ユナイテッド・パーセル(UPS)決算分析と目標株価 世界最大の小口貨物輸送会社 アマゾン向け売上高が全体の13%超

ユナイテッドパーセル運輸

過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とユナイテッド・パーセルへの投資についてコメントします。

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会社概要

ユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service、UPS)

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国:アメリカ

セクター:資本財・サービス

産業グループ:運輸

サブ産業グループ:航空貨物・物流サービス

株式時価総額:1,456億ドル(世界ランキング第79位、2020年12月末)

浮動株調整後株式時価総額:1,191億ドル(2020年12月末、MSCI)

ユナイテッド・パーセルは、アメリカに本拠を置く、世界最大の小口貨物輸送会社です。

FY2020の売上高のうち、アマゾン向けが13.3%を占めます。

 

(参考)競合他社(航空貨物・物流サービス)の株式時価総額(2021年6月末)

 株式時価総額
(億ドル)
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)1,810
ドイツポスト(DPW.DE)844
フェデックス(FDX)792
DSVパナルピナ(DSV.CO)517
ZTOエクスプレス(ZTO)251
エクスペディターズ・インターナショナル・オブ・ワシントン(EXPO)214
XPOロジスティクス(XPO)156
CHロビンソン・ワールドワイド(CHRW)126

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の売上高は846億ドルと、前年度比+14.2%、過去5年間で年率+7.8%となりました。

 

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・米国国内:535億ドル、前年度比+15%

・海外:159億ドル、前年度比+12%

・サプライチェーン&運送:152億ドル、前年度比+13%

 

セグメント別の売上高構成比は、米国国内が63%、海外が18%、サプライチェーン&輸送が18%を占めます。

 

単価は、以下の通りです。

・国際便(国内)単価:6.7ドル、前年度比+2%

・国際便(輸出)単価:28.5ドル、前年度比▲2%

・国際便(合計)単価:17.0ドル、前年度比+0%

・全体単価:10.9ドル、前年度比+1%

 

地域別の売上高構成比は、アメリカが79%、海外が21%を占めます。

 

利益(セグメント別)の推移

FY2020の営業利益は77億ドルと、前年度比▲1.5%、過去5年間で年率+1.2%となりました。

営業利益率は9.1%と、前年度の10.5%から悪化しました。

 

セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。

 

FY2020の非GAAP EPSは8.23ドルと、前年度比+9.3%、過去5年間で年率+8.7%となりました。

 

キャッシュフローの推移

FY2020の営業キャッシュフローは105億ドルと、前年度比+21.1%、過去5年間で年率+7.1%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は12.4%と、前年度の11.7%から改善しました。

 

FY2020のフリーキャッシュフローは50億ドルと、前年度比+123%、過去5年間で年率+0.0%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は6.0%と、前年度の3.0%から改善しました。

 

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020は、自社株買いの実施はほぼなしとなりました。

 

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)

FY2020の非GAAP益利回り(PERの逆数)は4.9%、フリーキャッシュフロー利回りは3.4%です。

FY2020の配当利回りは2.4%です。

 

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向

過去5年間の配当性向(非GAAP利益ベース)は、50%前後です。

 

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)

FY2020のDPSは4.04ドルと、前年度比+5.2%、過去5年間で年率+6.7%となりました。

 

(参考)過去5年間の発行済株式数

発行済株式数は、過去5年間で年率▲0.8%となりました。

 

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われています。

過去5年間のROICは10%超と、投資効率は悪くありません。

 

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移

以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去9四半期中、6勝、3敗です。

 

以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去9四半期中、4勝、5敗です。

 

以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。

過去9四半期中、6勝、2敗、1引き分けです。

 

株価上昇率

FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は+43.9%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。

過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+11.8%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。

 

競合他社(航空貨物・物流サービス)の株価上昇率(DPW.DEはユーロ建て、DSV.COはデンマーク・クローネ建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。

ユナイテッド・パーセル(UPS)の株価上昇率は、2020年の1年間で+44%と、8社平均(+35%)を上回り、8社中第3位となりました。

2018年1月から2020年12月の3年間では+41%と、8社平均(+40%)を上回り、8社中第4位となりました。

 

過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。

 

(参考)株価の推移(月末株価)

通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。

長年、株価は横ばいで推移していましたが、2020年以降に株価が急騰しました。

 

DCF法による目標株価

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。

以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。

なお、WACCを6.3%、金利が1%上昇した場合は7.2%と推計しました。

以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%。

② アップサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜10年目+12%。11年目以降の永続成長率は0%。

③ ダウンサイドシナリオ

 フリーキャッシュフローの成長率:1年目+30%、2年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。

メインシナリオの目標株価は211ドルとなります。

 

ユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service、UPS)への投資について

FY2020(2020年1−12月期)の売上高は846億ドル(前年度比+14.2%)、非GAAP EPSは8.23ドル(前年度比+9.3%)となりました。

経済の不透明感から、FY2021のガイダンスはなしです。

DCF法による目標株価は211ドルのため、2021年5月末時点の株価215ドルと同水準です。

なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.9倍(年率+6%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが10%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。

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