過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とブロック(旧スクエア)への投資についてコメントします。
会社概要
ブロック(Block、SQ)
ホームページ(IR):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:情報処理・外注サービス
株式時価総額:745億ドル(2021年12月末)
ブロックは、アメリカに本拠を置く、モバイル決済企業で、2021年12月に社名をスクエアからブロックへ変更しました。
モバイル決済アプリ「Cash App」は、ビットコインや株式の売買が可能な点が、他のモバイルウォレットとの差別化要素です。
ビットコインの粗利益率は低いものの、ユーザーの取り込みや利用頻度の向上につながることから、Cash Appは非常に重要と言えます。
2022年に、市場が急拡大中の後払い決済サービス(Buy Now, Pay Later、BNPL)を手掛けるアフターペイ🇦🇺を290億ドルで買収しました。
売上高(セグメント別)の推移
FY2021(2021年1-12月期)の売上高は177億ドルと、前年度比+86.0%、過去5年間で年率+59.5%となりました。
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は40.8億ドル(前年同期比+29.1%)と、コンセンサス(40.6億ドル)を上回りました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・決済関連:13.1億ドル、前年同期比+41%
・サブスクリプション&サービス関連:7.7億ドル、前年同期比+72%
・ハードウェア:0.4億ドル、前年同期比+47%
・ビットコイン:19.6億ドル、前年同期比+12%
ビットコインの売上高構成比は48%と高い水準であるものの、粗利益構成比はわずか4%です。
GPVとテイクレートの推移
2021Q4のGPVは463ドル(前年同期比+45%)となりました。
テイクレート(粗利益ベース)は1.18%と、前年同期の1.23%から低下しました。
利益(セグメント別)の推移
2021Q4の粗利益は11.8億ドル(前年同期比+47.1%)となりました。
このうち、モバイル決済アプリ「Cash App」の粗利益は5.2億ドル(前年同期比+37%)となりました。
セグメント別の粗利益は、以下の通りです。
・決済関連:5.5億ドル、前年同期比+39%
・サブスクリプション&サービス関連:6.2億ドル、前年同期比+62%
・ハードウェア:▲0.3億ドル
・ビットコイン:0.5億ドル、前年同期比+14%
セグメント別の粗利益構成比は、決済関連が46%、サブスクリプション&サービス関連が53%、ビットコインが4%を占めます。
セグメント別の粗利益率は、以下の通りです。
ビットコインの粗利益率は2.4%と、非常に低い水準です。
FY2021の非GAAP EPSは1.71ドルと、前年度比+104%、過去5年間で年率+112%となりました。
2021Q4の非GAAP EPSは0.27ドル(前年同期比▲15.6%)と、コンセンサス(0.22ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは8.5億ドルと、前年度比+390%、過去5年間で年率+106%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は4.8%と、前年度の1.8%から改善しました。
2021Q4の営業キャッシュフローは1.8億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
FY2021のフリーキャッシュフローは7.1億ドルと、前年度比+1,956%、過去3年間で年率+45.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は4.0%と、前年度の0.3%から改善しました。
2021Q4のフリーキャッシュフローは1.4億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は0.2%、フリーキャッシュフロー利回りは0.9%です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+47.7%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、9勝、2敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去11四半期中、9勝、1敗、1引き分けです。
売上高(億ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 6 | 6 | ○ | 0.21 | 0.16 | ○ |
2019Q3 | 6 | 6 | ○ | 0.25 | 0.20 | ○ |
2019Q4 | 13 | 6 | ○ | 0.23 | 0.21 | ○ |
2020Q1 | 14 | 13 | ○ | -0.02 | 0.13 | × |
2020Q2 | 19 | 11 | ○ | 0.18 | -0.04 | ○ |
2020Q3 | 30 | 21 | ○ | 0.34 | 0.16 | ○ |
2020Q4 | 32 | 31 | ○ | 0.32 | 0.24 | ○ |
2021Q1 | 51 | 33 | ○ | 0.41 | 0.16 | ○ |
2021Q2 | 47 | 51 | × | 0.66 | 0.31 | ○ |
2021Q3 | 38 | 45 | × | 0.37 | 0.37 | ▲ |
2021Q4 | 41 | 41 | ○ | 0.27 | 0.22 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は▲25.8%と、S&P500(+26.9%)を上回りました。
過去5年間(2017年1月から2021年12月末)の株価上昇率は年率+64.0%と、S&P500(年率+16.3%)を大きく上回りました。
2021Q4の株価上昇率は▲32.7%と、S&P500(+10.6%)を下回りました。
競合他社(情報処理・外注サービス)の株価上昇率(ADYEN.AS、AMS.MC、WLN.PAはユーロ建て、APT.AXはオーストラリアドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ブロック(SQ)の株価上昇率は、2021年の1年間で▲26%と、16社平均(▲10%)を下回り、16社中第12位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+188%と、16社平均(+104%)を上回り、16社中第3位となりました。
2015年11月から2022年2月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株価が急騰した反動で、ドローダウンも非常に大きいです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを7.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜3年目+50%、4年目〜10年目+30%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜9年目+20%、10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は164ドルとなります。
・メインシナリオ:164ドル
・アップサイドシナリオ:250ドル
・ダウンサイドシナリオ:75ドル
ブロック(Block、SQ)への投資について
2021Q4(2021年10−12月期)の売上高は40.8億ドル(コンセンサス40.6億ドル)、非GAAP EPSは0.27ドル(コンセンサス0.22ドル)と、コンセンサスを上回りました。
DCF法による目標株価は164ドルのため、2022年2月末時点の株価128ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が5.7倍(年率+19%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが10%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
コロナの恩恵を受けたブロックですが、コロナ収束後も業績拡大が期待できそうです。