過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とヤム・ブランズへの投資についてコメントします。
会社概要
ヤム・ブランズ(Yum! Brands、YUM)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:消費者サービス
サブ産業グループ:レストラン
浮動株調整後株式時価総額:326億ドル(2021年3月末、MSCI)
ヤム・ブランズは、アメリカに本拠を置く、KFC(ケンタッキーフライドチキン)、Pizza Hat(ピザハット)、Taco Bell(タコベル)、Habit Burger Grill(ハビットバーガーグリル)のブランドを抱えるレストランチェーンです。
一般消費財・サービスセクターの消費者サービスで第8位の浮動株調整後株式時価総額で、レストランに占めるヤム・ブランズの浮動株調整後株式時価総額比率は6%です。

売上高(セグメント別、ブランド別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は57億ドルと、前年度比+1.0%、過去5年間では年率▲2.5%となりました。

2020Q4の売上高は17.4億ドルと、前年同期比+3.0%となり、コンセンサス(17.2億ドル)を上回りました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
直営からフランチャイズへの比率を高めています。
・直営:18億ドル、前年同期比+17.1%
・フランチャイズ:38億ドル、前年同期比▲5.2%

ブランド別の売上高は、以下の通りです。
・KFC事業:23億ドル、前年同期比▲8.8%
・Pizza Hut事業:10億ドル、前年同期比▲2.4%
・Taco Bell事業:20億ドル、前年同期比▲2.3%

ブランド別売上高(フランチャイズ+直営)
FY2020のKFC事業合計の売上高は263億ドル(フランチャイズ258億ドル)と、前年度比▲5.8%となりました。

FY2020のPizza Hut事業合計の売上高は120億ドル(フランチャイズ119億ドル)と、前年度比▲7.3%となりました。

FY2020のTaco Bell事業合計の売上高は117億ドル(フランチャイズ109億ドル)と、前年度比▲0.3%となりました。

利益(ブランド別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業利益は15億ドルと、前年度比▲22.1%となり、営業利益率は26.6%と、前年度の34.5%から悪化しました。

ブランド別の営業利益率は、以下の通りです。

FY2020のEPSは2.94ドルと、前年度比▲29.0%となりました。
非GAAP EPSは3.62と、前年度比+2.0%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは13億ドルと、前年度比▲0.8%、過去5年間では年率+0.7%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は23.1%と、前年度の23.5%から改善しました。

FY2020の設備投資額/売上高は2.8%と、前年度の3.5%から低下しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは11億ドルと、前年度比+2.3%、過去5年間では年率+7.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は20.3%と、前年度の20.0%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.7%、フリーキャッシュフロー利回りは3.4%です。
総還元利回りは低下傾向にあります。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向、総還元性向は、利益・キャッシュフローベースともに100%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは1.88ドルと、前年同期比+11.9%、過去5年間では+1.6%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲7.1%減少しました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去5年間のROICは約40%超と、競合他社と比較して投資効率は非常に高いです。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、6勝、1敗、1引き分けです。

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、5勝、2敗、1引き分けです。

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、4勝、3敗、1引き分けです。

株価上昇率
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+107%(年率+15.6%)と、S&P500の上昇率+84%(年率+12.9%)を上回りました。

競合他社(レストラン)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
ヤム・ブランズ(YUM)の株価上昇率は、2020年の1年間で+8%と、10社平均(+24%)を下回り、10社中第9位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+33%と、10社平均(+84%)を下回り、10社中第7位となりました。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.5%、金利が1%上昇した場合は5.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜6年目+7%、7年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+10%、6年目〜10年目+7%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオでの目標株価は105ドルとなります。

ヤム・ブランズ(Yum! Brands、YUM)への投資について
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は57億ドルと、前年度比+1.0%となりました。
過去5年間のROICは約40%超と、競合他社と比較して投資効率は非常に高いです。
DCF法による目標株価は105ドルのため、2021年3月末時点の株価108ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.2倍(年率+2%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが30%(FY2020:20%)まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。


