過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とアディエン(Adyen)への投資についてコメントします。
会社概要
アディエン(Adyen、ADYEN.AS)
ホームページ(IR):リンク先
国:オランダ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:情報処理・外注サービス
浮動株調整後株式時価総額:347億ドル(2020年11月末、MSCI)
アディエンは、オランダに本拠を置く、決済サービスのプロバイダーです。
アディエンは2006年に設立され、2018年6月に公開価格240ユーロでユーロネクスト・アムステルダムに上場しました。
単一の決済プラットフォームで、世界中のオンライン決済を受け入れることができるため、各国独自の決済サービスが導入可能です。
また、リスク管理にも強みを持ち、買い手の決済データ以外の情報から不正を感知することができます。
アディエンの主なクライアントとして、Uberやアリババ、スポティファイ、マイクロソフトなどが挙げられます。
なお、イーベイ(eBay)が、決済サービスを、2003年から利用しているペイパルからアディエンへ移行することが2018年に発表され、話題となりました。
(参考)競合他社(情報処理・外注サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ビザ(V) | 5,145 |
マスターカード(MA) | 3,618 |
ペイパル (PYPL) | 3,424 |
スクエア(SQ) | 1,110 |
フィデリティ・ナショナル・インフォメーション・サービシズ(FIS) | 879 |
ADP(ADP) | 845 |
アディエン(ADYEN.AS) | 746 |
ファイサーブ(FISV) | 707 |
グローバル・ペイメンツ(GPN) | 554 |
ペイチェックス(PAYX) | 387 |
アマデウスITグループ(AMS.MC) | 332 |
アフターペイ(APT.AX) | 257 |
ワールドライン(WLN.PA) | 220 |
フリートコア・テクノロジーズ(FLT) | 213 |
ストーン(STNE) | 207 |
売上高(地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の純売上高は6.8億ユーロと、前年度比+37.7%、過去3年間で年率+46.3%となりました。

FY2020下期(2020年7−12月期)の純売上高は3.79億ユーロ(前年同期比+27.9%)となりました。

FY2020下期の地域別の純売上高は、以下の通りです。
・欧州:2.34億ユーロ、前年同期比+22%
・北米:0.77億ユーロ、前年同期比+70%
・ラテンアメリカ:0.32億ユーロ、前年同期比+6%
・アジアパシフィック:0.36億ユーロ、前年同期比+29%
・その他:0.00億ユーロ、前年同期比▲65%

地域別の純売上高構成比は、欧州が62%を占めます。

決済取扱高の推移
FY2020下期の決済取扱高は1,745億ユーロ(前年同期比+29.3%)となりました。

テイクレートは0.22%と、前年同期(0.22%)とほぼ同水準となりました。

利益の推移
FY2020のEBITDAは4.0億ユーロと、前年度比+44.1%、過去3年間で年率+59.4%となりました。
EBITDAマージンは58.8%と、前年度の56.2%から改善しました。

FY2020下期のEBITDAは2.37億ユーロ(前年同期比+35.6%)となりました。

FY2020のEPSは8.51ユーロと、前年度比+11.0%、過去3年間で年率+54.0%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは10億ユーロと、前年度比+92.0%、過去3年間で年率+71.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は27.9%と、前年度の19.9%から改善しました。

FY2020下期の営業キャッシュフローは6.8億ドル(前年同期比+72.5%)となりました。

FY2020のフリーキャッシュフローは10億ユーロと、前年度比+95.5%、過去3年間で年率+73.8%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は27.4%と、前年度の19.2%から改善しました。

2020下期のフリーキャッシュフローは6.6億ドルと、前年同期比+73.7%となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。

(参考)過去3年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は0.4%、フリーキャッシュフロー利回りは1.7%です。

(参考)過去3年間の発行済株式数
発行済株式数は、ほぼ横ばいです。

株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+160.6%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+14.3%)を上回りました。

2020Q4の株価上昇率は+21.1%と、VT ETF(+14.8%)を上回りました。

競合他社(情報処理・外注サービス)の株価上昇率(ADYEN.AS、AMS.MC、WLN.PAはユーロ建て、APT.AXはオーストラリアドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
アディエン(ADYEN.AS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+161%と、15社平均(+64%)を上回り、15社中第3位となりました。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.0%、金利が1%上昇した場合は6.9%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+30%、4年目〜7年目+20%、8年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+30%、4年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+30%、4年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は2,719ユーロとなります。

アディエン(Adyen、ADYEN.AS)への投資について
2020Q4(2020年10−12月期)の決済取扱高は975億ユーロ(前年同期比+31.8%)、純売上高は2.1億ユーロ(前年同期比+30.4%)となりました。
EBITDAマージンやキャッシュフローマージンも大きく改善しました。
DCF法による目標株価は2,719ユーロのため、2021年1月末時点の株価1,720ユーロより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が6.1倍(年率+20%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである27%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンが増加すればより高い株価上昇が期待できます。
投資継続です。





