過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とインターコンチネンタル・ホテルズ・グループへの投資についてコメントします。
会社概要
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(Intercontinental Hotels Group、IHG)
ホームページ(IR):リンク先
国:イギリス
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:消費者サービス
サブ産業グループ:ホテル・リゾート・クルーズ船
浮動株調整後株式時価総額:119億ドル(2021年3月末、MSCI)
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループは、イギリスに本拠を置く、シックスセンシズ等一部高級ホテルはあるものの、ホリデイ・イン等ビジネスホテルも含めて中・低価格帯が多い大手ホテルチェーンです。
2020年12月末時点で、ホテル数(レジデンス、タイムシェア含む)は5,964、部屋数は88万超です。
FY2020の1部屋あたりの売上高(売上高全体/部屋数)は2,702ドルと、マリオット(7,428ドル)やヒルトン(4,226ドル)と比較して低いです。
ホテル・リゾート・クルーズ船に占めるインターコンチネンタル・ホテルズ・グループの浮動株調整後株式時価総額比率は8%です。
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は24億ドルと、前年度比▲48.3%、過去3年間では年率▲16.2%となりました。
ホテル・部屋数、RevPAR
FY2020のホテル数は5,964件と、前年度比+1.0%となりました。
FY2020の部屋数は88.6万室と、前年度比+0.3%となりました。
FY2020のRevPAR(販売可能客室1室あたりの売上高)の増加率(前年度比)は、以下の通りです。
・全体:前年度比▲52.5%
・アメリカ:前年度比▲48.5%
・欧州/中東/アフリカ/アジア:前年度比▲64.6%
・中国/香港/台湾:前年度比▲40.5%
利益の推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業利益は▲2億ドルと、前年度比赤字転落となり、営業利益率は▲6.4%と、前年度の13.6%から悪化しました。
FY2020のEPSは▲1.43ドルと、前年度比赤字転落となりました。
非GAAP EPSは0.31ドルと、前年度比▲89.6%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは1億ドルと、前年度比▲79.0%、過去5年間では年率▲26.3%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は5.7%と、前年度の14.1%から悪化しました。
FY2020の設備投資額/売上高は3.2%と、前年度の3.9%から低下しました。
FY2020のフリーキャッシュフローは1億ドルと、前年度比▲87.1%、過去5年間では年率▲32.3%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は2.5%と、前年度の10.2%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は無配となりました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
平時の益利回り(PERの逆数)は3〜4%、フリーキャッシュフロー利回りは4%程度です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020は無配となりました。
FY2016(6.329ドル)、FY2017(2.025ドル)、FY2019(2.621ドル)は特別配当が出ました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去5年間のROIC(FY2020を除く)は15〜35%程度と、投資効率は高いです。
株価上昇率
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+27%(年率+5.0%)と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率+61%(年率+9.9%)を下回りました。
競合他社(ホテル)の株価上昇率(Accorはユーロ建て、Imperialは日本円建て)は、以下の通りです。
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲5%と、9社平均(▲6%)を上回り、9社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲3%と、8社平均(+7%)を下回り、8社中第5位となりました。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.8%、金利が1%上昇した場合は6.7%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+200%、2年目+250%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+200%、2年目+250%、3年目〜10年目+8%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+200%、2年目+250%、3年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオでの目標株価は65ドルとなります。
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(Intercontinental Hotels Group、IHG)への投資について
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は24億ドルと、前年度比▲48.3%となりました。
過去5年間のROIC(FY2020を除く)は15〜35%程度と、競合他社(マリオット、ヒルトン)と比較して、投資効率は高いです。
DCF法による目標株価は65ドルのため、2021年3月末時点の株価69ドルより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.1倍(年率+12%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが13%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
新型コロナウイルスが落ち着けば、業績は急回復しますが、株価に織り込まれていると思います。
ホテルのなかでは、ヒルトン・ワールドワイドが魅力的です。