過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とイーライリリーへの投資についてコメントします。
会社概要
イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company、LLY)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
サブ産業グループ:医薬品
株式時価総額:2,201億ドル(世界ランキング第44位、2021年6月末)
イーライリリーは、アメリカに本拠を置く、大手医薬品メーカーです。
(参考)競合他社(医薬品)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 4,338 |
ロシュHD(ROG.SW) | 3,257 |
イーライリリー(LLY) | 2,201 |
ファイザー(PFE) | 2,192 |
ノバルティス(NVS) | 2,048 |
メルク&カンパニー(MRK) | 1,969 |
ノボ・ノルディスク(NVO) | 1,923 |
アストラゼネカ(AZN) | 1,573 |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY) | 1,492 |
サノフィ(SNY) | 1,317 |
グラクソ・スミスクライン(GSK) | 1,002 |
ゾエティス(ZTS) | 885 |
メルクKGaA(MRK.DE) | 811 |
中外製薬(4519.T) | 655 |
バイエル(BAYN.DE) | 599 |
武田薬品工業(4502.T) | 531 |
第一三共(4568.T) | 377 |
アステラス製薬(4503.T) | 322 |
エーザイ(4523.T) | 283 |
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は245億ドルと、前年度比+9.9%、過去5年間で年率+7.6%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は67億ドル(前年同期比+22.6%)と、コンセンサス(66億ドル)を上回りました。
プロダクト別の売上高は、以下の通りです。
・トルリシティ(糖尿病治療薬):15億ドル、前年同期比+25%
・ヒューマログ(糖尿病治療薬):6億ドル、前年同期比+9%
・アリムタ(抗がん剤):6億ドル、前年同期比+13%
・トルツ(乾癬治療薬):6億ドル、前年同期比+44%
・ジャディアンス(糖尿病治療薬):4億ドル、前年同期比+36%
・ヒューマリン(糖尿病治療薬):3億ドル、前年同期比+1%
・ベージニオ(抗がん剤):3億ドル、前年同期比+64%
・その他:24億ドル、前年同期比+20%
プロダクト別の売上高構成比は、トルリシティ(糖尿病治療薬)が23%を占めます。
地域別の売上高構成比は、アメリカが58%、欧州が17%、日本が11%、中国が5%、その他が10%を占めます。
利益の推移
FY2020の営業利益は61億ドルと、前年度比+21.8%、過去3年間で年率+44.6%となりました。
営業利益率は24.7%と、前年度の22.3%から改善しました。
2021Q2の営業利益は14億ドル(前年同期比+17.3%)となりました。
FY2020の非GAAP EPSは7.93ドルと、前年度比+31.3%、過去5年間で年率+18.2%となりました。
2021Q2のEPSは1.53ドルと、コンセンサス(1.66ドル)を下回りました。
非GAAP EPSは1.87ドル(前年同期比+29.0%)と、コンセンサス(1.89ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは65億ドルと、前年度比+34.4%、過去5年間で年率+17.0%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は26.5%と、前年度の21.7%から改善しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは18億ドル(前年同期比▲28.8%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは51億ドルと、前年度比+34.4%、過去5年間で年率+21.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は20.8%と、前年度の17.0%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは14億ドル(前年同期比▲37.0%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元に積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の非GAAP 益利回り(PERの逆数)は4.7%、フリーキャッシュフロー利回りは3.3%です。
FY2020の配当利回りは1.8%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(非GAAP利益)は、40〜60%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは3.07ドルと、前年度比+14.8%、過去5年間で年率+8.8%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲3.1%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、4勝、4敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、4勝、4敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、5勝、3敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 55 | 55 | × | 1.37 | 1.38 | × | 1.48 | 1.41 | ○ |
2019Q4 | 61 | 59 | ○ | 1.64 | 1.54 | ○ | 1.73 | 1.52 | ○ |
2020Q1 | 59 | 55 | ○ | 1.60 | 1.35 | ○ | 1.75 | 1.48 | ○ |
2020Q2 | 55 | 58 | × | 1.55 | 1.53 | ○ | 1.89 | 1.60 | ○ |
2020Q3 | 57 | 59 | × | 1.33 | 1.61 | × | 1.54 | 1.71 | × |
2020Q4 | 74 | 73 | ○ | 2.32 | 2.06 | ○ | 2.75 | 2.39 | ○ |
2021Q1 | 68 | 70 | × | 1.49 | 2.10 | × | 1.87 | 2.10 | × |
2021Q2 | 67 | 66 | ○ | 1.53 | 1.66 | × | 1.87 | 1.89 | × |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+28.5%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+14.9%と、S&P500(年率+12.9%)を上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+22.9%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。
競合他社(医薬品)の株価上昇率(ROG.SWはスイスフラン、MRK.DE、BAYN.DEはユーロ建て、4519.T、4502.T、4568.T、4503.T、4523.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
イーライリリー(LLY)の株価上昇率は、2020年の1年間で+28%と、19社平均(+6%)を上回り、19社中第4位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+100%と、19社平均(+46%)を上回り、19社中第4位となりました。
過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目〜5年目+7%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は258ドルとなります。
・メインシナリオ:258ドル
・アップサイドシナリオ:291ドル
・ダウンサイドシナリオ:213ドル
イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company、LLY)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は67億ドル(コンセンサス66億ドル)と、コンセンサスを上回りました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:268〜274億ドル(コンセンサス273億ドル)
・非GAAP EPS:7.80〜8.00ドル(コンセンサス7.92ドル)
DCF法による目標株価は258ドルのため、2021年8月末時点の株価258ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.3倍(年率+8%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
大手医薬品メーカーのなかでは、業績・株価ともに安定感があります。


