過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とブリストル・マイヤーズ スクイブへの投資についてコメントします。
会社概要
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers Squibb Company、BMY)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
サブ産業グループ:医薬品
株式時価総額:1,492億ドル(世界ランキング第91位、2021年6月末)
ブリストル・マイヤーズ スクイブは、アメリカに本拠を置く、1989年にブリストル・マイヤーズとスクイブが合併して設立された大手医薬品メーカーです。
大型新薬であるレブラミド(多発性骨髄腫治療薬)等を製造販売するセルジーンを、2019年に約740億ドルで買収しました。
(参考)競合他社(医薬品)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 4,338 |
ロシュHD(ROG.SW) | 3,257 |
イーライ・リリー(LLY) | 2,201 |
ファイザー(PFE) | 2,192 |
ノバルティス(NVS) | 2,048 |
メルク&カンパニー(MRK) | 1,969 |
ノボ・ノルディスク(NVO) | 1,923 |
アストラゼネカ(AZN) | 1,573 |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY) | 1,492 |
サノフィ(SNY) | 1,317 |
グラクソ・スミスクライン(GSK) | 1,002 |
ゾエティス(ZTS) | 885 |
メルクKGaA(MRK.DE) | 811 |
中外製薬(4519.T) | 655 |
バイエル(BAYN.DE) | 599 |
武田薬品工業(4502.T) | 531 |
第一三共(4568.T) | 377 |
アステラス製薬(4503.T) | 322 |
エーザイ(4523.T) | 283 |
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は425億ドルと、前年度比+62.6%、過去5年間で年率+20.8%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は117億ドル(前年同期比+15.5%)と、コンセンサス(112億ドル)を上回りました。
プロダクト別の売上高は、以下の通りです。
・レブラミド(多発性骨髄腫治療薬):32億ドル、前年同期比+11%
・エリキュース(抗擬固薬):28億ドル、前年同期比+29%
・オプジーボ(がん治療薬):19億ドル、前年同期比+16%
・オレンシア(リウマチ治療薬):8億ドル、前年同期比+9%
・ポマリスト(多発性骨髄腫治療薬):9億ドル、前年同期比+15%
・その他:21億ドル、前年同期比+10%
プロダクト別の売上高構成比は、レブラミド(多発性骨髄腫治療薬)が27%、エリキュース(抗擬固薬)が24%、オプジーボ(がん治療薬)が16%を占めます。
地域別の売上高構成比は、アメリカが63%、欧州が23%、その他地域が13%を占めます。
利益の推移
FY2020の営業利益は23億ドルと、前年度比▲61.9%、過去5年間で年率+3.6%となりました。
営業利益率は5.3%と、前年度の22.6%から悪化しました。
2021Q2の営業利益は16億ドル(前年同期比+74.1%)となりました。
FY2020の非GAAP EPSは6.44ドルと、前年度比+37.3%、過去5年間で年率+26.2%となりました。
2021Q2のEPSは0.47ドルと、コンセンサス(0.78ドル)を下回りました。
非GAAP EPSは1.93ドル(前年同期比+18.4%)と、コンセンサス(1.90ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは141億ドルと、前年度比+71.2%、過去5年間で年率+50.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は33.0%と、前年度の31.4%から改善しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは31億ドル(前年同期比▲31.9%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは133億ドルと、前年度比+80.3%、過去5年間で年率+67.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は31.3%と、前年度の28.2%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは29億ドル(前年同期比▲34.7%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元に積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の非GAAP 益利回り(PERの逆数)は10.4%、フリーキャッシュフロー利回りは9.5%と、バリュエーション面で割安感があります。
過去5年間の配当利回りは3%程度です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向は、利益(非GAAP)、キャッシュフローベースともに、40%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは1.84ドルと、前年度比+9.5%、過去5年間で年率+4.3%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+6.1%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、7勝、1敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、2勝、6敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、7勝、1敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 60 | 59 | ○ | 0.83 | 1.03 | × | 1.17 | 1.07 | ○ |
2019Q4 | 80 | 62 | ○ | -0.55 | 0.84 | × | 1.22 | 0.94 | ○ |
2020Q1 | 108 | 100 | ○ | -0.34 | 1.45 | × | 1.72 | 1.45 | ○ |
2020Q2 | 101 | 100 | ○ | -0.04 | 1.44 | × | 1.63 | 1.47 | ○ |
2020Q3 | 105 | 103 | ○ | 0.82 | 0.26 | ○ | 1.63 | 1.49 | ○ |
2020Q4 | 111 | 107 | ○ | -4.45 | 0.09 | × | 1.46 | 1.42 | ○ |
2021Q1 | 111 | 112 | × | 0.89 | 0.63 | ○ | 1.74 | 1.81 | × |
2021Q2 | 117 | 112 | ○ | 0.47 | 0.78 | × | 1.93 | 1.90 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は▲3.4%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率▲2.0%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。
2021Q2の株価上昇率は+5.8%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(医薬品)の株価上昇率(ROG.SWはスイスフラン、MRK.DE、BAYN.DEはユーロ建て、4519.T、4502.T、4568.T、4503.T、4523.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲3%と、19社平均(+6%)を下回り、19社中第13位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+1%と、19社平均(+46%)を下回り、19社中第17位となりました。
過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.3%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は94ドルとなります。
・メインシナリオ:94ドル
・アップサイドシナリオ:115ドル
・ダウンサイドシナリオ:62ドル
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers Squibb Company、BMY)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は117億ドル(コンセンサス112億ドル)、非GAAP EPSは1.93ドル(コンセンサス1.90ドル)と、コンセンサスを上回りました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・非GAAP EPS:7.35〜7.55ドル(コンセンサス7.46ドル)
DCF法による目標株価は94ドルのため、2021年8月末時点の株価67ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.7倍(年率+5%)、フリーキャッシュフローマージンが20%へ低下後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
セルジーンの買収により有利子負債が約400億ドルも増加したことが株価の重しとなっていますが、バリュエーション面では割安感があり、バリュー投資家にとっては魅力的(何がきっかけで株価が上昇するかは不明ですが)と言えます。