過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とソフトバンクグループへの投資についてコメントします。
会社概要
ソフトバンクグループ(SoftBank Group Corp.、9984.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:電気通信サービス
サブ産業グループ:無線通信サービス
株式時価総額:16.8兆円(日本ランキング第2位、2020年12月末)
ソフトバンクグループは、日本に本拠を置く、持株会社投資事業(アリババ、Tモバイル等)、ファンド事業(SVF)、ソフトバンク事業、アーム事業等を展開する企業です。
売上高の大部分がソフトバンク事業によることから、電気通信サービスセクターに分類されますが、利益の大部分はファンド事業で左右されることから、実質的には投資会社と言えます。
なお、ソフトバンクグループは、浮動株比率がやや低い(大株主は、孫正義氏25%超)ため、浮動株ベースで算出される株式指数(インデックス)の時価総額は、通常の株式時価総額と比較して小さくなります。
(参考)競合他社(電気通信サービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ベライゾン(VZ) | 2,320 |
AT&T(T) | 2,063 |
TモバイルUS(TMUS) | 1,806 |
ソフトバンクグループ(9984.T) | 1,195 |
チャイナ・モバイル(0941.HK) | 1,280 |
ドイツ・テレコム(DTE.GE) | 1,010 |
NTT(9432.T) | 952 |
KDDI(9433.T) | 703 |
ソフトバンク(9434.T) | 614 |
ボーダフォン・グループ(VOD) | 477 |
アメリカ・モービル(AMX) | 497 |
BCE(BCE) | 448 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は5兆6,282億円と、前年度比+7.4%となりました。
なお、売上高はソフトバンク事業とアーム事業からなり、売上高のほぼ全てがソフトバンク事業となります。
利益の推移
FY2020の投資損益は7.5兆円(前年度比黒字転換)となりました。
クーパンやドアダッシュ、ウーバーテクノロジーズの好調な株価を受けて、SVF事業は6.3兆円の投資損益となりました。
FY2020のEPSは2,437円と、前年度比黒字転換、過去5年間で年率+65.9%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは5,573億円と、前年度比▲50.2%、過去5年間で年率▲9.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は9.9%と、前年度の21.3%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、2.2兆円の自社株買いを実施しました。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は26.1%と、非常に高い水準です。
FY2020の総還元利回りは13.1%と、非常に高い水準です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の総還元性向は、50%前後です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは44円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+1.4%となりました。
FY2021のDPSは44円(前年度比+0.0%)の予定です。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去1年間で年率▲4.3%となりました。
株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+146.3%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+28.3%と、VT ETF(年率+11.0%)を大きく上回りました。
競合他社(電気通信サービス)の株価上昇率(9984.T、9432.T、9433.T、9434.Tは日本円建て、0941.HKは香港ドル建て、DTE.GEはユーロ建て)は、以下の通りです。
ソフトバンクグループ(9984.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+69%と、12社平均(+2%)を上回り、12社中第2位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+81%と、11社平均(+6%)を上回り、11社中第2位となりました。
過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から30%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
目標株価
複数の事業や資産を有する企業の理論的な価値を評価する方法として、各事業や資産の価値を積み上げて企業全体の価値を算出するサム・オブ・ザ・パーツ(Sum-of-the-parts)が挙げられます。
保有株式価値(2021年3月)は、以下の通りです。
・保有価値全体:29.8兆円、前年度比+13%
保有株式価値増加分のうち、株式価値上昇等が+8.0兆円、新規/追加投資が+1.6兆円、資金化が▲6.1兆円となりました。
保有資産別の株式価値構成割合は、アリババが43%、ソフトバンクが8%、SVF1が21%、SVF2が4%、Tモバイルが5%、アームが9%、上場株投資が6%を占めます。
保有株式価値から純有利子負債を差し引いたNAVは26.1兆円(前年度比+20%)となりました。
理論的な株価である1株あたりNAVは15,015円(前年度比+43%)となりました。
投資先企業の株価は大きなブレ幅があることから、株価(2021年3月末)とは大きな乖離が生じています。
なお、ソフトバンクグループのように投資企業としての側面が強い最大手の企業であるプロサス🇳🇱(実質的には、ナスパーズ🇮🇳)も、投資先企業のテンセント🇨🇳等の理論的な株価とは乖離が生じています。
投資先企業の株価動向に大きく左右されることから、メインシナリオはバリューアットリスク(VaR)95%、アップサイドシナリオは1株あたりNAV、ダウンサイドシナリオはバリューアットリスク(VaR)90%として、目標株価を算出しました。
なお、バリューアットリスク算出にあたり、SVFのリスクはアークETF(ARKF)、その他のリスクはナスダックETF(QQQ)の過去の月次収益率を用いて計算しました。
メインシナリオの目標株価は10,254円となります。
ソフトバンクグループ(SoftBank Group Corp.、9984.T)への投資について
クーパンやドアダッシュ、ウーバーテクノロジーズの好調な株価を受けて、SVF事業が牽引し、FY2020の純利益は4.99兆円となりました。
アリババ等一部保有株の売却による資金捻出で巨額の自社株買いを実施し、株価は大きく上昇しました。
目標株価は10,254円のため、2021年5月末時点の株価8,256円より高い水準です。
投資利益は一時的な利益に過ぎないということで、株価はNAVから大きく乖離しており、さらに乖離した場合は、積極的な自社株買い、もしくは非上場化に向けた対応をする可能性もあります。
全体のNAVに占めるアリババの比率が依然として4割もあるのは好みませんが、個人投資家がアメリカの上場IT企業へ個別投資するよりも、ソフトバンクグループに投資する方が報われるかもしれません。
株価が大きく下落した局面では、投資を検討したいと思います。