過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とZホールディングスへの投資についてコメントします。
会社概要
Zホールディングス(Z Holdings Corporation、4689.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・メディアおよびサービス
株式時価総額:3.0兆円(日本ランキング第45位、2020年12月末)
Zホールディングスは、日本に本拠を置く、コマース事業、メディア事業(検索/ディスプレイ広告等)、その他事業を展開する、ソフトバンクグループに属する持株会社です。
2019年に10月にヤフーをZホールディングスへ社名変更、2019年11月にZOZOを連結子会社化、2021年3月にLINEと経営統合しました。
Zホールディングの大株主第1位は、Aホールディングス(ソフトバンク50%、ネイバー🇰🇷50%)の約65%です。
(参考)競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アルファベット(GOOG) | 16,606 |
フェイスブック(FB) | 9,859 |
テンセントHD/騰訊控股(0700.HK) | 7,224 |
クワイショウ・テクノロジー/快手科技(1024.HK) | 1,074 |
スナップ(SNAP) | 1,067 |
バイドゥ/百度(BIDU) | 709 |
カカオ(035720.KS) | 622 |
ネイバー(035420.KS) | 550 |
ツイッター(TWTR) | 549 |
ピンタレスト(PINS) | 503 |
マッチ・グループ(MTCH) | 446 |
ZHD(4689.T) | 390 |
ジロー・グループ(ZG) | 303 |
ヤンデックス(YNDX) | 252 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆2,058億円と、前年度比+14.5%、過去5年間で年率+13.1%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・コマース:8,403億円、前年度比+17%
・メディア:3,406億円、前年度比+1%
・その他:324億円、前年度比+305%
セグメント別の売上高構成比は、コマースが69%、メディアが28%を占めます。
eコマース取扱高は3.2兆円(前年度比+24%)、うちショッピングは1.5兆円(前年度比+45%)、リユースは0.9兆円(前年度比+6%)、その他物販ECは0.3兆円(前年度比+4%)、サービス/デジタルECは0.6兆円(前年度比+24%)となりました。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は1,621億円と、前年度比+6.5%、過去5年間で年率▲6.3%となりました。
営業利益率は13.4%と、前年度の14.5%から悪化しました。
FY2020の調整後EBITDAは2,948億円と、前年度比+18.8%、過去5年間で年率+5.6%となりました。
調整後EBITDAマージンは24.5%と、前年度の23.6%から改善しました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020のEPSは14.01円と、前年度比▲17.0%、過去5年間で年率▲14.2%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは2,079億円と、前年度比▲13.9%、過去5年間で年率+14.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は17.2%と、前年度の22.9%から悪化しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは1,372億円と、前年度比▲12.3%、過去5年間で年率+15.4%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は11.4%と、前年度の14.9%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2018を除いて、自社株買いの実施はなしです。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.5%、フリーキャッシュフロー利回りは5.0%です。
FY2020の配当利回りは1.0%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(利益)は、40〜60%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは5.66円と、前年度比▲37.2%、過去5年間で年率▲8.9%となりました。
FY2021のDPSは5.56円(前年度比+0.0%)の予定です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.2%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
ROICは低下傾向で、投資効率は低いです。
株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+58.2%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+2.8%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく下回りました。
競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株価上昇率(0700.HKは香港ドル建て、035720.KS、035420.KSは韓国ウォン建て、4689.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ZHD(4689.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+35%と、12社平均(+102%)を下回り、12社中第10位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+21%と、11社平均(+104%)を下回り、11社中第10位となりました。
過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
ドローダウンは大きいです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.9%、金利が1%上昇した場合は6.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜4年目+10%、5年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜5年目+5%、6年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は649円となります。
Zホールディングス(Z Holdings Corporation、4689.T)への投資について
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は1兆2,058億円(前年度比+14.5%)、調整後EBITDAは2,948億円(前年度比+18.8%)、純利益は701億円(前年度比▲14.1%)と、増収減益となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:1兆5,200億円〜1兆5.700億円(前年度比+26.1〜30.2%)
・調整後EBITDA:3,030億円〜3,130億円(前年度比+2.8〜6.2%)
DCF法による目標株価は649円のため、2021年5月末時点の株価515円より高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.5倍(年率+10%)、10年後にフリーキャッシュフローマージンが10%まで低下することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ZHDの大株主であるソフトバンクは、通信事業による安定的な収益から高い配当利回りが魅力的で、ソフトバンクの大株主であるソフトバンクグループは、アリババおよび投資会社としての高い期待利益が魅力的です。
ZHDは、日本国内でのネットショッピングや広告、フィンテックでそこそこの高い成長を当面は期待できることから、ソフトバンクやソフトバンクグループとは異なる魅力があります。