日本の過去1年間の家計の金融資産と金融負債、貯蓄種類別の推移
日本銀行が発表した「資金循環統計」によると、2021年3月末(速報値)の家計金融資産は1,946兆円と、1年前(2020年3月末)と比較して+7.1%、3ヶ月前(2020年12月末)と比較して+0.7%となり、過去最高を更新しました。
金融負債は362兆円と、1年前と比較して+2.2%、3ヶ月前と比較して+0.9%となりました。

アメリカとの比較は、以下の通りです。
アメリカの家計金融資産は109.6兆ドルと、1年前(2020年3月末)と比較して+25.7%、3ヶ月前(2020年12月末)と比較して+3.8%となり、日本と同様、過去最高を更新しました。
好調な株式市場により、家計金融資産に占める株式比率が高いアメリカの方が日本より高い増加率となりました。
なお、アメリカは政府による現金給付を行っている一方、コロナによる消費が抑制されていることから、アメリカの現預金が大きく増加している点も、アメリカの家計金融資産の増加の一因と言えそうです。

貯蓄種類別の推移は、以下の通りです。
コロナショックを受けて株式が大きく下落した2020年3月末から、株式市場が大きく上昇したことから、1年前と比較して、株式は+32%、投資信託は+34%の増加となりました。
・現預金:1,056兆円、1年前比+5.5%、3ヶ月前比▲0.1%
・債券:26兆円、1年前比▲0.0%、3ヶ月前比+0.3%
・株式:195兆円、1年前比+32.1%、3ヶ月前比+6.2%
・投資信託:84兆円、1年前比+33.9%、3ヶ月前比+7.2%
・保険:379兆円、1年前比+1.1%、3ヶ月前比+0.3%
・年金:154兆円、1年前比+1.8%、3ヶ月前比+0.2%
・その他:52兆円、1年前比▲1.6%、3ヶ月前比▲7.8%

アメリカとの比較は、以下の通りです。
前述したように、アメリカの現預金の増加率が日本より高い点が特徴的です。

2021年3月末の貯蓄の種類別比率は、現預金が54.3%、債券が1.4%、株式が10.0%、投資信託が4.3%、保険が19.5%、年金が7.9%、その他が2.7%を占めます。
よく言われることですが、日本は現預金(アメリカは13.3%)と保険(アメリカは1.8%)の比率が約74%と高く、年金も積極的に運用するアメリカと比較して保守的な運用(日本の個人が自ら運用する企業型確定拠出年金は現預金で置いている比率が高い)であることから、低リスク資産の比率は8割超(アメリカは現預金と保険の合計約15%)と非常に高い水準です。

日本の1999年12月末以降の金融資産と金融負債、名目GDPに対する金融資産の推移
1999年12月末から2020年12月末の金融資産と金融負債の推移は、以下の通りです。
2020年12月末の金融資産は、1999年12月末と比較して1.38倍、金融負債(同期間)は0.87倍、金融純資産は1.59倍となりました。

アメリカとの比較は、以下の通りです。
アメリカの金融資産は3.05倍(1999年12月末比)と、日本と比較して金融資産が大きく増加しており、日本の家計金融資産が預貯金や保険で大部分を占めることが大きな要因の1つと言えます。
なお、金融負債(日本もアメリカも不動産ローンが多い)は日本が減少する一方、アメリカは大きく増加しており、インフレ率が低く人口減少に直面する日本と比較して、アメリカは不動産を購入することで資産形成につながっていることから、このような差がついたと思われます。

名目GDPに対する金融資産の推移は、以下の通りです。
日本の名目GDPがこの21年間の間ほぼ横ばい(1999年対比1.02倍)のなか、名目GDPに対する金融資産の比率は、1999年12月末の2.7倍から、2020年12月末は3.6倍と上昇しました。

アメリカとの比較は以下の通りです。
日本の名目GDPがほぼ横ばいだったことも、日本の株式市場が世界に劣後し、またインフレ率も低水準となり、金融資産の差が拡大したとも言えます。
なお、昔と異なり、日本にいても世界およびアメリカの株式市場へ低コストで投資することが可能であることから、入金力(投資へ回せるお金)さえあれば、アメリカ人の資産形成と大きな差はないと言えます(ただし、人口増と相対的に高いインフレ率により、日本よりアメリカの不動産価格が上昇していることから、ハンデはもちろんあります。給与水準が低いことも・・・)。

アメリカの過去1年間の家計の金融資産と金融負債、貯蓄種類別の推移
FRB(連邦準備銀行)が発表した「Financial Accounts of the United States」によると、アメリカの家計金融資産(2021年3月末)は109.6兆ドルと、1年前(2020年3月末)と比較して+25.7%、3ヶ月前(2020年12月末)と比較して+3.8%となり、過去最高を更新しました。
金融負債は17.2兆ドルと、1年前と比較して+4.6%、3ヶ月前と比較して+1.1%となりました。

