アメリカの家計純資産
FRB(連邦準備銀行)が発表した「Financial Accounts of the United States」によると、アメリカの家計純資産(2021年3月末)は136.9兆ドルと、1年前(2020年3月末)と比較して+23.0%、3ヶ月前(2020年12月末)と比較して+3.8%となり、過去最高を更新しました。
不動産は37.6兆ドルと、1年前と比較して+9.7%、3ヶ月前と比較して+2.6%となりました。

金融資産に関する内容は、下記記事にあります。

純資産総額に占める不動産の割合は27.4%と、1年前(30.7%)と比較して低下しました。
不動産は増加したものの、大幅な株価上昇を受けて、相対的に不動産の比率が低下しました。

1999年12月末から2020年12月末の家計純資産の推移は、以下の通りです。
2020年12月末の家計純資産は、1999年12月末と比較して3.05倍、金融資産は3.05倍、金融負債は2.51倍、不動産は2.93倍、その他非金融資産は2.45倍となりました。

上位1%で家計純資産全体の32.1%、上位10%で69.8%を占め、一部に富が集中しています。

日本の家計純資産
アメリカでは、FRBが不動産も含めた家計資産全体のデータを四半期毎に公表していますが、日本では、日本銀行が日本の家計全体の金融資産や負債に関するデータは四半期毎に公表しているものの、不動産および不動産も含めた家計資産全体は開示されていません。
内閣府が毎年公表する「国民経済計算」は、不動産も含めた家計資産のデータがあります。
国民経済計算は、一国の経済を共通の国際基準により把握するマクロ統計となるため、日本銀行「資金循環統計」や総務省統計局「全国家計構造調査」とは数値が異なります。
内閣府「国民経済計算」によると、1999年12月末から2019年12月末の家計純資産の推移は、以下の通りです。
2019年12月末の家計純資産は、1999年12月末と比較して1.04倍、金融資産は1.26倍、金融負債は0.99倍、土地は0.71倍、固定資産等は0.99倍となりました。
なお、2019年12月末の純資産に占める土地の割合は27%、固定資産等(一部不動産)も含めた割合は43%となり、後述する総務省統計局の不動産割合(約70%)とは数値の乖離があります。

1999年末から2019年末の家計の土地および土地の価格変動(前年末比)の推移は以下の通りです。
20年間の間に家計の土地は295兆円減り、このうち価格変動は▲161兆円となりました。
日本の家計資産は不動産に偏り、その不動産の価格が失われた20〜30年の間に下落したことが、アメリカ等と比較して家計資産の増加が限定的だったと言えます。
なお、2016年以降の土地の価格は上昇し続けており、世界的にみて日本(グローバル不動産投資家にとって東京への注目度は高い)の不動産価格は比較的割安(利回りから金利を差し引いたスプレッドが高い)であることから、このまま右肩上がりを期待します。

総務省統計局が発表する5年に1度の全国家計構造調査は、一定の世帯数を対象に、家計簿や世帯票、年収・貯蓄等調査票などを調査した結果で、世帯の所得分布等を知るうえでは非常に有用です。
総務省統計局が2021年5月に発表した「2019年全国家計構造調査」によると、2019年10月末の家計純資産総額の平均値は2,834万円、うち金融純資産は824万円、宅地(土地)が1,614万円、住宅資産が396万となりました。

純資産総額に占める不動産(宅地/住宅資産)の比率は、総世帯平均で71%と高い水準です。
金融資産は、現預金と保険に偏り、株式等のリスク性資産への投資が相対的に少ない日本人ですが、不動産神話という言葉があった通り、純資産の多くが不動産へ偏っています。

純資産総額別の世帯割合は、以下の通りです。
純資産総額150万円未満の世帯は全体の22.4%(金融資産は27.4%)を占め、中央値は1,422万円(金融資産は650万円)です、
純資産総額1億円以上の世帯が5%と、不動産も加えた富裕層(1億円以上)の定義だと、富裕層の比率は高いです。

年代別の純資産総額と、純資産総額に占める不動産(宅地/土地資産)の割合は、以下の通りです。
40歳代以下は、金融資産<金融負債であることから、不動産の割合が100%を超えています。
・30歳未満:純資産257万円、不動産割合100.6%
・30歳代:純資産870万円、不動産割合136.8%
・40歳代:純資産1,904万円、不動産割合100.4%
・50歳代:純資産2,907万円、不動産割合71.7%
・60歳代:純資産4,035万円、不動産割合59.4%
・70歳代:純資産4,090万円、不動産割合61.7%
・80歳以上:純資産4,386万円、不動産割合65.3%

(参考)年代別の金融資産、金融負債、宅地資産、住宅資産

五分位階級(二人以上の世帯のうち勤労者世帯の年収を低い方から高い方へ順番に並べて5等分)毎の純資産総額と、純資産総額に占める不動産(宅地/土地資産)の割合は、以下の通りです。
・年収下位20%:1,471万円、不動産割合82.2%
・年収下位20〜40%:1,591万円、不動産割合97.6%
・年収上位40〜60%:1,837万円、不動産割合97.8%
・年収上位60〜80%:2,359万円、不動産割合89.7%
・年収上位20%:4,324万円、不動産割合76.6%

(参考)年収別の金融資産、金融負債、宅地資産、住宅資産





