過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とゾエティスへの投資についてコメントします。
会社概要
ゾエティス(Zoetis、ZTS)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
サブ産業グループ:医薬品
株式時価総額:885億ドル(2021年6月末)
ゾエティスは、アメリカに本拠を置く、犬や猫、家畜などの動物向け医薬品等を製造・販売する業界トップ企業です。
ファイザーのアニマルヘルス事業が独立(Zoetisへ名称変更)し、2013年に上場しました。
(参考)競合他社(医薬品)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 4,338 |
ロシュHD(ROG.SW) | 3,257 |
イーライ・リリー(LLY) | 2,201 |
ファイザー(PFE) | 2,192 |
ノバルティス(NVS) | 2,048 |
メルク&カンパニー(MRK) | 1,969 |
ノボ・ノルディスク(NVO) | 1,923 |
アストラゼネカ(AZN) | 1,573 |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY) | 1,492 |
サノフィ(SNY) | 1,317 |
グラクソ・スミスクライン(GSK) | 1,002 |
ゾエティス(ZTS) | 885 |
メルクKGaA(MRK.DE) | 811 |
中外製薬(4519.T) | 655 |
バイエル(BAYN.DE) | 599 |
武田薬品工業(4502.T) | 531 |
第一三共(4568.T) | 377 |
アステラス製薬(4503.T) | 322 |
エーザイ(4523.T) | 283 |
売上高(種別、製品別、地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は67億ドルと、前年度比+6.6%、過去5年間で年率+7.0%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は19.5億ドル(前年同期比+25.8%)と、コンセンサス(18.3億ドル)を上回りました。
種別の売上高は、以下の通りです。
・家畜(牛):3.4億ドル、前年同期比+7%
・家畜(豚):1.6億ドル、前年同期比+10%
・家畜(他):2.0億ドル、前年同期比+7%
・ペット(犬・猫等):12.3億ドル、前年同期比+39%
種別の売上高構成比は、ペットが64%を占めています。
製品別の売上高は、以下の通りです。
・ワクチン:4.2億ドル、前年同期比+24%
・抗感染症薬:2.6億ドル、前年同期比+7%
・寄生虫駆除剤:4.6億ドル、前年同期比+50%
製品別の売上高構成比は、ワクチンが22%、抗感染症薬が13%、寄生虫駆除剤が24%を占めます。
地域別の売上高構成比は、アメリカが54%、海外が46%を占めます。
利益の推移
FY2020の営業利益は23億ドルと、前年度比+12.4%、過去5年間で年率+16.2%となりました。
営業利益率は34.0%と、前年度の32.3%から改善しました。
2021Q2の営業利益は7.2億ドル(前年同期比+30.9%)となりました。
FY2020の非GAAP EPSは3.85ドルと、前年度比+5.8%、過去5年間で年率+16.8%となりました。
2021Q2のEPSは1.07ドルと、コンセンサス(0.94ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは1.19ドル(前年同期比+33.7%)と、コンセンサス(1.09ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは21億ドルと、前年度比+18.4%、過去5年間で年率+26.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は31.9%と、前年度の28.7%から改善しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは4.8億ドル(前年同期比+9.8%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは17億ドルと、前年度比+25.3%、過去5年間で年率+30.6%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は25.1%と、前年度の21.3%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは3.7億ドル(前年同期比+5.7%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
過去5年間、自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.1%、フリーキャッシュフロー利回りは2.1%です。
過去5年間の配当利回りは0.5%前後です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、40%を下回りました。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは0.80ドルと、前年度比+21.2%、過去5年間では年率+19.4%となりました。
FY2021のDPSは1.00ドル(前年度比+25%)の予定です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.0%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、8勝、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、8勝、1敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、9勝です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 15.5 | 15.1 | ○ | 0.77 | 0.67 | ○ | 0.90 | 0.82 | ○ |
2019Q3 | 15.8 | 15.8 | ▲ | 0.90 | 0.76 | ○ | 0.94 | 0.88 | ○ |
2019Q4 | 16.7 | 16.4 | ○ | 0.80 | 0.76 | ○ | 0.92 | 0.88 | ○ |
2020Q1 | 15.3 | 15.0 | ○ | 0.88 | 0.78 | ○ | 0.95 | 0.87 | ○ |
2020Q2 | 15.5 | 13.5 | ○ | 0.79 | 0.61 | ○ | 0.89 | 0.64 | ○ |
2020Q3 | 17.9 | 16.3 | ○ | 1.00 | 0.81 | ○ | 1.10 | 0.91 | ○ |
2020Q4 | 18.1 | 17.4 | ○ | 0.75 | 0.77 | × | 0.91 | 0.87 | ○ |
2021Q1 | 18.7 | 17.3 | ○ | 1.17 | 0.85 | ○ | 1.26 | 1.04 | ○ |
2021Q2 | 19.5 | 18.3 | ○ | 1.07 | 0.94 | ○ | 1.19 | 1.09 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+25.0%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+28.1%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+18.3%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。
競合他社(医薬品)の株価上昇率(ROG.SWはスイスフラン、MRK.DE、BAYN.DEはユーロ建て、4519.T、4502.T、4568.T、4503.T、4523.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ゾエティス(ZTS)の株価上昇率(2020年)の株価上昇率は、2020年の1年間で+25%と、19社平均(+6%)を上回り、19社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+130%と、19社平均(+46%)を上回り、19社中第3位となりました。
2013年2月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
近年はドローダウンが小さく、最高値から5%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
比較的綺麗な上昇トレンドです。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを3.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜10年目+12%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は210ドルとなります。
・メインシナリオ:210ドル
・アップサイドシナリオ:244ドル
・ダウンサイドシナリオ:142ドル
ゾエティス(Zoetis、ZTS)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は19.5億ドル(コンセンサス18.3億ドル)、非GAAP EPSは1.19ドル(コンセンサス1.09ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンス(引き上げ)は、以下の通りです。
・売上高:76.25〜77.00億ドル(コンセンサス76.0億ドル)
・EPS:4.09〜4.19ドル
・非GAAP EPS:4.47〜4.55ドル(コンセンサス4.53ドル)
DCF法による目標株価は210ドルのため、2021年7月末時点の株価205ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.3倍(年率+9%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
自社株買いを実施しているので、発行済株式数の減少による株価上昇も可能です。
割安感はありませんが、長期的に株式市場全体を上回る株価上昇率を見込んでいます。
投資継続です。