過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とハイアット・ホテルズへの投資についてコメントします。
会社概要
ハイアット・ホテルズ(Hyatt Hotels Corporation、H)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:消費者サービス
サブ産業グループ:ホテル・リゾート・クルーズ船
株式時価総額:84億ドル(2021年4月末)
ハイアット・ホテルズは、アメリカに本拠を置く、パークハイアット等ラグジュアリーホテルからハイアットプレイス等手軽なホテルまで手掛ける大手ホテルチェーンです。
2020年12月末時点で、ホテル数は982件、部屋数は23万超です。
他の大手ホテルチェーン(マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ、アコー)のホテル数は5,000超である一方、ハイアットのホテル数は約1,000と少ないですが、1ホテル数の売上高は大手5社の中では断トツトップで、1部屋あたりの売上高もマリオット・インターナショナルを抑えて1位です。
売上高(地域別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は21億ドルと、前年度比▲58.8%、過去5年間では年率▲13.7%となりました。

2020Q4の売上高は4.2億ドルと、コンセンサス(4.5億ドル)を下回りました。

ホテル・部屋数、ADR、OCC、RevPAR
FY2020のホテル数は982件と、前年度比+6.3%となりました。

FY2020の部屋数は23.8万室と、前年度比+5.2%となりました。

FY2020のADR(平均客室単価)は、以下の通りです。
・全体:147ドル、前年度比▲19.6%
・ラグジュアリー:211ドル、前年度比▲15.8%
・アッパー・アップスケール:152ドル、前年度比▲17.1%
・アップスケール:107ドル、前年度比▲20.3%

FY2020のOCC(客室稼働率)は、以下の通りです。

FY2020のRevPAR(販売可能客室1室あたりの売上高)は、以下の通りです。
なお、RevPARは、ADR×OCCによって算出可能で、ホテル業界では重要な指標です。
・全体:46.5ドル、前年度比▲65.9%
・ラグジュアリー:60.4ドル、前年度比▲67.8%
・アッパー・アップスケール:41.1ドル、前年度比▲69.7%
・アップスケール:44.1ドル、前年度比▲56.3%

利益の推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業利益は▲6億ドルと、前年度比赤字転落となりました。

FY2020のEPSは▲6.94ドルと、前年度比赤字転落となりました。
非GAAP EPSは▲5.40ドルと、前年度比赤字転落となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは▲6億ドルと、前年度比赤字転落となりました。

FY2020の設備投資額/売上高は5.9%と、前年度の7.4%から低下しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは▲7億ドルと、前年度比赤字転落となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
新型コロナウイルスによる業績悪化前までは、自社株買いに積極的でした。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)、フリーキャッシュフロー利回りともにマイナスです。
FY2017からFY2019までの総還元利回りは5%超です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2018から配当支払いを開始しました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で▲6.8%減少しました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
平時のROICは3〜6%と、投資効率は低いです。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去4四半期中、2勝、2敗です。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去4四半期中、4敗です。

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去4四半期中、4敗です。

株価上昇率
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+58%(年率+9.6%)と、S&P500の上昇率+84%(年率+12.9%)を下回りました。

競合他社(ホテル)の株価上昇率(Accorはユーロ建て、Imperialは日本円建て)は、以下の通りです。
ハイアット・ホテルズ(H)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲17%と、9社平均(▲6%)を下回り、9社中第8位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+1%と、8社平均(+7%)を下回り、8社中第4位となりました。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.2%、金利が1%上昇した場合は7.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目2億ドル、3年目〜7年目+20%、8年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目2億ドル、3年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目0億ドル、2年目2億ドル、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオでの目標株価は73ドルとなります。

ハイアット・ホテルズ(Hyatt Hotels Corporation、H)への投資について
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は106億ドルと、前年度比▲49.6%となりました。
DCF法による目標株価は73ドルのため、2021年3月末時点の株価83ドルより低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が5.4倍(年率+18%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが10%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
新型コロナウイルスが落ち着けば、業績は急回復しますが、株価に織り込まれていると思います。
ホテルのなかでは、ヒルトン・ワールドワイドが魅力的です。



