過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とKLAへの投資についてコメントします。
会社概要
KLA(KLA Corporation、KLAC)
ホームページ(SEC):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:半導体・半導体製造装置
サブ産業グループ:半導体素材・装置
KLAは、アメリカに本拠を置く、世界シェア断トツトップである半導体検査装置(シリコンウエハー欠陥検査装置やパターン検査装置等)などの開発・製造・販売等を行う、大手半導体製造装置メーカーです。
FY2023の全体の売上高のうち、10%以上を占める顧客は、台湾セミコンダクターとサムスン電子です。
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2023(2022年7月-2023年6月期)の売上高は105億ドルと、前年度比+13.9%、過去5年間で年率+21.1%となりました。
主要製品別の売上高は、以下の通りです。
・ウエハー検査:43億ドル、前年度比+8%
・パターニング:28億ドル、前年度比+36%
・特殊半導体プロセス:5億ドル、前年度比+19%
・プリント配線基盤/ディスプレイ/電子部品検査:4億ドル、前年度比▲33%
・サービス:21億ドル、前年度比+4%
主要製品別の売上高構成比は、ウエハー検査が41%、パターニングが27%、特殊半導体プロセスが5%、プリント配線基盤/ディスプレイ/電子部品検査が4%、サービスが20%を占めます。
地域別の売上高構成比は、中国が27%、台湾が24%、韓国が18%、米国が12%、日本が8%、欧州/イスラエルが6%、その他アジアが4%を占めます。
半導体の市場規模の見込み
2022年の半導体の市場規模は5,741億ドル(前年度比+3%)となりました。
WSTSによると、2023年予想は5,201億ドル(前年度比▲9%)、2024年予想は5,884億ドル(前年度比+13%)です。
2022年の半導体製造装置の市場規模は1,085億ドル(前年度比+6%)となりました。
利益の推移
FY2023の営業利益は40億ドルと、前年度比+9.3%、過去5年間で年率+21.0%となりました。
営業利益率は38.1%と、前年度の39.7%から悪化しました。
FY2023のEPSは24.15ドルと、前年度比+10.2%、過去5年間で年率+36.5%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2023の営業キャッシュフローは37億ドルと、前年度比+10.8%、過去5年間で年率+24.5%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は35.0%と、前年度の36.0%から悪化しました。
FY2023のフリーキャッシュフローは33億ドルと、前年度比+10.7%、過去5年間で年率+23.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は31.7%と、前年度の32.6%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2023の益利回り(PERの逆数)は5.0%、フリーキャッシュフロー利回りは4.9%です。
FY2023の配当利回りは1.1%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去3年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、30%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2023のDPSは5.20ドルと、前年度比+23.8%、過去5年間で年率+12.9%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.3%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
ROICは40%程度と、投資効率は高いです。
株価上昇率
FY2023(2022年7月から2023年6月末)の株価上昇率は+52.0%と、S&P500(+17.6%)を上回りました。
過去5年間(2018年7月から2023年6月末)の株価上昇率は年率+36.5%と、S&P500(年率+10.4%)を大きく上回りました。
過去10年間(2014年1月から2023年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
半導体は市況の影響を受けやすいため、市場平均と比較してドローダウンが大きいです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.3%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲5%、2年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+0%、2年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲10%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は575ドルとなります。
・メインシナリオ:575ドル
・アップサイドシナリオ:791ドル
・ダウンサイドシナリオ:369ドル
KLA(KLA Corporation、KLAC)への投資について
FY2023の売上高は105億ドル(前年度比+13.9%)、EPSは24.15ドル(前年度比+10.2%)となりました。
DCF法による目標株価は575ドルのため、2023年12月末時点の株価581ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.8倍(年率+6%)、フリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ウエハー欠陥検査装置等は非常に高いシェアを有していることから、競合他社と比較して利益率やキャッシュフローマージンが高い点は魅力的です。