比+1%
セグメント別の売上高構成比は、プラットフォームが83%、ハードウェアが17%を占めます。
アクティブアカウント数は0.55億件(前年同期比+28%)となりました。
アクティブアカウント数は174億時間(前年同期比+19%)となりました。
ARPU(1ユーザーあたり年間平均売上)は36.46ドル(前年同期比+46%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の非GAAP EBITDAは1.5億ドルと、前年度比+319.3%となりました。
非GAAP EBITDAマージンは8.4%と、前年度の3.2%から改善しました。

セグメント別の粗利益率は、以下の通りです。
2021Q2の非GAAP EBITDAは1.2億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
FY2020のEPSは▲0.14ドルと、前年度比赤字幅縮小となりました。

2021Q2のEPSは0.52ドル(前年同期比黒字転換)と、コンセンサス(0.07ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1.5億ドルと、前年度比+981.1%、過去3年間で年率+58.4%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は8.3%と、前年度の1.2%から改善しました。

2021Q2の営業キャッシュフローは0.5億ドル(前年同期比+43.3%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは0.7億ドルと、前年度比黒字転換となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は3.7%と、前年度の▲6.3%から改善しました。

2021Q2のフリーキャッシュフローは0.4億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+98.4%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、8勝です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、6勝、2引き分けです。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 2.6 | 2.6 | ○ | -0.22 | -0.26 | ○ |
2019Q4 | 4.1 | 3.9 | ○ | -0.13 | -0.13 | ▲ |
2020Q1 | 3.2 | 3.1 | ○ | -0.45 | -0.45 | ▲ |
2020Q2 | 3.6 | 3.1 | ○ | -0.35 | -0.55 | ○ |
2020Q3 | 4.5 | 3.7 | ○ | 0.09 | -0.41 | ○ |
2020Q4 | 6.5 | 6.2 | ○ | 0.49 | -0.05 | ○ |
2021Q1 | 5.7 | 4.9 | ○ | 0.54 | -0.13 | ○ |
2021Q2 | 6.5 | 6.2 | ○ | 0.52 | 0.07 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+148.0%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。

2021Q2の株価上昇率は+41.0%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。

競合他社(映画・娯楽)の株価上昇率(VIV.PAはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ロク(ROKU)の株価上昇率は、2020年の1年間で+148%と、7社平均(+60%)を上回り、7社中第1位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+541%と、5社平均(+176%)を上回り、5社中第1位となりました。

2017年9月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から30%以上下落する局面が度々発生します。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを7.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+300%、2年目+100%、3年目〜6年目+50%、7年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+300%、2年目〜3年目+100%、4年目〜6年目+50%、7年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+300%、2年目+100%、3年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は496ドルとなります。
・メインシナリオ:496ドル
・アップサイドシナリオ:659ドル
・ダウンサイドシナリオ:286ドル
ロク(Roku, Inc.、ROKU)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は6.5億ドル(コンセンサス6.2億ドル)、EPSは0.52ドル(コンセンサス0.07ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
2021Q3のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:6.8億ドル
決算発表を受けて、株価は下落しました。
DCF法による目標株価は496ドルのため、2021年8月末時点の株価352ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が14.4倍(年率+31%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
コロナの恩恵を享受した銘柄のため、コロナ収束後に向けて株価は伸び悩む可能性が高いと言えますが、市場拡大は間違いなく、長期的にみて魅力的な企業です。
株価が下落した局面では投資を検討したいと思います。

