台湾セミコンダクター(TSM)決算分析と目標株価 回路線幅の微細化が強み 利益率が改善し、キャッシュフロー拡大

台湾セミコンダクター情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出と台湾セミコンダクターへの投資についてコメントします。

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会社概要

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)

ホームページ(IR):リンク先

国:台湾

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体

株式時価総額:6,232億ドル(世界ランキング第10位、2021年6月末)

浮動株調整後株式時価総額:5,261億ドル(2021年6月末、MSCI)

台湾セミコンダクターは、台湾に本拠を置く、市場シェア5割を超える半導体ファウンドリー(受託生産)トップ企業です。

半導体は技術革新が早く製造には多額のコストがかかるため、エヌビディア等の半導体メーカーは、自社で半導体を設計し、台湾セミコンダクターのようなファウンドリーに製造を委託(生産設備を持たないファブレス)することが増えています(インテルは設計と製造を自社で行っています)。

ファウンドリーは資本集約的ビジネスのため、新規参入が困難で寡占化される傾向にあります。

また、半導体は回路線幅が狭いほど演算速度や省電力性能が高まるため、年々回路線幅が細くなっています。

台湾セミコンダクターは、5nmの販売や3nmの開発に向けて、他社より一歩も二歩も先に進んでいるなど、非常に高い技術力を有しています。

アップルの最新のiPhoneに搭載されている独自チップをはじめ、エヌビディアやクアルコム等大手メーカーのチップを製造しています。

台湾株式市場で第1位、情報技術セクターで第3位の浮動株調整後株式時価総額で、半導体に占める台湾セミコンダクターの浮動株調整後株式時価総額比率は20%です。

(参考)競合他社(半導体)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
台湾セミコンダクター(TSM)6,232
エヌビディア(NVDA)4,985
インテル(INTC)2,267
ブロードコム(AVGO)1,956
テキサス・インスツルメンツ(TXN)1,776
クアルコム(QCOM)1,612
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)1,141
マイクロン・テクノロジー(MU)953
SKハイニックス(000660.KS)775
アナログ・デバイセズ(ADI)635
NXPセミコンダクターズ(NXPI)567
メディアテック(2454.TW)546
インフォニオン・テクノロジーズ(IFX.DE)525
マイクロチップ・テクノロジー(MCHP)410
STマイクロエレクトロニクス(STM)329

売上高(用途別、回路線幅別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は1兆3,393億台湾ドルと、前年度比+25.2%、過去5年間で年率+9.7%となりました。

 

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は3,722億台湾ドル(133億USドル)と、前年同期比+19.8%となり、ガイダンス(129〜132億USドル)を上回ったものの、コンセンサス(133億USドル)を若干下回りました。

 

用途別の売上高構成比は、スマートフォンが42%、高性能コンピューティング(HPC)が39%を占めます。

 

回路線幅別のウエハー(半導体チップのもととなる円盤状の板)売上高構成比は、5ナノメートルが18%、5〜7ナノメートルが49%を占め、微細化が進んでいます。

 

地域別の売上高構成比は、北米が64%、中国が11%を占めます。

 

ウエハーの出荷数、設備稼働率

2021Q2のウエハーの出荷数は345万枚(12インチ換算)と、前年比+16%となりました。

 

(参考)過去5年間のウエハーの出荷数

FY2020のウエハーの出荷数は1,240万枚(12インチ換算)と、前年度比+23%となりました。

 

半導体の市場規模の見込み

2020年の半導体の市場規模は4,404億USドル(前年度比+7%)となりました。

WSTSによると、2021年予想は5,272億USドル(前年度比+20%)、2022年予想は5,734億USドル(前年度比+9%)です。

 

利益の推移

FY2020の営業利益は5,668億台湾ドルと、前年度比+52.1%、過去5年間で年率+12.1%となりました。

営業利益率は42.3%と、前年度の34.8%から改善しました。

 

2021Q2の営業利益は1,457億台湾ドル(前年同期比+11.1%)、営業利益率は39.1%と、ガイダンス(38.5%〜40.5%)の範囲内となりました。

 

FY2020のEPSは19.97台湾ドルと、前年度比+49.9%、過去5年間で年率+11.1%となりました。

 

2021Q2のEPSは5.18台湾ドル(ADR:0.93USドル)と、前年同期比+11.2%となり、コンセンサス(ADR:0.91USドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは8,227億ドルと、前年度比+33.7%、過去5年間で年率+9.2%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は61.4%と、前年度の57.5%から改善しました。

 

2021Q2の営業キャッシュフローは1,874億台湾ドル(前年同期比+10.0%)となりました。

 

2021Q2の設備投資額は1,670億台湾ドル(前年同期比+31.8%)となりました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは3,154億ドルと、前年度比+117.0%、過去5年間で年率+3.3%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は23.6%と、前年度の13.6%から改善しました。

 

2021Q2のフリーキャッシュフローは205億台湾ドル(前年同期比▲53.1%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いは実施なしです。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.8%、フリーキャッシュフロー利回りは2.3%です。

FY2020の配当利回りは1.9%と、株価急騰を受けて低下しました。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは10.00台湾ドルと、前年度比+5.3%、過去5年間で年率+10.8%となりました。

 

投資効率(ROIC、ROE)の推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは20%を超えており、投資効率は高いです。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去8四半期中、4勝、4敗です。

 

以下のグラフは、EPS(ADR)のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去8四半期中、8勝です。

 

株価上昇率

FY2020の株価上昇率は+60.1%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+14.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+30.0%と、VT ETF(年率+9.9%)を大きく上回りました。

 

2021Q2の株価上昇率は+1.4%と、VT ETF(+6.5%)を下回りました。

 

競合他社(半導体)の株価上昇率(000660KSは韓国ウォン建て、2454.TWは台湾ドル建て、IFX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

台湾セミコンダクター(TSM、ADR USドル建て)の株価上昇率は、2020年の1年間で+88%と、15社平均(+49%)を上回り、15社中第3位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+175%と、15社平均(+131%)を上回り、15社中第2位となりました。

 

過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から10〜15%程度下落する局面が度々発生するため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

トレンドラインを大きく上回っており、下落リスク、もしくは日柄調整が必要です。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを5.7%、金利が1%上昇した場合は6.6%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億台湾ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+13%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲80%、2年目〜4年目+100%、5年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は576台湾ドルとなります。

 

台湾セミコンダクター(Taiwan Semicondutor、2330.TW、TSM)への投資について

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は133億USドルと、コンセンサス(133億USドル)を若干下回ったものの、EPS(ADR)は0.93USドルと、コンセンサス(0.91USドル)を上回りました。

2021Q3のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:146〜149億USドル

・営業利益率:38.5〜40.5%

FY2021の設備投資額は300億USドル程度の見込みです。

DCF法による目標株価は576台湾ドルのため、2021年6月末時点の株価595台湾ドル(ADR:120USドル)とほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.1倍(年率+12%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである24%がFY2021に4%まで大きく低下後、10年後に向けて25%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

設備投資額が当面増加することから、フリーキャッシュフローベースでは苦戦しますが、半導体メーカーのなかでは勝ち組で居続けることが想定されます。

株価がトレンドラインを大きく超えており日柄調整が必要なため、無理せず株価が大きく下落した局面で投資したいと思います。

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