過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とリシュモンへの投資についてコメントします。
会社概要
リシュモン(Richemont、CFR.SW)
ホームページ(IR):リンク先
国:スイス
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:耐久消費財・アパレル
サブ産業グループ:アパレル・アクセサリー・贅沢品
株式時価総額:694億ドル(2021年6月末)
リシュモンは、スイスに本拠を置く、カルティエやヴァン・クリーフ&アーペルなどの宝飾品や、A.ランゲ&ゾーンやピアジェ、IWC、ジャガー・ルクルト、ロジェ・デュブイなどの時計に加え、クロエやダンヒルなどの服飾、モンブランなどの筆記具等、ラグジュアリー商品に特化した企業です。
(参考)競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
LVMH モエヘネシー・ルイヴィトン(MC.PA) | 3,975 |
ナイキ(NKE) | 2,441 |
エルメス(RMS.PA) | 1,521 |
クリスチャン・ディオール(CDI.PA) | 1,473 |
ケリング(KER.PA) | 1,094 |
エシロールルックスオティカ(EL.PA) | 823 |
アディダス(ADS.DE) | 731 |
リシュモン(CFR.SW) | 694 |
アンタ・スポーツ・プロダクツ/安踏体育用品(2020.HK) | 637 |
ルルレモン・アスレティカ(LULU) | 494 |
シェンジョウ・インターナショナル/申洲国際(2313.HK) | 382 |
VFコーポレーション(VFC) | 322 |
リー・ニン/李寧(2331.HK) | 309 |
プラダ(1913.HK) | 193 |
モンクレール(MONC.MI) | 183 |
スウォッチ・グループ(UHR.SW) | 178 |
プーマ(PUM.DE) | 177 |
タペストリー(TPR) | 121 |
バーバリー・グループ(BRBY.L) | 116 |
売上高(セグメント別、製品別、地域別)の推移
FY2021(2020年4月-2021年3月期)の売上高は131億ユーロと、前年度比▲7.7%、過去5年間で年率+3.5%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・宝飾品メゾン:75億ユーロ、前年度比+3%
・スペシャリスト時計メーカー:22億ユーロ、前年度比▲21%
・オンライン販売:22億ユーロ、前年度比▲9%

製品別の売上高構成比は、宝飾品が42%、時計が31%、服飾が12%、革製品が9%、筆記具が2%を占めます。

地域別の売上高構成比は、欧州が22%、中国が33%、アジア(除く中国)が19%、アメリカが18%、中東/アフリカが7%を占めます。

利益(セグメント別)の推移
FY2021の営業利益は14.8億ユーロと、前年度比▲2.6%、過去5年間で年率▲6.4%となりました。
営業利益率は11.2%と、前年度の10.7%から改善しました。

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2021のEPSは2.30ユーロと、前年度比+39.5%、過去5年間で年率▲10.2%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは32億ユーロと、前年度比+35.8%、過去5年間で年率+10.4%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は24.5%と、前年度の16.6%から改善しました。

FY2021のフリーキャッシュフローは27億ユーロと、前年度比+65.4%、過去5年間で年率+16.6%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は20.6%と、前年度の11.5%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
過去2年間、自社株買いの実施はなしです。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2021のDPSは2.00スイスフランと、前年度比+100.0%、過去5年間では年率+3.3%となりました。
業績悪化時には減配(FY2008:0.78ユーロ(FY2008までユーロ建て)→FY2009:0.30スイスフラン、FY2020:2.0スイスフラン→FY2020:1.0スイスフラン)する傾向にあります。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.1%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
ROICは低下傾向にあります。

株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+71.0%と、世界株式を投資対象とするVT ETF(+54.9%)を上回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+7.4%と、VT ETF(年率+11.0%)を下回りました。

競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株価上昇率(MC.PA、RMS.PA、CDI.PA、KER.PA、ADS.DE、MONC.MI、PUM.DEはユーロ建て、CFR.SW、UHR.SWはスイスフラン建て、2020.HK、2313.HK、2331.HK、1913.HKは香港ドル建て、BRBY.Lはポンド建て)は、以下の通りです。
リシュモン (CFR.SW)の株価上昇率は、2020年の1年間で+5%と、19社平均(+25%)を下回り、19社中第12位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲9%と、19社平均(+118%)を下回り、19社中第17位となりました。

過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から40%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.7%、金利が1%上昇した場合は6.6%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目+15%、3年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目+15%、3年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+10%、2年目+15%、3年目〜5年目+3%、6年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は137スイスフランとなります。

リシュモン(Richemont、CFR swiss)への投資について
FY2021(2020年4月-2021年3月期)の売上高は131億ユーロ(前年度比▲7.7%)、フリーキャッシュフローは27億ユーロ(前年度比+65.4%)となりました。
DCF法による目標株価は137スイスフランのため、2021年6月末時点の株価112スイスフランより高い水準です。
なお、メインシナリオは、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである21%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
この1年間で株価が急騰したことから、割安感は薄れました。







