過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とウィックスへの投資についてコメントします。
会社概要
ウィックスドットコム(Wix.com、WIX)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:イスラエル
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:インターネットサービスおよびインフラストラクチャー
株式時価総額:164億ドル(2021年6月末)
ウィックスは、イスラエルに本拠を置く、専門知識がなくても簡単にホームページを作ることができるウェブプラットフォームを運営・開発する企業です。
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は9.9億ドルと、前年度比+29.9%、過去5年間で年率+37.2%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は3.16億ドル(前年同期比+34.0%)と、コンセンサス(3.12億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・クリエイティブ サブスクリプション:2.36億ドル、前年同期比+24%
・ビジネス ソリューション:0.81億ドル、前年同期比+75%
Wix Paymentの急拡大によって、ビジネス ソリューションの売上高が急増中です。
FY2020のGPV(決済総額)は54億ドル(前年比+126%)であり、FY2021は100億ドル超を見込んでいます。
登録者数、ARR(年間経常収益)の推移
登録者数は2.10億人(前年同期比+15%)となりました。
サブスクリプションのARR(年間経常収益)は9.7億ドル(前年同期比+22%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
2021Q2の粗利益は1.9億ドル(前年同期比+17.8%)となりました。
セグメント別の粗利益率は、以下の通りです。
2021Q2のEPSは0.60ドルと、コンセンサス(▲1.40ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは▲0.28ドルと、コンセンサス(▲0.41ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは1.5億ドルと、前年度比▲1.0%、過去3年間で年率+21.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は15.0%と、前年度の19.7%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは0.2億ドル(前年同期比▲56.3%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは1.3億ドルと、前年度比+1.3%、過去3年間で年率+22.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は13.1%と、前年度の16.8%から悪化しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは0.2億ドル(前年同期比▲67.5%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、前年度比+7.8%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、6勝、2敗、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、2勝、6敗、1引き分けです。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、8勝、1敗です。
売上高(ドル) | EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 1.9 | 1.8 | ○ | -0.33 | -0.40 | ○ | 0.34 | 0.17 | ○ |
2019Q3 | 2.0 | 2.0 | × | -0.34 | -0.33 | × | 0.41 | 0.32 | ○ |
2019Q4 | 2.0 | 2.1 | × | -0.42 | -0.29 | × | 0.39 | 0.29 | ○ |
2020Q1 | 2.2 | 2.2 | ▲ | -0.76 | -0.76 | ▲ | -0.01 | -0.02 | ○ |
2020Q2 | 2.4 | 2.3 | ○ | -1.06 | -0.50 | × | -0.26 | 0.25 | × |
2020Q3 | 2.5 | 2.5 | ○ | -1.03 | -0.89 | × | -0.14 | -0.15 | ○ |
2020Q4 | 2.8 | 2.7 | ○ | -1.13 | -0.91 | × | -0.03 | -0.11 | ○ |
2021Q1 | 3.0 | 3.0 | ○ | -2.16 | -1.57 | × | -0.54 | -0.64 | ○ |
2021Q2 | 3.2 | 3.1 | ○ | 0.60 | -1.40 | ○ | -0.28 | -0.41 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+104.2%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+61.5%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+4.0%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(インターネットサービスおよびインフラストラクチャー)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
ウィックス(WIX)の株価上昇率は、2020年の1年間で+104%と、10社平均(+130%)を下回りました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+334%と、9社平均(+580%)を下回りました。
2013年11月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+80%、3年目+50%、4年目〜8年目+30%、9年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+100%、3年目〜4年目+50%、5年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目+100%、3年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は254ドルとなります。
・メインシナリオ:254ドル
・アップサイドシナリオ:370ドル
・ダウンサイドシナリオ:158ドル
ウィックスドットコム(Wix.com、WIX)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は3.16億ドル(コンセンサス3.12億ドル)、非GAAP EPSは▲0.28ドル(コンセンサス▲0.41ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:12.80〜12.90億ドル(+29〜30%)
DCF法による目標株価は254ドルのため、2021年8月末時点の株価222ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が6.7倍(年率+21%)、フリーキャッシュフローマージンが7%まで低下後、10年後に向けて20%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ショッピファイのように急成長するか、非常に興味深いです。