オラクル(ORCL)決算分析と目標株価 怒涛の自社株買いにより総還元利回りは10%超

オラクル情報技術

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とオラクルへの投資についてコメントします。

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会社概要

オラクル(Oracle、ORCL)

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国:アメリカ

セクター:情報技術

産業グループ:ソフトウェア・サービス

サブ産業グループ:システム・ソフトウェア

株式時価総額:2,173億ドル(世界ランキング第46位、2021年6月末)

オラクルは、アメリカに本拠を置く、主力のデータベース管理システムに加え、ERP(企業資源計画)、CRM(顧客関係管理)、HCM(人材管理)などの企業向けソフトウェアの開発・販売等を手掛ける企業です。

データベースの最大手であるオラクルが開発するOracle Databaseは、リレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)と呼ばれ、データを2次元の表形式で管理(Excelのようなイメージ)し、SQL言語を使用してデータを操作します。

 

(参考)競合他社(システム・ソフトウェア)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
マイクロソフト(MSFT)20,403
オラクル(ORCL)2,173
サービスナウ(NOW)1,085
VMウェア(VMW)670
クラウドストライク(CRWD)567
フォーティネット(FTNT)389
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)361
クラウドフレア(NET)329
ゼットスケーラー(ZS)296

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2021(2020年6月-2021年5月期)の売上高は405億ドルと、前年度比+3.6%、過去5年間で年率+1.8%となりました。

 

2021Q4(2021年3−5月期)の売上高は112億ドル(前年同期比+7.5%)と、コンセンサス(110億ドル)を上回りました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・クラウドサービス&ライセンスサポート:74億ドル、前年同期比+8%

・クラウドライセンス&オンプレミスライセンス:21億ドル、前年同期比+9%

・ハードウェア:9億ドル、前年同期比▲2%

・サービス:8億ドル、前年同期比+10%

セグメント別の売上高構成比は、クラウドサービス&ライセンスサポートが66%を占めます。

 

地域別の売上高は、以下の通りです。

・アメリカ大陸:61億ドル、前年同期比+6%

・欧州/中東/アフリカ:33億ドル、前年同期比+13%

・アジアパシフィック:18億ドル、前年同期比+5%

地域別の売上高構成比は、アメリカ大陸が54%を占めます。

 

利益の推移

FY2021の営業利益は152億ドルと、前年度比+9.5%、過去5年間で年率+3.8%となりました。

営業利益率は37.6%と、前年度の35.6%から改善しました。

 

2021Q4の営業利益は45億ドル(前年同期比+5.4%)となりました。

 

FY2021の非GAAP EPSは4.67ドルと、前年度比+21.3%、過去5年間で年率+12.3%となりました。

 

2021Q4のEPSは1.37ドルと、コンセンサス(1.05ドル)を上回りました。

非GAAP EPSは1.54ドル(前年同期比+28.3%)と、コンセンサス(1.33ドル)を上回りました。

 

キャッシュフローの推移

FY2021の営業キャッシュフローは159億ドルと、前年度比+20.9%、過去5年間で年率+3.0%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は39.2%と、前年度の33.6%から改善しました。

 

2021Q4の営業キャッシュフローは48億ドル(前年同期比+34.0%)となりました。

 

FY2021のフリーキャッシュフローは138億ドルと、前年度比+18.8%、過去5年間で年率+1.9%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は34.0%と、前年度の29.6%から改善しました。

 

2021Q4のフリーキャッシュフローは41億ドル(前年同期比+29.7%)となりました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

自社株買いに積極的です。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2021の益利回り(PERの逆数)は5.8%、フリーキャッシュフロー利回りは5.8%と、バリュエーション面では割安感があります。

3年連続で、総還元利回りは10%を超えました。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去3年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、30%程度です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2021のDPSは1.04ドルと、前年度比+8.3%、過去5年間で年率+11.6%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲6.8%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは20%程度であり、投資効率は悪くないですが、マイクロソフト等競合他社と比較すると劣後します。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、6勝、3敗です。

EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9半期中、9勝です。

非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9半期中、8勝、1引き分けです。

 
売上高(ドル)GAAP EPS(ドル)非GAAP EPS(ドル)
実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗実績値コンセンサス勝敗
2019Q41111091.070.891.161.08
2020Q19293×0.630.620.810.81
2020Q29697×0.690.680.900.89
2020Q398980.790.740.970.96
2020Q4104107×0.990.951.201.15
2021Q194920.720.650.930.86
2021Q298980.800.761.061.00
2021Q31011011.680.861.161.11
2021Q41121101.371.051.541.33

 

株価上昇率

FY2021の株価上昇率は+46.4%と、S&P500(+38.1%)を上回りました。

過去5年間(2016年6月から2021年5月末)の株価上昇率は年率+14.4%と、S&P500(年率+14.9%)を下回りました。

 

2021Q4の株価上昇率は+22.1%と、S&P500(+10.3%)を上回りました。

 

競合他社(システム・ソフトウェア)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。

オラクル(ORCL)の株価上昇率は、2020年の1年間で+22%と、9社平均(+138%)を下回りました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+37%と、6社平均(+153%)を下回りました。

 

過去10年間(2011年8月から2021年7月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

最高値から10〜20%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを4.8%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+1%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は90ドルとなります。

・メインシナリオ:90ドル

・アップサイドシナリオ:109ドル

・ダウンサイドシナリオ:82ドル

オラクル(Oracle、ORCL)への投資について

2021Q4(2021年3−5月期)の売上高は112億ドル(コンセンサス110億ドル)、非GAAP EPSは1.54ドル(コンセンサス1.33ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。

DCF法による目標株価は90ドルのため、2021年7月末時点の株価87ドルとほぼ同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.1倍(年率+1.0%)、フリーキャッシュフローマージンがFY2022に30%まで低下後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

成長性が乏しいため、情報技術セクターの中では相対的に高い株価上昇率は期待できませんが、バリュエーション面では割安感があり、株主還元に積極的な点は魅力的です。

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