過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とバイドゥへの投資についてコメントします。
会社概要
バイドゥ(百度/Baidu Inc、BIDU/9888.HK)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:中国
セクター:コミュニケーション・サービス
産業グループ:メディア・娯楽
サブ産業グループ:インタラクティブ・メディアおよびサービス
株式時価総額:709億ドル(2021年6月末)
バイドゥは、中国に本拠を置く、中国最大の検索エンジンの運営に加え、クラウドサービス・自動運転なども手がける企業です。
広告収入が全体の約7割を占めます。
動画配信プラットフォーム大手IQIYI(愛奇芸、アイチーイー)の過半数の株式を保有しています。
アリババとテンセントとともに大手ハイテク3社の一角(3社の頭文字からBAT)でしたが、バイドゥの業績・株式時価総額ともにアリババやテンセントから大きく引き離されました。
(参考)競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
アルファベット(GOOG) | 16,606 |
フェイスブック(FB) | 9,859 |
テンセントHD/騰訊控股(0700.HK) | 7,224 |
クワイショウ・テクノロジー/快手科技(1024.HK) | 1,074 |
スナップ(SNAP) | 1,067 |
バイドゥ/百度(BIDU) | 709 |
カカオ(035720.KS) | 622 |
ネイバー(035420.KS) | 550 |
ツイッター(TWTR) | 549 |
ピンタレスト(PINS) | 503 |
マッチ・グループ(MTCH) | 446 |
ZHD(4689.T) | 390 |
ジロー・グループ(ZG) | 303 |
ヤンデックス(YNDX) | 252 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は1,071億人民元と、前年度比▲0.3%、過去5年間で年率+10.0%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は314億人民元(前年同期比+20.4%)となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・広告収入:208億人民元、前年同期比+18%
・その他:105億人民元、前年同期比+26%
セグメント別の売上高構成比は、広告収入が66%を占めます。
IQIYIの契約者数は1.06億人(前年同期比+1%)となりました。
利益の推移
FY2020の営業利益は143億人民元と、前年度比+127.4%、過去5年間で年率+4.2%となりました。
営業利益率は13.4%と、前年度の5.9%から改善しました。
2021Q2の営業利益は35億人民元(前年同期比▲5.0%)となりました。
FY2020の非GAAP EPS(ADS)は63.93人民元と、前年度比+22.8%、過去3年間で年率+9.0%となりました。
2021Q2の非GAAP EPSは15.41人民元(前年同期比+4.6%)となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは242億人民元と、前年度比▲15.0%、過去5年間で年率+4.1%となりました。
営業キャッシュフローマージンは22.6%と、前年度の26.5%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは79億人民元(前年同期比▲3.1%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは191億人民元と、前年度比+93.5%、過去5年間で年率+9.7%となりました。
フリーキャッシュフローマージンは17.9%と、前年度の9.2%から改善しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは54億人民元(前年同期比▲25.8%)となりました。
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+71.1%と、世界株式を投資対象とするVT(+14.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+2.7%と、VT(年率+9.9%)を下回りました。
2021Q2の株価上昇率は▲6.3%と、VT(+6.5%)を下回りました。
競合他社(インタラクティブ・メディアおよびサービス)の株価上昇率(0700.HKは香港ドル建て、035720.KS、035420.KSは韓国ウォン建て、4689.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
バイドゥ(BIDU)の株価上昇率は、2020年の1年間で+71%と、12社平均(+102%)を下回り、12社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲8%と、11社平均(+104%)を下回り、11社中第11位となりました。

過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを8.5%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億人民元)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲10%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲10%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目▲10%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は175香港ドルとなります。
・メインシナリオ:175香港ドル
・アップサイドシナリオ:220香港ドル
・ダウンサイドシナリオ:142香港ドル
バイドゥ(百度/Baidu Inc、BIDU/9888.HK)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は314億人民元(前年同期比+20.4%)、非GAAP EPSは15.41人民元(前年同期比+4.6%)となりました。
DCF法による目標株価は175香港ドルのため、2021年8月末時点の株価153香港ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.7倍(年率+5%)、FY2021にフリーキャッシュフローマージンが15%まで低下しその後横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
この10年間、テンセントの株価は10倍超になった一方、バイドゥの株価はほぼ横ばいです。
クラウドや自動運転等AIに注力し、広告収入以外の魅力的なビジネスが拡大しつつあるものの、中国政府によるIT等への規制懸念から、株価は厳しい状況です。
ナスダックの上場廃止の可能性があるため、投資するなら香港市場の上場株(9888.HK)です。









