台湾セミコンダクター(TSM)決算分析と目標株価 半導体ファウンドリー(受託生産)トップ 回路線幅の微細化が強み

台湾セミコンダクター情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と台湾セミコンダクターへの投資についてコメントします。

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会社概要

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)

ホームページ(IR):リンク先

国:台湾

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体

株式時価総額:6,239億ドル(世界ランキング第10位、2021年12月末)

台湾セミコンダクターは、台湾に本拠を置く、市場シェア5割を超える半導体ファウンドリー(受託生産)トップ企業です。

半導体は技術革新が早く製造には多額のコストがかかるため、エヌビディア等の半導体メーカーは、自社で半導体を設計し、台湾セミコンダクターのようなファウンドリーに製造を委託(生産設備を持たないファブレス)することが増えています(インテルは設計と製造を自社で行っています)。

ファウンドリーは資本集約的ビジネスのため、新規参入が困難で寡占化される傾向にあります。

また、半導体は回路線幅が狭いほど演算速度や省電力性能が高まるため、年々回路線幅が細くなっています。

台湾セミコンダクターは、5nmの販売や3nm、2nmの開発に向けて、他社より一歩も二歩も先に進んでいるなど、非常に高い技術力を有しています。

アップルの最新のiPhoneに搭載されている独自チップをはじめ、エヌビディアやクアルコム等大手メーカーのチップを製造しています。

(参考)競合他社(半導体)の株式時価総額(2021年12月末)

 株式時価総額
エヌビディア(NVDA)7,329億ドル
台湾セミコンダクター(TSM)6,239億ドル
ブロードコム(AVGO)2,747億ドル
インテル(INTC)2,095億ドル
クアルコム(QCOM)2,048億ドル
テキサス・インスツルメンツ(TXN)1,741億ドル
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)1,738億ドル
マイクロン・テクノロジー(MU)1,043億ドル
SKハイニックス(000660.KS)757億ドル
アナログ・デバイセズ(ADI)923億ドル
メディアテック(2454.TW)682億ドル
NXPセミコンダクターズ(NXPI)606億ドル
インフォニオン・テクノロジーズ(IFX.DE)603億ドル
ザイリンクス(XLNX)530億ドル
マイクロチップ・テクノロジー(MCHP)483億ドル
STマイクロエレクトロニクス(STM)448億ドル

 

売上高(用途別、回路線幅別、地域別)の推移

FY2021(2021年1-12月期)の売上高は1兆5,874億台湾ドルと、前年度比+18.5%、過去5年間で年率+10.9%となりました。

 

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は4,382億台湾ドル(157億USドル、前年同期比+21.2%)と、コンセンサス(158億USドル)を下回りました。

 

2021Q4のウエハーの出荷数は373万枚(12インチ換算)と、前年比+15%となりました。

 

用途別の売上高構成比は、スマートフォンが44%、高性能コンピューティング(HPC)が37%を占めます。

 

回路線幅別のウエハー(半導体チップのもととなる円盤状の板)売上高構成比は、5ナノメートルが23%、5〜7ナノメートルが50%を占め、微細化が進んでいます。

台湾セミコンダクター

 

地域別の売上高構成比は、北米が66%、中国が12%を占めます。

 

半導体の市場規模の見込み

2020年の半導体の市場規模は4,404億ドル(前年度比+7%)となりました。

WSTSによると、2021年予想は5,530億ドル(前年比+26%)、2022年予想は6,010億ドル(前年比+9%)です。

 

利益の推移

FY2021の営業利益は8,195億台湾ドルと、前年度比+18.5%、過去5年間で年率+10.9%となりました。

営業利益率は40.9%と、前年度の42.3%から悪化しました。

 

2021Q4の営業利益は1,828億台湾ドル(前年同期比+16.3%)、営業利益率は41.7%と、ガイダンス(39%〜41%)を上回りました。

 

FY2021のEPSは23.01台湾ドルと、前年度比+15.2%、過去5年間で年率+12.3%となりました。

 

2021Q4のEPSは6.41台湾ドル(ADR:1.15USドル)と、前年同期比+16.3%となり、コンセンサス(ADR:1.11USドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2021の営業キャッシュフローは1兆1,122億ドルと、前年度比+35.2%、過去5年間で年率+15.6%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は70.1%と、前年度の61.4%から改善しました。

 

2021Q4の営業キャッシュフローは3,782億台湾ドル(前年同期比+45.9%)となりました。

 

2021Q4の設備投資額は2,356億台湾ドル(前年同期比+166%)となりました。

 

FY2021のフリーキャッシュフローは2,730億ドルと、前年度比▲13.5%、過去5年間で年率+5.6%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は17.2%と、前年度の23.6%から悪化しました。

 

2021Q4のフリーキャッシュフローは1,426億台湾ドル(前年同期比▲16.3%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いは実施なしです。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2021の益利回り(PERの逆数)は3.7%、フリーキャッシュフロー利回りは1.7%です。

FY2021の配当利回りは1.8%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2021の配当性向は、利益ベースで48%、キャッシュフローベースで104%となりました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2021のDPSは11.0台湾ドルと、前年度比+10.0%、過去5年間で年率+9.5%となりました。

 

投資効率(ROIC、ROE)の推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは20%を超えており、投資効率は高いです。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、5勝、5敗です。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、10勝です。

 
売上高(億ドル)GAAP EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q394930.620.61
2019Q4104106×0.730.72
2020Q11031020.750.68
2020Q2104105×0.780.70
2020Q31211190.900.81
2020Q4127130×0.970.95
2021Q11291270.960.92
2021Q2133133×0.930.91
2021Q31491471.081.03
2021Q4157158×1.151.11

 

株価上昇率

FY2021の株価上昇率は+16.0%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+16.0%)と同水準となりました。

過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+27.6%と、VT ETF(年率+12.0%)を大きく上回りました。

 

2021Q4の株価上昇率は+6.0%と、VT ETF(+5.5%)を上回りました。

 

競合他社(半導体)の株価上昇率(000660KSは韓国ウォン建て、2454.TWは台湾ドル建て、IFX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

台湾セミコンダクター(TSM、ADR)の株価上昇率は、2021年の1年間で+10%と、16社平均(+36%)を下回り、16社中第15位となりました。

2019年1月から2021年12月の3年間では+226%と、16社平均(+244%)を下回り、16社中第5位となりました。

 

過去10年間(2012年1月から2021年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から10〜15%程度下落する局面が度々発生するため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

トレンドラインを上回っています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.7%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億台湾ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜7年目+15%、8年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は686台湾ドルとなります。

・メインシナリオ:686台湾ドル

・アップサイドシナリオ:798台湾ドル

・ダウンサイドシナリオ:426台湾ドル

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)への投資について

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は157億USドルと、コンセンサス(158億USドル)を下回りましたが、EPS(ADR)は1.15USドルと、コンセンサス(1.11USドル)を上回りました。

2022Q1のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:166〜172億USドル

・営業利益率:42.0〜44.0%

DCF法による目標株価は686台湾ドルのため、2021年12月末時点の株価615台湾ドル(ADR:120USドル)より高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.1倍(年率+12%)、フリーキャッシュフローマージンが10年後に向けて25%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

設備投資額が当面増加することから、フリーキャッシュフローベースでは苦戦しますが、半導体メーカーのなかでは勝ち組で居続けることが想定されます。

半導体・半導体製造装置の中では、エヌビディアとASMLへ投資していますが、機会があれば台湾セミコンダクターへも投資したいと思います。

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