過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアディダスへの投資についてコメントします。
会社概要
アディダス(Adidas、ADS.DE)
ホームページ(IR):リンク先
国:ドイツ
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:耐久消費財・アパレル
サブ産業グループ:アパレル・アクセサリー・贅沢品
株式時価総額:562億ドル(2021年12月末)
アディダスは、ドイツに本拠を置く、大手スポーツメーカーです。
イギリスのブランドファイナンスが発表したアパレル企業のブランドランキング(2021)によると、アディダスは、ナイキ、グッチ、ルイ・ヴィトンに次いで第4位(2020:第3位)となりました。
2006年に31億ユーロで買収したリーボック(Reebok)を、2022年に21億ユーロで売却しました。
(参考)競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
LVMH モエヘネシー・ルイヴィトン(MC.PA) | 4,187億ドル |
ナイキ(NKE) | 2,638億ドル |
エルメス(RMS.PA) | 1,863億ドル |
クリスチャン・ディオール(CDI.PA) | 1,479億ドル |
ケリング(KER.PA) | 1,003億ドル |
エシロールルックスオティカ(EL.PA) | 921億ドル |
リシュモン(CFR.SW) | 851億ドル |
アディダス(ADS.DE) | 562億ドル |
ルルレモン・アスレティカ(LULU) | 506億ドル |
アンタ・スポーツ・プロダクツ/安踏体育用品(2020.HK) | 407億ドル |
シェンジョウ・インターナショナル/申洲国際(2313.HK) | 290億ドル |
VFコーポレーション(VFC) | 288億ドル |
リー・ニン/李寧(2331.HK) | 277億ドル |
モンクレール(MONC.MI) | 196億ドル |
プーマ(PUM.DE) | 186億ドル |
プラダ(1913.HK) | 166億ドル |
スウォッチ・グループ(UHR.SW) | 155億ドル |
タペストリー(TPR) | 112億ドル |
バーバリー・グループ(BRBY.L) | 99億ドル |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は212億ユーロと、前年度比+7.0%、過去5年間で年率+2.8%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・フットウェア:113億ユーロ、前年度比+12%
・スポーツウェア:87億ユーロ、前年度比+19%
・ハードウェア:12億ユーロ、前年度比+20%
セグメント別の売上高構成比は、フットウェアが53%、スポートウェアが41%を占めます。
地域別の売上高は、以下の通りです。
・欧州/中東/アフリカ:79億ユーロ、前年度比+22%
・北米:51億ユーロ、前年度比+13%
・中国/香港/台湾:46億ユーロ、前年度比+6%
・アジアパシフィック:22億ユーロ、前年度比+5%
・ラテンアメリカ:14億ユーロ、前年度比+40%
地域別の売上高構成比は、欧州/中東/アフリカが37%、北米が24%、中国/香港/台湾が22%、アジアパシフィックが10%、ラテンアメリカが7%を占めます。
利益の推移
FY2021の営業利益は20億ユーロと、前年度比+164%、過去5年間で年率+4.7%となりました。
営業利益率は9.4%と、前年度の3.8%から改善しました。
FY2021のEPSは10.90ユーロと、前年度比+393%、過去5年間で年率+15.6%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは32億ユーロと、前年度比+115%となり、過去5年間で年率+18.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は15.0%と、前年度の7.5%から改善しました。
FY2021のフリーキャッシュフローは25億ユーロと、前年度比+142%、過去5年間で年率+29.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は11.9%と、前年度の5.3%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
配当より自社株買いに力を入れています。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は4.3%、フリーキャッシュフロー利回りは5.1%です。
配当利回りは1.3%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2021の配当性向は、30%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは3.30ユーロと、前年度比+10.0%、過去5年間で年率+10.5%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.6%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
業績が悪化したFY2020を除くと、ROICは10〜20%程度であり、投資効率は悪くない水準です。
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は▲15.0%と、世界株式を投資対象とするVT(+16.0%)を下回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+11.0%と、VT(年率+12.0%)を下回りました。
競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株価上昇率(MC.PA、RMS.PA、CDI.PA、KER.PA、EL.PA、ADS.DE、MONC.MI、PUM.DEはユーロ建て、CFR.SW、UHR.SWはスイスフラン建て、2020.HK、2313.HK、2331.HK、1913.HKは香港ドル建て、BRBY.Lはポンド建て)は、以下の通りです。
アディダス(ADS.DE)の株価上昇率は、2021年の1年間で▲15%と、19社平均(+24%)を下回り、19社中第19位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+39%と、19社平均(+145%)を下回り、19社中第15位となりました。
過去10年間(2012年7月から2022年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
足もとの最大ドローダウンは▲40%超と、過去10年間で最大の下落率です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを7.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲15%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲30%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は167ユーロとなります。
・メインシナリオ:167ユーロ
・アップサイドシナリオ:218ユーロ
・ダウンサイドシナリオ:119ユーロ
アディダス(Adidas、ADS.DE)への投資について
FY2021の売上高は212億ユーロと、前年度比+7.0%、過去5年間で年率+2.8%となりました。
営業利益、キャッシュフローマージンともに、競合他社と比較して低い水準です。
DCF法による目標株価は167ユーロのため、2022年6月末時点の株価170ユーロとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.2倍(年率+2%)、フリーキャッシュフローマージンが10%まで低下することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ナイキやエルメス等競合他社の方が魅力的です。