過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とベリサインへの投資についてコメントします。
会社概要
ベリサイン(VeriSign、VRSN)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:インターネットサービスおよびインフラストラクチャー
株式時価総額:256億ドル(2021年6月末)
ベリサインは、アメリカに本拠を置く、「.com」や「.net」などのドメインを管理するインターネットインフラ企業です。
ベリサインのように、ドメインを管理する機関をドメインレジストリと呼び、ユーザーが直接ドメインレジストリにドメインを登録することは手続きが煩雑なことから、ゴーダディ(GoDaddy)やGMOインターネットのように、ドメインの登録申請を代行・管理する事業者をドメインレジストラと呼びます。
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は12.7億ドルと、前年度比+2.7%、過去5年間で年率+3.6%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は3.3億ドル(前年同期比+4.8%)と、コンセンサス(3.3億ドル)を上回りました。
ドメイン名登録数の推移
「.com」と「.net」のドメイン名登録数は1.71億(前年同期比+5.2%)となりました。
うち、「.com」が1.57億、「.net」が0.136億です。
新規ドメイン名登録数は1,170万(前年同期比+5%)となりました。
利益の推移
FY2020の営業利益は8.2億ドルと、前年度比+2.2%、過去5年間で年率+6.3%となりました。
営業利益率は65.2%と、前年度の65.5%とほぼ同水準となりました。
2021Q2の営業利益は2.1億ドル(前年同期比+3.0%)となりました。
FY2020のEPSは7.07ドルと、前年度比+37.3%、過去5年間で年率+20.2%となりました。
2021Q2のEPSは1.31ドル(前年同期比▲0.8%)と、コンセンサス(1.33ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは7.3億ドルと、前年度比▲3.1%、過去5年間で年率+2.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は57.7%と、前年度の61.2%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは1.4億ドル(前年同期比▲33.8%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは6.9億ドルと、前年度比▲3.8%、過去5年間で年率+2.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は54.3%と、前年度の57.9%から悪化しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは1.2億ドル(前年同期比▲38.9%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.8%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、4勝、1敗、4引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9半期中、7勝、2敗です。
売上高(ドル) | EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 3.1 | 3.1 | ▲ | 1.24 | 1.18 | ○ |
2019Q3 | 3.1 | 3.1 | ▲ | 1.30 | 1.19 | ○ |
2019Q4 | 3.1 | 3.1 | ▲ | 1.26 | 1.28 | × |
2020Q1 | 3.1 | 3.1 | ○ | 2.86 | 1.24 | ○ |
2020Q2 | 3.1 | 3.1 | ○ | 1.32 | 1.23 | ○ |
2020Q3 | 3.2 | 3.2 | ○ | 1.49 | 1.26 | ○ |
2020Q4 | 3.2 | 3.2 | ▲ | 1.38 | 1.29 | ○ |
2021Q1 | 3.2 | 3.2 | × | 1.33 | 1.30 | ○ |
2021Q2 | 3.3 | 3.3 | ○ | 1.31 | 1.33 | × |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+12.3%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+19.9%と、S&P500(年率+12.9%)を上回りました。
2021Q2の株価上昇率は+14.6%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。
競合他社(インターネットサービスおよびインフラストラクチャー)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
ベリサイン(VRSN)の株価上昇率は、2020年の1年間で+12%と、10社平均(+130%)を下回りました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+89%と、9社平均(+580%)を下回りました。
過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+5%、4年目〜10年目+4%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は189ドルとなります。
・メインシナリオ:189ドル
・アップサイドシナリオ:237ドル
・ダウンサイドシナリオ:155ドル
ベリサイン(VeriSign、VRSN)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は3.3億ドルと、コンセンサス(3.3億ドル)を上回ったものの、EPSは1.31ドルと、コンセンサス(1.33ドル)を下回る実績となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:13.22〜13.31億ドル
DCF法による目標株価は189ドルのため、2021年6月末時点の株価228ドルより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.5倍(年率+4%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである54%が10年間継続することを想定したので、値上げ等によってさらに売上高が増加すればより高い株価上昇が期待できます。
安定してコツコツ稼ぐ点は魅力的です。