過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とインテルへの投資についてコメントします。
会社概要
インテル(Intel、INTC)
ホームページ(SEC):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:半導体・半導体製造装置
サブ産業グループ:半導体
株式時価総額:2,267億ドル(世界ランキング第41位、2021年6月末)
インテルは、アメリカに本拠を置く、半導体(CPU等)の設計・製造・販売を行う大手半導体メーカーです。
エヌビディアなどの半導体メーカーは自社で半導体を設計し、台湾セミコンダクターのようなファウンドリー(受託生産)に製造を委託(生産設備を持たないファブレス)することが増えている一方、インテルは設計と製造を自社で行っています。
(参考)競合他社(半導体)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
台湾セミコンダクター(TSM) | 6,232 |
エヌビディア(NVDA) | 4,985 |
インテル(INTC) | 2,267 |
ブロードコム(AVGO) | 1,956 |
テキサス・インスツルメンツ(TXN) | 1,776 |
クアルコム(QCOM) | 1,612 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) | 1,141 |
マイクロン・テクノロジー(MU) | 953 |
SKハイニックス(000660.KS) | 775 |
アナログ・デバイセズ(ADI) | 635 |
NXPセミコンダクターズ(NXPI) | 567 |
メディアテック(2454.TW) | 546 |
インフォニオン・テクノロジーズ(IFX.DE) | 525 |
マイクロチップ・テクノロジー(MCHP) | 410 |
STマイクロエレクトロニクス(STM) | 329 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は779億ドルと、前年度比+8.2%、過去5年間で年率+7.1%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は196億ドル(前年同期比▲0.5%)、非GAAP売上高は185億ドルと、コンセンサス(178億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・データセンター:65億ドル、前年同期比▲9%
・IOT:13億ドル、前年同期比+61%
・不揮発性メモリーソリューションズ:11億ドル、前年同期比▲34%
・プログラマブルソリューションズ:5億ドル、前年同期比▲3%
・パソコン向け半導体:101億ドル、前年同期比+6%
セグメント別の売上高構成比は、パソコン向け半導体が52%、データセンターが33%を占めます。
半導体の市場規模の見込み
2020年の半導体の市場規模は4,404億ドル(前年度比+7%)となりました。
WSTSによると、2021年予想は5,272億ドル(前年度比+20%)、2022年予想は5,734億ドル(前年度比+9%)です。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は237億ドルと、前年度比+7.5%、過去5年間で年率+11.1%となりました。
2021Q2の営業利益は55億ドル(前年同期比▲2.7%)となりました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020の非GAAP EPSは5.30ドルと、前年度比+8.8%、過去5年間で年率+16.3%となりました。
2021Q2のEPSは1.24ドルと、コンセンサス(1.05ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは1.28ドル(前年同期比+4.1%)と、コンセンサス(1.07ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは354億ドルと、前年度比+6.8%、過去5年間で年率+13.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は45.4%と、前年度の46.1%とほぼ同水準となりました。
2021Q2の営業キャッシュフローは87億ドル(前年同期比▲21.6%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは211億ドルと、前年度比+24.8%、過去5年間で年率+12.6%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は27.1%と、前年度の23.5%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは51億ドル(前年同期比▲33.6%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は9.9%、フリーキャッシュフロー利回りは10.0%と、バリュエーション面で割安感があります。
FY2020の配当利回りは2.6%、総還元利回りは9.4%と高水準です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去3年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、40%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは1.32ドルと、前年度比+4.8%、過去5年間で年率+6.6%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.9%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、8勝です(※2021Q2は非GAAPベース)
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、6勝、2敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、7勝、1引き分けです。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 192 | 181 | ○ | 1.35 | 1.16 | ○ | 1.42 | 1.24 | ○ |
2019Q4 | 202 | 192 | ○ | 1.58 | 1.23 | ○ | 1.52 | 1.25 | ○ |
2020Q1 | 198 | 187 | ○ | 1.31 | 1.20 | ○ | 1.45 | 1.27 | ○ |
2020Q2 | 197 | 186 | ○ | 1.19 | 1.04 | ○ | 1.23 | 1.11 | ○ |
2020Q3 | 183 | 183 | ○ | 1.02 | 1.04 | × | 1.11 | 1.11 | ▲ |
2020Q4 | 200 | 175 | ○ | 1.42 | 1.04 | ○ | 1.52 | 1.11 | ○ |
2021Q1 | 197 | 180 | ○ | 0.82 | 1.07 | × | 1.39 | 1.14 | ○ |
2021Q2 | 185 | 178 | ○ | 1.24 | 1.05 | ○ | 1.28 | 1.07 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は▲16.8%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+7.7%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。
2021Q2の株価上昇率は▲12.3%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(半導体)の株価上昇率(000660KSは韓国ウォン建て、2454.TWは台湾ドル建て、IFX.DEはユーロ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
インテル(INTC)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲17%と、15社平均(+49%)を下回り、15社中第15位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+8%と、15社平均(+131%)を下回り、15社中第15位となりました。
過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から20%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目+4%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲20%、2年目〜10年目▲1%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は68ドルとなります。
・メインシナリオ:68ドル
・アップサイドシナリオ:79ドル
・ダウンサイドシナリオ:55ドル
インテル(Intel、INTC)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の非GAAP 売上高は185億ドル(コンセンサス178億ドル)、非GAAP EPSは1.28ドル(コンセンサス1.07ドル)と、コンセンサスを大きく上回る実績となりました。
2021Q3のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:191億ドル
・非GAAP EPS:1.10ドル(コンセンサス1.02ドル)
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:776億ドル
・非GAAP EPS:4.80ドル(コンセンサス4.11ドル)
決算発表を受けて、株価は下落しました。
DCF法による目標株価は68ドルのため、2021年6月末時点の株価56ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.3倍(年率+3%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが20%まで低下(FY2020:27%)することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
半導体セクターの中では負け組のインテルですが、益利回りやフリーキャシュフロー利回りが高く、割安株となっています。