過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とリシュモンへの投資についてコメントします。
会社概要
リシュモン(Richemont、CFR.SW)
ホームページ(IR):リンク先
国:スイス
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:耐久消費財・アパレル
サブ産業グループ:アパレル・アクセサリー・贅沢品
株式時価総額:851億ドル(2021年12月末)
リシュモンは、スイスに本拠を置く、カルティエやヴァン・クリーフ&アーペルなどの宝飾品や、A.ランゲ&ゾーンやピアジェ、IWC、ジャガー・ルクルト、ロジェ・デュブイなどの時計に加え、クロエやダンヒルなどの服飾、モンブランなどの筆記具等、ラグジュアリー商品に特化した企業です。
(参考)競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株式時価総額(2021年12月末)
株式時価総額 | |
LVMH モエヘネシー・ルイヴィトン(MC.PA) | 4,187億ドル |
ナイキ(NKE) | 2,638億ドル |
エルメス(RMS.PA) | 1,863億ドル |
クリスチャン・ディオール(CDI.PA) | 1,479億ドル |
ケリング(KER.PA) | 1,003億ドル |
エシロールルックスオティカ(EL.PA) | 921億ドル |
リシュモン(CFR.SW) | 851億ドル |
アディダス(ADS.DE) | 562億ドル |
ルルレモン・アスレティカ(LULU) | 506億ドル |
アンタ・スポーツ・プロダクツ/安踏体育用品(2020.HK) | 407億ドル |
シェンジョウ・インターナショナル/申洲国際(2313.HK) | 290億ドル |
VFコーポレーション(VFC) | 288億ドル |
リー・ニン/李寧(2331.HK) | 277億ドル |
モンクレール(MONC.MI) | 196億ドル |
プーマ(PUM.DE) | 186億ドル |
プラダ(1913.HK) | 166億ドル |
スウォッチ・グループ(UHR.SW) | 155億ドル |
タペストリー(TPR) | 112億ドル |
バーバリー・グループ(BRBY.L) | 99億ドル |
売上高(セグメント別、製品別、地域別)の推移
FY2022(2021年4月-2022年3月期)の売上高は192億ユーロと、前年度比+45.9%、過去5年間で年率+12.5%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・宝飾品メゾン:111億ユーロ、前年度比+49%
・スペシャリスト時計メーカー:34億ユーロ、前年度比+53%
・オンライン販売:28億ユーロ、前年度比+27%
製品別の売上高構成比は、宝飾品が43%、時計が32%、服飾が11%、革製品が8%、筆記具が2%を占めます。
地域別の売上高は、以下の通りです。
・欧州:45億ユーロ、前年度比+51%
・中国:55億ユーロ、前年度比+27%
・アジア(除く中国):35億ユーロ、前年度比+39%
・アメリカ大陸:43億ユーロ、前年度比+79%
・中東/アフリカ:14億ユーロ、前年度比+54%
地域別の構成比は、欧州が23%、中国が29%、アジア(除く中国)が18%、アメリカ大陸が22%、中東/アフリカが7%を占めます。
利益(セグメント別)の推移
FY2022の営業利益は34億ユーロと、前年度比+129%、過去5年間で年率+14.0%となりました。
営業利益率は17.7%と、前年度の11.2%から改善しました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2022のEPSは3.61ユーロと、前年度比+57.3%、過去5年間で年率+11.0%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2022の営業キャッシュフローは46億ユーロと、前年度比+44.1%、過去5年間で年率+23.4%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は24.2%と、前年度の24.5%から悪化しました。
FY2022のフリーキャッシュフローは38億ユーロと、前年度比+39.3%、過去5年間で年率+29.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は19.6%と、前年度の20.6%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに消極的です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2022のDPSは3.25スイスフランと、前年度比+62.5%、過去5年間で年率+12.5%となりました。
業績悪化時には減配(FY2008:0.78ユーロ(FY2008までユーロ建て)→FY2009:0.30スイスフラン、FY2020:2.0スイスフラン→FY2020:1.0スイスフラン)する傾向にあります。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+0.4%となりました。
ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
FY2022のROICは15%と改善しました。
株価上昇率
FY2022の株価上昇率は+30.0%と、世界株式を投資対象とするVT(+4.1%)を上回りました。
過去5年間(2017年4月から2022年3月末)の株価上昇率は年率+8.2%と、VT(年率+9.2%)を下回りました。
競合他社(アパレル・アクセサリー・贅沢品、履物)の株価上昇率(MC.PA、RMS.PA、CDI.PA、KER.PA、EL.PA、ADS.DE、MONC.MI、PUM.DEはユーロ建て、CFR.SW、UHR.SWはスイスフラン建て、2020.HK、2313.HK、2331.HK、1913.HKは香港ドル建て、BRBY.Lはポンド建て)は、以下の通りです。
リシュモン (CFR.SW)の株価上昇率は、2021年の1年間で+71%と、19社平均(+24%)を上回り、19社中第2位となりました。
2019年1月から2021年12月の3年間では+117%と、19社平均(+145%)を下回り、19社中第10位となりました。
過去10年間(2012年7月から2022年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から40%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを7.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ユーロ)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は124スイスフランとなります。
・メインシナリオ:124スイスフラン
・アップサイドシナリオ:156スイスフラン
・ダウンサイドシナリオ:83スイスフラン
リシュモン(Richemont、CFR swiss)への投資について
FY2022の売上高は192億ユーロ(前年度比+45.9%)、フリーキャッシュフローは38億ユーロ(前年度比+39.3%)となりました。
DCF法による目標株価は124スイスフランのため、2022年6月末時点の株価102スイスフランより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.6倍(年率+5%)、フリーキャッシュフローマージが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。