過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とメタ・プラットフォームズへの投資についてコメントします。
会社概要
メタ・プラットフォームズ(Meta、FB)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・メディアおよびサービス
株式時価総額:9,356億ドル(世界ランキング第7位、2021年12月末)
メタ・プラットフォームズは、アメリカに本拠を置く、ソーシャル・ネットワーキング・サービスであるフェイスブック (Facebook)やインスタグラム(Instagram)等を提供し、メタバース事業に注力する企業です。
マーク・ザッカーバーグ氏等が2004年にフェイスブックを創業後、2012年にインスタグラムを10億ドルで買収、2014年にワッツアップを218億ドルで買収し、2021年に社名変更しました。
広告収入が売上高の約98%を占めます。
(参考)競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
アルファベット(GOOG) | 1.92兆ドル |
メタ・プラットフォームズ(FB) | 9,356億ドル |
テンセントHD/騰訊控股(0700.HK) | 5,599億ドル |
スナップ(SNAP) | 757億ドル |
バイドゥ/百度(BIDU) | 518億ドル |
ネイバー(035420.KS) | 475億ドル |
ZHD(4689.T) | 443億ドル |
カカオ(035720.KS) | 410億ドル |
クワイショウ・テクノロジー/快手科技(1024.HK) | 384億ドル |
マッチ・グループ(MTCH) | 374億ドル |
ツイッター(TWTR) | 346億ドル |
ズームインフォ・テクノロジーズ(ZI) | 259億ドル |
ピンタレスト(PINS) | 237億ドル |
ヤンデックス(YNDX) | 217億ドル |
ジロー・グループ(ZG) | 162億ドル |
売上高(地域別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は1,179億ドルと、前年度比+37.2%、過去5年間で年率+33.7%となりました。

2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は337億ドル(前年同期比+19.9%)と、コンセンサス(334億ドル)を上回りました。
メタバース等事業の売上高は8.8億ドル(前年同期比+22%)、営業利益は▲33億ドル(前年同期比赤字幅拡大)となりました。
地域別の売上高構成比は、アメリカ/カナダが47%、欧州が25%を占めます。
DAU、MAUの推移
2021Q4のDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)は19.3億件(前年同期比+4.6%)となりました。
地域別のDAUの推移は、以下の通りです。
2021Q4のMAU(月間アクティブユーザー数)は29.1億件(前年同期比+4.1%)となりました。
地域別のARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の推移は、以下の通りです。
・世界全体:11.6ドル、前年同期比+14%
・アメリカ/カナダ:60.6ドル、前年同期比+13%
・欧州:19.7ドル、前年同期比+17%
・アジア パシフィック:4.9ドル、前年同期比+21%
・その他:3.4ドル、前年同期比+24%
利益の推移
FY2021の営業利益は468億ドルと、前年度比+43.1%、過去5年間で年率+30.3%となりました。
営業利益率は39.6%と、前年度の38.0%から改善しました。

2021Q4の営業利益は126億ドル(前年同期比▲1.5%)となりました。
FY2021のEPSは13.77ドルと、前年度比+36.5%、過去5年間で年率+31.6%となりました。

2021Q4のEPSは3.67ドル(前年同期比▲5.4%)と、コンセンサス(3.83ドル)を下回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは577億ドルと、前年度比+48.9%、過去5年間で年率+29.1%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は48.9%と、前年度の45.1%から改善しました。

2021Q4の営業キャッシュフローは181億ドル(前年同期比+28.9%)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは391億ドルと、前年度比+65.5%、過去5年間で年率+27.5%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は33.2%と、前年度の27.5%から改善しました。

2021Q4のフリーキャッシュフローは127億ドル(前年同期比+35.1%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2021に445億ドルの自社株買いを実施しました。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は4.1%、フリーキャッシュフロー利回りは4.1%です。
自社株買い利回りは4.6%と高水準です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.5%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。
過去5年間のROICは30%程度と、投資効率は比較的高いです。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9勝、1敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、9勝、1敗です。
売上高(億ドル) | EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 177 | 174 | ○ | 2.12 | 1.88 | ○ |
2019Q4 | 211 | 209 | ○ | 2.56 | 2.53 | ○ |
2020Q1 | 177 | 172 | ○ | 1.71 | 1.70 | ○ |
2020Q2 | 187 | 174 | ○ | 1.80 | 1.40 | ○ |
2020Q3 | 215 | 198 | ○ | 2.71 | 1.91 | ○ |
2020Q4 | 281 | 264 | ○ | 3.88 | 3.20 | ○ |
2021Q1 | 262 | 237 | ○ | 3.30 | 2.34 | ○ |
2021Q2 | 291 | 279 | ○ | 3.61 | 3.00 | ○ |
2021Q3 | 290 | 295 | × | 3.22 | 3.17 | ○ |
2021Q4 | 337 | 334 | ○ | 3.67 | 3.83 | × |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+23.1%と、S&P500(+26.9%)を下回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+23.9%と、S&P500(年率+16.3%)を上回りました。

2021Q4の株価上昇率は▲0.9%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。

競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株価上昇率(0700.HKは香港ドル建て、035420.KS、035720.KSは韓国ウォン建て、4689.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
メタ・プラットフォームズ(FB)の株価上昇率は、2021年の1年間で+23%と、14社平均(+0%)を上回り、14社中第5位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+157%と、11社平均(+200%)を下回り、11社中第5位となりました。

過去10年間(2012年5月から2022年1月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
S&P500と比較してドローダウンが大きい傾向があります。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+0%、2年目〜3年目+5%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+0%、2年目〜3年目+5%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は280ドルとなります。
・メインシナリオ:280ドル
・アップサイドシナリオ:372ドル
・ダウンサイドシナリオ:213ドル
メタ・プラットフォームズ(Meta、FB)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は337億ドルと、コンセンサス(334億ドル)を上回りましたが、EPSは3.67ドルと、コンセンサス(3.83ドル)を下回る実績となりました。
2022Q1のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:270〜290億ドル(コンセンサス303億ドル)
決算発表を受けて、株価は200ドル代前半へ20%超急落しました。
DCF法による目標株価は280ドルのため、2022年1月末時点の株価313ドルを下回る水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.5倍(年率+4%)、FY2021のフリーキャッシュフローマージンが10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
アップルのプライバシーポリシー変更(ターゲティング広告制限)とティックトック等の競争激化によって、今後の業績は苦戦が想定されています。
メタバース事業は巨額投資中により大赤字ですが、長期的にみて成功することを期待したいと思います。
投資継続です。









