ナイキ(NKE)決算分析と目標株価 アパレル企業のブランド力ランキング第1位 2桁増配継続中

ナイキ耐久消費財・アパレル

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とナイキへの投資についてコメントします。

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会社概要

ナイキ(Nike、NKE)

ホームページ:リンク先

国:アメリカ

セクター:一般消費財・サービス

産業グループ:耐久消費財・アパレル

サブ産業グループ:履物

株式時価総額:2,638億ドル(世界ランキング第35位、2021年12月末)

ナイキは、アメリカに本拠を置く、スポーツ用の靴やアパレルなどを製造・販売する企業です。

2021年12月に、バーチャルスニーカーなどデジタル商品を手がけるRTFKT(アーティファクト)を買収し、メタバース分野を強化しました。

イギリスのブランドファイナンスが発表したアパレル企業のブランドランキング(2021)によると、ナイキは7年連続で第1位となっており、ブランド力は健在です。

 

(参考)競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株式時価総額(2021年12月末)

 株式時価総額
LVMH モエヘネシー・ルイヴィトン(MC.PA)4,187億ドル
ナイキ(NKE)2,638億ドル
エルメス(RMS.PA)1,863億ドル
クリスチャン・ディオール(CDI.PA)1,479億ドル
ケリング(KER.PA)1,003億ドル
エシロールルックスオティカ(EL.PA)921億ドル
リシュモン(CFR.SW)851億ドル
アディダス(ADS.DE)562億ドル
ルルレモン・アスレティカ(LULU)506億ドル
アンタ・スポーツ・プロダクツ/安踏体育用品(2020.HK)407億ドル
シェンジョウ・インターナショナル/申洲国際(2313.HK)290億ドル
VFコーポレーション(VFC)288億ドル
リー・ニン/李寧(2331.HK)277億ドル
モンクレール(MONC.MI)196億ドル
プーマ(PUM.DE)186億ドル
プラダ(1913.HK)166億ドル
スウォッチ・グループ(UHR.SW)155億ドル
タペストリー(TPR)112億ドル
バーバリー・グループ(BRBY.L)99億ドル

 

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2021(2020年6月-2021年5月期)の売上高は445億ドルと、前年度比+19.1%、過去5年間で年率+6.6%となりました。

 

2022Q2(2021年9-11月期)の売上高は114億ドル(前年同期比+1.0%)と、コンセンサス(113億ドル)を上回りました。

 

セグメント別(ナイキブランドのみ)の売上高は、以下の通りです。

・フットウェア:68億ドル、前年同期比▲0%

・スポーツウェア:36億ドル、前年同期比+2%

・スポーツ関連用品:4億ドル、前年同期比+10%

セグメント別(ナイキブランドのみ)の売上高構成比は、フットウェアが63%、スポーツウェアが34%を占めます。

 

地域別(ナイキブランドのみ)の売上高は、以下の通りです。

・北米:45億ドル、前年同期比+12%

・欧州/中東/アフリカ:31億ドル、前年同期比+6%

・中国/香港/台湾:18億ドル、前年同期比▲20%

・アジアパシフィック/ラテンアメリカ:13億ドル、前年同期比▲8%

地域別の売上高構成比は、北米が41%、欧州/中東/アフリカが29%、中国/香港/台湾が17%を占めます。

 

利益(地域別)の推移

FY2021の営業利益は69億ドルと、前年度比+122.7%、過去5年間で年率+9.0%となりました。

営業利益率は15.6%と、前年度の8.3%から改善しました。

 

2022Q2の営業利益は15億ドル(前年同期比▲8.0%)となりました。

 

地域別のEBITマージンは、以下の通りです。

 

FY2021のEPSは3.56ドルと、前年度比+122.5%、過去5年間で年率+10.5%となりました。

 

2022Q2のEPSは0.83ドル(前年同期比+6.4%)と、コンセンサス(0.62ドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2021の営業キャッシュフローは67億ドルと、前年度比+167.9%、過去5年間で年率+14.4%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は14.9%と、前年度の6.6%から改善しました。

ナイキ

 

2022Q2の営業キャッシュフローは28億ドル(前年同期比+11.9%)となりました。

 

FY2021のフリーキャッシュフローは60億ドルと、前年度比+326.2%、過去5年間で年率+21.5%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は13.4%と、前年度の3.7%から改善しました。

ナイキ

 

2022Q2のフリーキャッシュフローは26億ドル(前年同期比+11.9%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2021を除いて、自社株買いに積極的です。

ナイキ

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2021の益利回り(PERの逆数)は2.6%、フリーキャッシュフロー利回りは2.7%です。

FY2021の配当利回りは0.8%です。

ナイキ

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

FY2020の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに30%以下です。

ナイキ

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2021のDPSは1.07ドルと、前年度比+12.0%、過去5年間で年率+11.5%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.6%減少しました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは15〜30%程度と、投資効率は高いです。

ナイキ

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、9勝、3敗です。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去12四半期中、9勝、2敗、1引き分けです。

 
売上高(ドル)GAAP EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q396960.680.65
2019Q41021020.620.66×
2020Q11071040.860.71
2020Q21031010.700.58
2020Q3101960.530.53
2020Q46373×-0.510.03×
2021Q1106920.950.48
2021Q21121050.780.62
2021Q3104110×0.900.76
2021Q41231100.930.51
2022Q1122125×1.161.12
2022Q21141130.830.62

 

株価上昇率

FY2021の株価上昇率は+38.4%と、S&P500(+38.1%)を上回りました。

過去5年間(2016年6月から2021年5月末)の株価上昇率は年率+19.8%と、S&P500(年率+14.9%)を上回りました。

 

2022Q2の株価上昇率は+2.7%と、S&P500(+1.0%)を上回りました。

 

競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株価上昇率(MC.PA、RMS.PA、CDI.PA、KER.PA、EL.PA、ADS.DE、MONC.MI、PUM.DEはユーロ建て、CFR.SW、UHR.SWはスイスフラン建て、2020.HK、2313.HK、2331.HK、1913.HKは香港ドル建て、BRBY.Lはポンド建て)は、以下の通りです。

ナイキ(NKE)の株価上昇率は、2021年の1年間で+18%と、19社平均(+24%)を下回り、19社中第10位となりました。

2019年1月から2021年12月の3年間では+125%と、19社平均(+145%)を下回り、19社中第7位となりました。

 

過去10年間(2012年1月から2021年12月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から20%程度下落した場合には、絶好の買い場です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

上昇トレンドです。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.4%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

ナイキ

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目+10%、7年目〜10年目+8%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目+15%、7年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目+7%、7年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は180ドルとなります。

・メインシナリオ:180ドル

・アップサイドシナリオ:247ドル

・ダウンサイドシナリオ:141ドル

ナイキ(Nike、NKE)への投資について

2022Q2(2021年9-11月期)の売上高は114億ドル(コンセンサス113億ドル)、EPSは0.83ドル(コンセンサス0.62ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。

DCF法による目標株価は180ドルのため、2021年12月末時点の株価167ドルより高い水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が2.2倍(年率+8%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが15%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

政治的な要因によって、好調な中国向け売上高が減少する可能性がある点には注意が必要ですが、ブランド力が維持される限りは、長期的にみて市場平均を上回る株価上昇率が期待できます。

高い利益率が想定されるデジタルスニーカー等メタバース分野への強化もポジティブです。

投資継続です。

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