アドバンテスト(6857)決算分析と目標株価 メモリ半導体向け自動検査装置(テスタ)で世界シェアトップ

アドバンテスト情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアドバンテストへの投資についてコメントします。

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会社概要

アドバンテスト(Advantest Corporation、6857.T)

ホームページ(有報):リンク先

国:日本

セクター:情報技術

産業グループ:半導体・半導体製造装置

サブ産業グループ:半導体製造装置

株式時価総額:1.5兆円(日本ランキング第92位、2020年12月末)

アドバンテストは、日本に本拠を置く、半導体後工程で使用される半導体テスタ(完成した半導体が正しく設計され、製造されているかを電気的に確認する装置)の開発・製造・販売・保守サービス等を行う半導体製造装置メーカーです。

半導体テスタは、メモリテスタ(DRAM、NANDフラッシュなどのメモリ半導体用)と、SoCテスタ(スマホなどメモリ以外半導体用)に分けられ、メモリテスタは世界シェアトップで、半導体テスタ全体ではテラダイン🇺🇸と拮抗しています。

メモリテスタは、DRAMやNANDのメモリ市況に大きく影響を受ける一方、SoCテスタは、スマホの高機能化・高複雑化によって必要なテスタ台数が増加します。

以下のグラフ(WSTS公表)は、半導体IC製品別の市場規模の増加率(前年度比)ですが、メモリはブレ幅が大きいことがわかります。

FY2020の売上高のうち、上位5顧客が30%(FY2019:37%)を占めます。

 

(参考)競合他社(半導体製造装置)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
ASML(ASML)2,908
アプライド・マテリアルズ(AMAT)1,302
ラムリサーチ(LRCX)928
東京エレクトロン(8035.T)676
KLA(KLAC)497
テラダイン(TER)223
エンフェーズ・エナジー(ENPH)249
アドバンテスト(6857.T)176
レーザーテック(6920.T)177
ASMインターナショナル(ASM.AS)160
インテグリス(ENTG)167

 

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は3,128億円と、前年度比+13.4%、過去5年間で年率+14.0%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・半導体/部品テスト:2,072億円、前年度比+5%

・メカトロニクス関連:400億円、前年度比+10%

・サービス:668億円、前年度比+57%

 

セグメント別の売上高構成比は、半導体/部品テストが66%、メカトロニクス関連が13%、サービスが21%を占めます。

 

半導体/部品テストの売上高のうち、SoCテスタは1,631億円(前年度比+15%)、メモリテスタは641億円(前年度比+25%)となりました。

 

テスタの世界シェアは43%、うちSoCテスタが38%、メモリテスタが56%となりました。

 

地域別の売上高構成比は、日本が4%、米州が10%、欧州が3%、アジアが83%を占めます。

 

半導体の市場規模の見込み

2020年の半導体の市場規模は4,404億ドル(前年度比+7%)となりました。

WSTSによると、2021年予想は5,272億ドル(前年度比+20%)、2022年予想は5,734億ドル(前年度比+9%)です。

 

2020年の半導体製造装置の市場規模は712億ドル(前年度比+19%)となりました。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は707億円と、前年度比+20.5%、過去5年間で年率+41.2%となりました。

営業利益率は22.6%と、前年度の21.3%から改善しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020のEPSは352円と、前年度比+30.8%、過去5年間で年率+58.3%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは678億円と、前年度比+2.0%、過去5年間で年率+54.4%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は21.7%と、前年度の24.1%から悪化しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは546億円と、前年度比▲5.3%、過去5年間で年率+67.3%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は17.4%と、前年度の20.9%から悪化しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020は、140億円の自社株買いを実施しました。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の益利回り(PERの逆数)は3.6%、フリーキャッシュフロー利回りは2.9%です。

FY2020の配当利回りは1.2%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向(利益)は、30%程度です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは118円と、前年度比+43.9%、過去5年間で年率+42.6%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率+2.5%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去3年間のROICは30〜40%程度と、投資効率は高いです。

 

株価上昇率

FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+123.0%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。

過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+56.2%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく上回りました。

 

競合他社(半導体製造装置)の株価上昇率(8035.T、6857.T、6920.Tは日本円建て、ASM.ASはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

アドバンテスト(6857.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+25%と、11社平均(+112%)を下回り、11社中第11位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+270%と、11社平均(+860%)を下回り、11社中第3位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から30〜40%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

トレンドラインを大きく上回っており、下落リスク、もしくは日柄調整が必要です。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを7.6%、金利が1%上昇した場合は8.5%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+15%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+15%、2年目〜6年目+10%、7年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は8,635円となります。

 

アドバンテスト(Advantest Corporation、6857.T)への投資について

FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は3,128億円(前年度比+13.4%)、営業利益は707億円(前年度比+20.5%)、純利益は698億円(前年度比+30.4%)と、増収増益となりました。

FY2021のガイダンスは、以下の通りです。

・売上高:3,500億円、前年度比+5.9%

・営業利益:850億円、前年度比+20.2%

・純利益:640億円、前年度比▲8.3%

DCF法による目標株価は8,635円のため、2021年5月末時点の株価9,890円より低い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.1倍(年率+7%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが25%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

過去5年間は、利益・キャッシュフローともに急拡大し、株価も急騰しました。

好調な半導体市況が見込まれるものの、割高感が見られます。

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