過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とデンソーへの投資についてコメントします。
会社概要
デンソー(Denso Corporation、6902.T)
ホームページ(有報):リンク先
国:日本
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:自動車・自動車部品
サブ産業グループ:自動車部品・装置
株式時価総額:4.8兆円(日本ランキング第25位、2020年12月末)
デンソーは、日本に本拠を置く、サーマルシステム(カーエアコン、コンデンサ等)、パワトレインシステム(ガソリン直噴インジェクタ、高圧ポンプ等)、エレクトリフィケーションシステム(モータジェネレータ、インバータ等)、モビリティエレクトロニクス(画像センサ、ミリ波レーダ等)、センサ&セミコンダクタ(パワーカード、車輪速センサ等)、非車載の事業を展開する、世界第2位の自動車部品メーカーです。
FY2020の売上高が716億ユーロと世界最大手の自動車部品メーカーであるボッシュ🇩🇪が非上場であることから、株式時価総額ではデンソーが自動車部品メーカーで世界トップです。
(参考)競合他社(自動車部品・装置、タイヤ・ゴム)株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
デンソー(6902.T) | 531 |
アプティブ(APTV) | 426 |
ブリジストン(5108.T) | 320 |
マグナ・インターナショナル(MGA) | 284 |
コンチネンタルAG(CON.DE) | 295 |
ミシュラン(ML.PA) | 285 |
豊田自動織機(6201.T) | 274 |
フーヤオ・ガラス・インダストリー/福耀玻璃工業(3606.HK) | 218 |
ボルグワーナー(BWA) | 116 |
住友電気工業(5802.T) | 117 |
アイシン精機(7259.T) | 116 |
リア・コーポレーション(LEA) | 105 |
小糸製作所(7276.T) | 100 |
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は4兆9,367億円と、前年度比▲4.2%、過去5年間で年率+1.8%となりました。

得意先別の売上高構成比は、トヨタグループが51%、ホンダが8%、ステランティスが4%を占めます。

製品別の売上高構成比は、サーマルシステムが24%、パワトレインシステムが23%、モビリティエレクトロニクスが23%、エレクトリフィケーションシステムが20%を占めます。

地域別の売上高は、以下の通りです。
・日本:3兆1,770億円、前年度比▲3%
・北米:1兆0,262億円、前年度比▲13%
・欧州:5,197億円、前年度比▲11%
・アジア:1兆3,038億円、前年度比+2%
・その他:404億円、前年度比▲33%

地域別の売上高構成比は、日本が52%、北米が17%、欧州が9%、アジアが21%を占めます。

(参考)生産台数
国内車両生産台数は788万台(前年度比▲15%)、海外日系車生産台数は1,585万台(前年度比▲16%)、うち北米は450万台(前年度比▲18%)となりました。

利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は1,551億円と、前年度比+154%となりました。
営業利益率は3.1%と、前年度の1.2%から改善しました。

地域別の営業利益は、以下の通りです。
・日本:226億円、前年度比黒字転換
・北米:146億円、前年度比▲38%
・欧州:31億円、前年度比▲78%
・アジア:1,114億円、前年度比+8%
・その他:70億円、前年度比▲28%

FY2020のEPSは161円と、前年度比+83.6%、過去5年間で年率▲12.1%となりました。

キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは4,372億円と、前年度比▲26.6%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は8.9%と、前年度の11.6%から悪化しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは26億円と、前年度比▲98.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は0.1%と、前年度の2.5%から悪化しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、自社株買い実施はなしです。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は2.2%、フリーキャッシュフロー利回りは0.0%です。
FY2020の配当利回りは1.9%です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
FY2020の配当性向(利益)は、87%です。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは140円と、前年度比+0.0%、過去5年間で年率+3.1%となりました。
FY2021のDPSは140円(前年度比+0.0%)の予定です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.5%となりました。

ROICの推移
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。
正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。
少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。
過去2年間のROICは2〜4%と低水準です。

BPSとPBRの推移
以下のグラフは、BPSとPBR(株価は会計年度末)の推移となります。
FY2020のBPSは5,022円と、前年度比+14.5%、過去5年間で年率+5.0%となりました。
株価急上昇を受けて、FY2020のPBRは1.5倍です。

以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2021年3月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.847と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。

株価上昇率
FY2020(2020年4月から2021年3月末)の株価上昇率は+110.5%と、世界株式を投資対象とするVT ETFの上昇率(+54.9%)を上回りました。
過去5年間(2016年4月から2021年3月末)の株価上昇率は年率+6.0%と、VT ETF(年率+11.0%)を下回りました。

競合他社(自動車部品・装置、タイヤ・ゴム)の株価上昇率(6902.T、5108.T、6201.T、5802.T、7259.T、7276.Tは日本円建て、CON.DE、ML.PAはユーロ建て、3606.HKは香港ドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
デンソー(6902.T)の株価上昇率は、2020年の1年間で+24%と、13社平均(+14%)を上回り、13社中第6位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では▲9%と、13社平均(▲8%)とほぼ同水準で、13社中第5位となりました。

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場が下落する局面では、より大きなドローダウンです。

(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.3%、金利が1%上昇した場合は6.2%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億円)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+4,000%、2年目+100%、3年目〜10年目+6%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+4,000%、2年目+100%、3年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+4,000%、2年目+100%、3年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は6,102円となります。

デンソー(Denso Corporation、6902.T)への投資について
FY2020(2020年4月-2021年3月期)の売上高は4兆9,367億円(前年度比▲4.2%)、純利益は1,251億円(前年度比+83.6%)と、減収増益となりました。
FY2021のガイダンス(前提:1ドル=105円、1ユーロ=125円)は、以下の通りです。
・売上高:5兆4,600億円(前年度比+10.6%)
・営業利益:4,130億円(前年度比+166.3%)
・純利益:3,170億円(前年度比+153.5%)
DCF法による目標株価は6,102円のため、2021年4月末時点の株価7,503円より低い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.7倍(年率+5%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが4%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
世界的なEV化の流れで、電動化製品(インバータ等)に強いをもつデンソーはメリットがあります。
足もと株価が急騰しており、割高感がみられます。





