過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とフォーティネットへの投資についてコメントします。
会社概要
フォーティネット(Fortinet、FTNT)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:情報技術
産業グループ:ソフトウェア・サービス
サブ産業グループ:システム・ソフトウェア
株式時価総額:389億ドル(2021年6月末)
フォーティネットは、アメリカに本拠を置く、ファイアーウォール機能やVPN、アンチウイルス、IPS(不正侵入防止システム)等複数のセキュリティ機能を備えた統合脅威管理(UTM、Unified Threat Management)と呼ばれるセキュリティツールを提供するサイバーセキュリティ企業です。
複数のセキュリティ機能を1台に集約しているため、管理者の負担軽減や導入コスト削減などのメリットがある点が特徴です。
(参考)競合他社(システム・ソフトウェア)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
マイクロソフト(MSFT) | 20,403 |
オラクル(ORCL) | 2,173 |
サービスナウ(NOW) | 1,085 |
VMウェア(VMW) | 670 |
クラウドストライク(CRWD) | 567 |
フォーティネット(FTNT) | 389 |
パロ・アルト・ネットワークス(PANW) | 361 |
クラウドフレア(NET) | 329 |
ゼットスケーラー(ZS) | 296 |
売上高(地域別)の推移
FY2020(2020年1月-2020年12月期)の売上高は26億ドルと、前年度比+19.9%、過去3年間で年率+20.1%となりました。

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は8.0億ドル(前年同期比+30.2%)と、コンセンサス(7.4億ドル)を上回りました。

地域別の売上高は、以下の通りです。
・アメリカ:3.4億ドル、前年同期比+29%
・欧州/中東/アフリカ:3.1億ドル、前年同期比+34%
・アジアパシフィック:1.6億ドル、前年同期比+24%
地域別の売上高構成比は、アメリカが42%、欧州/中東/アフリカが38%、アジアパシフィックが20%を占めます。

顧客数、請求額の推移
顧客数は、以下の通りです。
・売上高5万ドル超:2,856件、前年同期比+35%
・売上高25万ドル超:499件、前年同期比+35%
・売上高50万ドル超:203件、前年同期比+39%
・売上高100万ドル超:79件、前年同期比+34%

請求額(会計上未認識だが顧客と契約済みの案件も含めた売上高)は9.6億ドル(前年同期比+35%)となりました。

利益の推移
2021Q2の非GAAP 営業利益は2.0億ドル(前年同期比+19.4%)となりました。

2021Q2のEPSは0.82ドルと、コンセンサス(0.65ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは0.95ドル(前年同期比+14.5%)と、コンセンサス(0.87ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは10.8億ドルと、前年度比+34.1%、過去3年間で年率+22.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は41.8%と、前年度の37.4%から改善しました。

2021Q2の営業キャッシュフローは4.2億ドル(前年同期比+69.3%)となりました。

FY2020のフリーキャッシュフローは9.1億ドルと、前年度比+26.8%、過去3年間で年率+25.5%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は35.0%と、前年度の33.1%から改善しました。

2021Q2のフリーキャッシュフローは3.9億ドル(前年同期比+82.6%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去3年間で年率▲2.0%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、8勝です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、8勝です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8半期中、8勝です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 5.5 | 5.3 | ○ | 0.46 | 0.36 | ○ | 0.67 | 0.56 | ○ |
2019Q4 | 6.2 | 6.1 | ○ | 0.67 | 0.49 | ○ | 0.77 | 0.69 | ○ |
2020Q1 | 5.8 | 5.5 | ○ | 0.60 | 0.27 | ○ | 0.60 | 0.50 | ○ |
2020Q2 | 6.2 | 6.0 | ○ | 0.68 | 0.46 | ○ | 0.83 | 0.65 | ○ |
2020Q3 | 6.5 | 6.4 | ○ | 0.75 | 0.57 | ○ | 0.88 | 0.78 | ○ |
2020Q4 | 7.5 | 7.2 | ○ | 0.89 | 0.81 | ○ | 1.06 | 0.97 | ○ |
2021Q1 | 7.1 | 6.8 | ○ | 0.64 | 0.50 | ○ | 0.81 | 0.74 | ○ |
2021Q2 | 8.0 | 7.4 | ○ | 0.82 | 0.65 | ○ | 0.95 | 0.87 | ○ |
株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+39.1%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+36.7%と、S&P500(年率+12.9%)を大きく上回りました。

2021Q2の株価上昇率は+29.2%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。

競合他社(システム・ソフトウェア)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
フォーティネット(FTNT)の株価上昇率は、2020年の1年間で+39%と、9社平均(+138%)を下回り、9社中第6位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+240%と、6社平均(+153%)を上回り、6社中第2位となりました。

過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
近年は、最高値から20%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
トレンドラインを大きく上回っており、下落リスク、もしくは日柄調整が必要です。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.8%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜3年目+20%、4年目〜5年目+15%、6年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜6年目+20%、7年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は269ドルとなります。
・メインシナリオ:269ドル
・アップサイドシナリオ:355ドル
・ダウンサイドシナリオ:213ドル
フォーティネット(Fortinet、FTNT)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は8.0億ドル(コンセンサス7.4億ドル)、非GAAP EPSは0.95ドル(コンセンサス0.87ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンス(引き上げ)は、以下の通りです。
・売上高:32.1〜32.5億ドル(コンセンサス30.60億ドル)
・非GAAP EPS:3.75〜3.90ドル(コンセンサス3.69ドル)
DCF法による目標株価は269ドルのため、2021年7月末時点の株価272ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が3.5倍(年率+13%)、フリーキャッシュフローマージンが10年後に向けて40%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
株価が大きく上昇し、割安感が薄れました。







