過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とバークシャー・ハサウェイへの投資についてコメントします。
会社概要
バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway 、BRK.A、BRK.B)
ホームページ(IR):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:各種金融
サブ産業グループ:マルチセクター持株会社
株式時価総額:5,431億ドル(世界ランキング第10位、2020年12月末)
浮動株調整後株式時価総額:3,249億ドル(2020年12月末、MSCI)
バークシャー・ハサウェイは、アメリカに本拠を置く、保険(ガイコ等)や鉄道(BNSF)、公益&エネルギー、,製造業、サービス&小売(マクレーン等)といった多様な事業を運営する持株会社です。
子会社が生み出したキャッシュ(フロート)を原資として、アップルやコカ・コーラ等への投資を行うビジネスモデルです。
投資会社としての側面の方が強く、バフェットポートフォリオとしてどの銘柄が売買されたのかが非常に注目されています。
金融セクターで第2位、各種金融で第1位の浮動株調整後株式時価総額で、マルチセクター持株会社に占めるバークシャー・ハサウェイの浮動株調整後株式時価総額比率は76%です。

売上高(セグメント別)の推移
2020Q4(2020年10−12月期)の売上高は644億ドルと、前年同期比▲1.5%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・保険:176億ドル、前年同期比▲3.5%
・BNSF:57億ドル、前年同期比▲2.8%
・エネルギー:56億ドル、前年同期比+18.7%
・製造業:158億ドル、前年同期比+1.8%
・マクレーン:118億ドル、前年同期比▲11.2%
・サービス&小売:79億ドル、前年同期比+3.7%

セグメント別の売上高構成比は、保険が27%、製造業が25%を占めます。

(参考)過去5年間の売上高

現金等の推移、上場株式ポートフォリオ
2020年12月末の現金等は1,383億ドルと、高い水準です。

2020年12月末のポートフォリオ(アメリカ株)上位10銘柄は、以下の通りです。
アップル株(AAPL)に集中投資しています。

利益(セグメント別)の推移
2020Q4(2020年10−12月期)の営業利益は50億ドルと、前年同期比+13.6%となり、営業利益率は7.8%と、前年同期の6.8%から改善しました。

セグメント別の純利益は、以下の通りです。
好調な株式市場を受けて、投資利益は308億ドルとなりました。

キャッシュフローの推移
2020Q4(2020年10−12月期)の営業キャッシュフローは105億ドルと、前年同期比▲12.7%となり、営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は16.4%と、前年同期の18.5%から悪化しました。

2020Q4の設備投資額/売上高は5.4%と、前年同期の7.4%から低下しました。

2020Q4のフリーキャッシュフローは71億ドルと、前年同期比▲2.6%となり、フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は11.0%と、前年同期の11.1とほぼ同水準となりました。

(参考)過去5年間の営業キャッシュフロー

(参考)過去5年間のフリーキャッシュフロー

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いは、過去5四半期実施しました。

(参考)過去5年間の株主還元
FY2020の自社株買いは巨額です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は7.7%、フリーキャッシュフロー利回りは4.8%です。
EPSは、投資利益に大きく左右されるため、過去5年間の益利回りのブレ幅が大きいです。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の総還元性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
巨額な自社株買いによって、FY2020の発行済株式数は▲2.4%減少しました。

株価上昇率
過去1年間(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+2.4%と、S&P500の株価上昇率+16.3%を下回りました。

競合他社(各種金融)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の株価上昇率は、2020年の1年間で+2%と、12社平均(+20%)を下回り、12社中第10位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+17%と、12社平均(+48%)を下回り、12社中第10位となりました。

株式市場全体の下落局面における株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
下落相場に弱い金融セクターとしては、下落相場にやや強いと言えます。

(参考)過去5年間の株価上昇率

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.9%、金利が1%上昇した場合は6.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は291ドル(BRK.B)となります。

バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway 、BRK.A、BRK.B)への投資について
2020Q4(2020年10−12月期)の売上高は644億ドルと、前年同期比▲1.5%となりましたが、営業利益は50億ドルと、前年同期比+13.6%となり、本業での稼ぎが増加しました。
また、好調な株式市場を受けて、投資利益は308億ドルとなり、FY2020では316億ドルとなりました。
2020年12月末の現金等は1,383億ドルと、依然高い水準であり、自社株買いが期待できます。
DCF法による目標株価(BRK.B)は291ドルのため、2021年2月末時点の株価241ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.6倍(年率+5%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである11%(過去5年平均と同水準)が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
