過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とモンデリーズへの投資についてコメントします。
会社概要
モンデリーズ(Mondelez、MDLZ)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:生活必需品
産業グループ:食品・飲料・タバコ
サブ産業グループ:包装食品・肉
株式時価総額:877億ドル(2021年6月末)
モンデリーズは、アメリカに本拠を置く、スナック菓子等を製造・販売する企業です。
モンデリーズは、旧クラフトフーズが、北米食品事業(現在のクラフトフーズ・グループ)と、グローバルスナック事業(現在の当社)に分社化したことで、2012年10月に誕生しました。
日本では、オレオやリッツが有名です。
世界のクッキーの市場規模に占めるモンデリーズのシェアは約15%です。
(参考)競合他社(包装食品・肉)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ネスレ(NESN.SW) | 3,513 |
モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ) | 877 |
クラフト・ハインツ(KHC) | 499 |
ダノン(BN.PA) | 458 |
ゼネラル・ミルズ(GIS) | 372 |
ハーシー(HSY) | 362 |
タイソン・フーズ(TSN) | 272 |
ホーメルフーズ(HRL) | 259 |
リンツ&シュプルングリー(LISN.SW) | 257 |
アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ(ABF.L) | 247 |
マミーコック(MKC) | 236 |
チャイナ・モンニュウ・デイリー/蒙牛乳業(2319.HK) | 238 |
ケロッグ(K) | 219 |
チャイナ・フェイフー/中国飛鶴(6186.HK) | 199 |
売上高(セグメント別、製品別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は266億ドルと、前年度比+2.8%、過去5年間で年率▲2.2%となりました。

2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は66億ドル(前年同期比+12.4%)と、コンセンサス(64億ドル)を上回りました。
売上高増加率(オーガニックグロース+6.2%)のうち、価格上昇率が前年同期比+2.2%、量増加率が前年同期比+4.0%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・ラテンアメリカ:7億ドル、前年同期比+31%
・アジア/中東/アフリカ:15億ドル、前年同期比+17%
・欧州:25億ドル、前年同期比+16%
・北米:20億ドル、前年同期比+1%
セグメント別の売上高構成比は、欧州が37%、北米が31%を占めます。
製品別の売上高は、以下の通りです。
・ビスケット:33億ドル、前年同期比+7%
・チョコレート:19億ドル、前年同期比+22%
製品別の売上高構成比は、ビスケットとチョコレートが78%を占めます。
利益の推移
FY2020の営業利益は39億ドルと、前年度比+0.3%、過去5年間で年率▲15.4%となりました。
営業利益率は14.5%と、前年度の14.9%から悪化しました。

2021Q2の営業利益は9億ドル(前年同期比+22.3%)となりました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020のEPSは2.47ドルと、前年度比▲6.8%、過去5年間で年率▲11.1%となりました。

2021Q2のEPSは0.76ドルと、コンセンサス(0.60ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは0.66ドル(前年同期比+4.8%)と、コンセンサス(0.65ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは40億ドルと、前年度比▲0.0%、過去5年間で年率+1.2%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は14.9%と、前年度の15.3%から悪化しました。

2021Q2の営業キャッシュフローは9億ドル(前年同期比▲31.2%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは31億ドルと、前年度比+2.0%、過去5年間で年率+7.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は11.7%と、前年度の11.8%とほぼ同水準となりました。

2021Q2のフリーキャッシュフローは7億ドル(前年同期比▲34.5%)となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。

(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は4.2%、フリーキャッシュフロー利回りは3.7%です。
過去5年間の配当利回りは2.0%前後です。

(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去3年間の配当性向は、利益・キャッシュフローベースともに、60%を下回りました。

(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは1.20ドルと、前年度比+10.1%、過去5年間で年率+13.4%となりました。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.5%減少しました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去9四半期中、8勝、1引き分けです。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9半期中、6勝、3敗です。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去9半期中、8勝、1引き分けです。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q2 | 60.6 | 60.3 | ○ | 0.55 | 0.54 | ○ | 0.57 | 0.57 | ▲ |
2019Q3 | 63.6 | 63.4 | ○ | 0.98 | 0.58 | ○ | 0.64 | 0.60 | ○ |
2019Q4 | 69.1 | 68.4 | ○ | 0.50 | 0.57 | × | 0.61 | 0.60 | ○ |
2020Q1 | 67.1 | 66.1 | ○ | 0.52 | 0.62 | × | 0.69 | 0.66 | ○ |
2020Q2 | 59.1 | 59.1 | ▲ | 0.38 | 0.53 | × | 0.63 | 0.56 | ○ |
2020Q3 | 66.7 | 64.8 | ○ | 0.78 | 0.59 | ○ | 0.63 | 0.62 | ○ |
2020Q4 | 72.9 | 71.5 | ○ | 0.80 | 0.64 | ○ | 0.67 | 0.66 | ○ |
2021Q1 | 72.4 | 70.1 | ○ | 0.68 | 0.66 | ○ | 0.77 | 0.69 | ○ |
2021Q2 | 66.4 | 64.1 | ○ | 0.76 | 0.60 | ○ | 0.66 | 0.65 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+6.2%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+5.5%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。

2021Q2の株価上昇率は+6.7%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(包装食品・肉)の株価上昇率(NESN.SW、LISN.SWはスイスフラン建て、BN.PAはユーロ建て、ABF.Lはポンド建て、2319.HK、6186.HKは香港ドル建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
モンデリーズ(MDLZ)の株価上昇率は、2020年の1年間で+6%と、14社平均(+8%)を下回り、14社中第6位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+37%と、13社平均(+16%)を上回り、13社中第3位となりました。

過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
最高値から10%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを4.0%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+5%、3年目〜10年目+3%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+5%、2年目〜10年目+1%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は60ドルとなります。
・メインシナリオ:60ドル
・アップサイドシナリオ:70ドル
・ダウンサイドシナリオ:49ドル
モンデリーズ(Mondelez、MDLZ)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は66億ドル(コンセンサス64億ドル)、非GAAP EPSは0.66ドル(コンセンサス0.65ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高(オーガニック・グロース):+4%以上
・EPS(為替変動の影響排除):+1桁後半
・フリーキャッシュフロー:30億ドル以上
DCF法による目標株価は60ドルのため、2021年6月末時点の株価62ドルと同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.4倍(年率+3%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンである12%が10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
増収率が低いことから、長期的にみて株式市場全体を上回る株価上昇は厳しそうです。
