過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とリクルートホールディングスへの投資についてコメントします。
会社概要
リクルートホールディングス(Recruit Holdings Co.,Ltd.、6098.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:資本財・サービス
産業グループ:商業・専門サービス
サブ産業グループ:人材・雇用サービス
株式時価総額:7.3兆円(日本ランキング第12位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:663億ドル(2021年3月末、MSCI)
リクルートホールディングスは、日本に本拠を置く、HRテクノロジー(テクノロジーを活用した求人広告や採用ソリューションをグルーバルに提供)、メディア&ソリューション(販促、人材)、人材派遣(国内派遣、海外派遣)の事業を展開する企業を傘下に持つ持株会社です。
HRテクノロジーは、Indeed(毎月2億人以上の求職者が利用する世界最大の求人情報検索サイト)とGlassdoor(個人ユーザーの投稿による企業レビューの提供により求職活動における情報の透明性を高めた求人プラットフォーム、毎月5,000万人以上の求職者が利用)が挙げられます。
2012年にIndeed,Inc.(2004年創業)、2018年にGlassdoor,Inc.(2007年創業)を買収しました。
販促は、SUUMO(住宅)、HotPepperBeauty(美容)、ゼクシィ(結婚)、じゃらん(旅行)、HotPepperグルメ等(飲食)、スタディサプリ(その他)、Airペイ(その他)等が挙げられます。
人材は、リクナビ(学生向け)、リクナビNEXT(社会人向け)、リクルートエージェント(転職活動をサポート)、タウンワーク(アルバイトやパート等求職者向け)等が挙げられます。
日本株式市場で第5位、資本財・サービスセクターの商業・専門サービスで第1位の浮動株調整後株式時価総額で、人材・雇用サービスに占めるリクルートホールディングスの浮動株調整後株式時価総額比率は68%です。
(参考)競合他社(人材・雇用サービス)の株式時価総額
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆2,693億円と、前年度比▲5.4%、過去3年間で年率+1.5%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・HRテクノロジー:4,233億円、前年度比▲0%
・販促/人材:6,720億円、前年度比▲11%
・人材派遣:1兆1,988億円、前年度比▲4%
セグメント別の売上高構成比は、HRテクノロジーが18%、販促/人材が29%、人材派遣が52%を占めます。
販促のサブセグメント別の売上高は、以下の通りです。
人材派遣のサブセグメント別の売上高は、以下の通りです。
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は1,628億円と、前年度比▲21.0%、過去3年間で年率▲5.3%となりました。
営業利益率は7.2%と、前年度の8.6%から悪化しました。
FY2020の調整後EBITDAは2,417億円と、前年度比▲25.7%、過去3年間で年率▲2.2%となりました。
調整後EBITDAマージンは10.6%と、前年度の13.6%から悪化しました。
セグメント別の調整後EBITDAマージンは、以下の通りです。
FY2020のEPSは80円と、前年度比▲26.3%、過去3年間で年率▲4.2%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは2,866億円と、前年度比▲5.5%、過去3年間で年率+13.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は12.6%と、前年度の12.6%とほぼ同水準となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは2,283億円と、前年度比+3.7%、過去3年間で年率+20.6%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は10.1%と、前年度の9.2%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、707億円の自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は1.5%、フリーキャッシュフロー利回りは2.6%です。
FY2020の配当利回りは0.4%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向(利益)は、30%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは20円と、前年度比▲33.3%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、前年度比▲0.9%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去5年間のROICは10%以上です。
株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+93.2%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+36.4%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく上回りました。
過去10年間(2014年10月から2021年4月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場が下落する局面では、市場全体よりドローダウンが大きいです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.7%、金利が1%上昇した場合は7.6%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+15%、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+10%、4年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は4,611円となります。
リクルートホールディングス(Recruit Holdings Co.,Ltd.、6098.T)への投資について
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は2兆2,693億円(前年度比▲5.4%)、調整後EBITDAは2,417億円(前年度比▲25.7%)、純利益は1,314億円(前年度比▲27.0%)と、減収減益となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:2兆4,500億〜2兆6,000億円、前年度比+8.0〜14.6%
・調整後EBITDA:2,700〜3,350億円、前年度比+11.7〜38.6%
・純利益:1,400〜1,900億円、前年度比+6.6〜44.6%
DCF法による目標株価は4,611円のため、2021年4月末時点の株価4,939円より低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。