貯蓄種類別の推移は、以下の通りです。
コロナショックを受けて株式市場が大きく下落した2020年3月末から、株価は大きく上昇したことから、1年前と比較して、株式は+46%、投資信託は+36%の増加となりました。
・現預金:14.6兆ドル、1年前比+22.5%、3ヶ月前比+6.2%
・債券:4.6兆ドル、1年前比▲12.2%、3ヶ月前比▲9.3%
・株式:41.4兆ドル、1年前比+45.6%、3ヶ月前比+6.7%
・投資信託:14.4兆ドル、1年前比+36.0%、3ヶ月前比+4.5%
・年金:29.9兆ドル、1年前比+12.9%、3ヶ月前比+1.4%
・保険:1.9兆ドル、1年前比+7.0%、3ヶ月前比▲0.7%
・その他:2.8兆ドル、1年前比+1.3%、3ヶ月前比+1.2%

2021年3月末の貯蓄の種類別比率は、現預金が13.3%、債券が4.2%、株式が37.8%、投資信託が13.2%、保険が27.3%、年金が1.7%、その他が2.5%を占めます。

アメリカの1999年12月末以降の金融資産と金融負債、名目GDPに対する金融資産の推移
アメリカの金融資産(2020年12月末)は、1999年12月末と比較して3.05倍、金融負債(同期間)は2.51倍、金融純資産は3.19倍となりました。

アメリカの名目GDPに対する金融資産の推移は、以下の通りです。
名目GDPがこの21年間で2.17倍のなか、名目GDPに対する金融資産の比率は、1999年12月末の3.6倍から、2020年12月末は5.0倍と上昇しました。

参考
日本の金融資産と金融負債は日本銀行、名目GDPは内閣府からデータを取得。
金融資産(兆円) | 金融負債(兆円) | 金融純資産(兆円) | 名目GDP(兆円) | |
1999年12月末 | 1,402 | 412 | 990 | 528 |
2000年12月末 | 1,409 | 408 | 1,001 | 535 |
2001年12月末 | 1,388 | 399 | 989 | 532 |
2002年12月末 | 1,419 | 391 | 1,028 | 524 |
2003年12月末 | 1,458 | 386 | 1,071 | 524 |
2004年12月末 | 1,470 | 386 | 1,084 | 529 |
2005年12月末 | 1,634 | 333 | 1,301 | 533 |
2006年12月末 | 1,648 | 330 | 1,319 | 535 |
2007年12月末 | 1,605 | 325 | 1,280 | 539 |
2008年12月末 | 1,513 | 320 | 1,194 | 528 |
2009年12月末 | 1,544 | 316 | 1,228 | 495 |
2010年12月末 | 1,562 | 310 | 1,252 | 506 |
2011年12月末 | 1,563 | 307 | 1,256 | 497 |
2012年12月末 | 1,616 | 306 | 1,309 | 500 |
2013年12月末 | 1,706 | 312 | 1,394 | 509 |
2014年12月末 | 1,752 | 316 | 1,436 | 519 |
2015年12月末 | 1,782 | 322 | 1,460 | 538 |
2016年12月末 | 1,790 | 328 | 1,462 | 544 |
2017年12月末 | 1,867 | 335 | 1,532 | 553 |
2018年12月末 | 1,839 | 344 | 1,495 | 556 |
2019年12月末 | 1,889 | 351 | 1,538 | 560 |
2020年12月末 | 1,933 | 359 | 1,574 | 539 |
アメリカの金融資産と金融負債はFRB、名目GDPは総務省経済統計局からデータを取得。
金融資産(兆ドル) | 金融負債(兆ドル) | 金融純資産(兆ドル) | 名目GDP(兆ドル) | |
1999年12月末 | 34.6 | 6.8 | 27.7 | 9.6 |
2000年12月末 | 34.5 | 7.4 | 27.1 | 10.3 |
2001年12月末 | 34.7 | 8.0 | 26.7 | 10.6 |
2002年12月末 | 33.7 | 8.8 | 24.9 | 10.9 |
2003年12月末 | 37.9 | 9.9 | 28.0 | 11.5 |
2004年12月末 | 42.7 | 11.1 | 31.7 | 12.2 |
2005年12月末 | 46.2 | 12.3 | 33.9 | 13.0 |
2006年12月末 | 50.9 | 13.6 | 37.3 | 13.8 |
2007年12月末 | 54.1 | 14.5 | 39.6 | 14.5 |
2008年12月末 | 47.8 | 14.4 | 33.4 | 14.7 |
2009年12月末 | 50.6 | 14.3 | 36.4 | 14.4 |
2010年12月末 | 55.2 | 14.1 | 41.2 | 15.0 |
2011年12月末 | 56.6 | 14.0 | 42.7 | 15.5 |
2012年12月末 | 61.0 | 13.9 | 47.1 | 16.2 |
2013年12月末 | 67.7 | 14.1 | 53.6 | 16.8 |
2014年12月末 | 72.3 | 14.3 | 58.1 | 17.5 |
2015年12月末 | 73.5 | 14.5 | 59.1 | 18.2 |
2016年12月末 | 77.0 | 14.9 | 62.1 | 18.7 |
2017年12月末 | 84.0 | 15.4 | 68.6 | 19.5 |
2018年12月末 | 83.3 | 15.9 | 67.4 | 20.6 |
2019年12月末 | 94.3 | 16.4 | 77.9 | 21.4 |
2020年12月末 | 105.5 | 17.1 | 88.5 | 20.9 |




