台湾セミコンダクター(TSMC)決算分析と目標株価 回路線幅の微細化が強み 利益率が改善し、キャッシュフロー拡大

情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と台湾セミコンダクターへの投資についてコメントします。

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会社概要

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)

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国:台湾

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体

株式時価総額:4,844億ドル(世界ランキング第11位、2020年12月末)

浮動株調整後株式時価総額:4,647億ドル(2020年12月末、MSCI)

台湾セミコンダクターは、台湾に本拠を置く、市場シェア5割を超える半導体ファウンドリー(受託生産)トップ企業です。

半導体は技術革新が早く製造には多額のコストがかかるため、半導体メーカーは自社で半導体を設計し、台湾セミコンダクターのようなファウンドリーに製造を委託することが増えています(インテルは設計と製造を自社で行っています)。

ファウンドリーは資本集約的ビジネスのため、新規参入が困難で寡占化される傾向にあります。

また、半導体は回路線幅が狭いほど演算速度や省電力性能が高まるため、年々回路線幅が細くなっています。

台湾セミコンダクターは、5nmや3nmの開発・販売に向けて、他社より一歩も二歩も先に進んでいるなど、非常に高い技術力を有しています。

アップルの最新のiPhoneに搭載されている独自チップをはじめ、エヌビディアやクアルコム等大手メーカーのチップを製造しています。

世界株式市場で第8位、台湾株式市場で第1位、情報技術セクターで第3位、半導体・半導体製造装置で第1位の浮動株調整後株式時価総額で、半導体に占める台湾セミコンダクターの浮動株調整後株式時価総額比率は20%です。

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売上高(用途別、回路線幅別、地域別)の推移

2021Q1(2021年1−3月期)の売上高は3,624億台湾ドル(129億ドル)と、前年同期比+16.7%となり、ガイダンス(127〜130億ドル)の範囲内で、コンセンサス(127億ドル)を上回りました。

用途別の売上高構成比は、スマートフォンが45%、高性能コンピューティング(HPC)が35%を占めます。

回路線幅別のウエハー(半導体チップのもととなる円盤状の板)売上高構成比は、5ナノメートルが14%、5-7ナノメートルが49%を占め、微細化が進んでいます。

地域別の売上高構成比は、北米が67%を占め、中国向けの売上高は低水準で推移しました。

(参考)過去5年間の売上高

売上高は、過去5年間で年率+9.7%となりました。

ウエハーの出荷数、設備稼働率

2021Q1のウエハーの出荷数は336万枚(12インチ換算)と、前年比+15%となりました。

(参考)過去5年間のウエハーの出荷数

FY2020のウエハーの出荷数は1,240万枚(12インチ換算)と、前年度比+23%となりました。

利益の推移

2021Q1(2021年1−3月期)の営業利益は1,505億台湾ドルと、前年同期比+17.1%となり、営業利益率は41.5%と、前年同期の41.4%から改善し、ガイダンス(39.5%〜41.5%)の上限となりました。

2021Q1のEPSは5.39台湾ドル(ADR:0.96ドル)と、前年同期比+19.5%となり、コンセンサス(ADR:0.92ドル)を上回りました。

(参考)過去5年間のEPS

EPSは、過去5年間で年率+11.1%となりました。

キャッシュフローの推移

2021Q1(2021年1−3月期)の営業キャッシュフローは2,278億台湾ドルと、前年同期比+12.2%となり、営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は62.9%と、前年同期の65.4%から悪化しました。

2021Q1の設備投資額/売上高は68.4%と、前年同期の62.0%から増加しました。

2021Q1のフリーキャッシュフローは▲202億台湾ドルと、前年同期比赤字転落となり、フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲5.6%と、前年同期の3.4%から悪化しました。

(参考)過去5年間の営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、過去5年間で年率+9.2%となりました。

(参考)過去5年間のフリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローは、過去5年間で年率+3.3%となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いは実施なしです。

(参考)過去5年間の株主還元

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.8%、フリーキャッシュフロー利回りは2.3%です。

FY2020の配当利回りは1.9%と、株価急騰を受けて低下しました。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは10.00台湾ドルと、前年度比+5.3%、過去5年間で年率+10.8%となりました。

投資効率(ROIC、ROE)の推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは20%を超えており、投資効率は高いです。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、4勝、3敗です。

以下のグラフは、EPS(ADR)のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去7四半期中、7勝です。

株価上昇率

過去1年間(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+114.2%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率+54.9%を大きく上回りました。

競合他社(半導体)の株価上昇率(000660KSは韓国ウォン建て、2454.TWは台湾ドル建て、IFX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

台湾セミコンダクター(TSM、ADR USドル建て)の株価上昇率は、2020年の1年間で+88%と、15社平均(+49%)を上回り、15社中第3位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+175%と、15社平均(+131%)を上回り、15社中第2位となりました。

過去10年間(2011年4月から2021年3月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から10〜15%程度下落する局面が度々発生するため、その時が狙い目です。

(参考)過去5年間の株価上昇率(会計年度ベース)

(参考)株価の推移(月末株価)

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.7%、金利が1%上昇した場合は6.6%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億台湾ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+13%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は576台湾ドルとなります。

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)への投資について

2021Q1(2021年1−3月期)の売上高は129億ドル(コンセンサス127億ドル)、EPS(ADR)は0.96ドル(コンセンサス(0.92ドル)を上回りました。

2021Q2のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:129〜132億ドル

・営業利益率:38.5〜40.5%

FY2021の設備投資額は300億ドル程度の見込みです。

DCF法による目標株価は576台湾ドルのため、2021年3月末時点の株価587台湾ドル(ADR:118ドル)とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.1倍(年率+12%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである24%がFY2021に4%まで大きく低下後、10年後に向けて25%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

設備投資額が当面増加することから、フリーキャッシュフローベースでは苦戦しますが、半導体メーカーのなかでは勝ち組で居続けることが想定されます。

無理せず下落局面で投資したいと思います。

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