過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とチャールズ・シュワブへの投資についてコメントします。
会社概要
チャールズ・シュワブ(The Charles Schwab Corporation、SCHW)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:金融
産業グループ:各種金融
サブ産業グループ:投資銀行・証券会社
浮動株調整後株式時価総額:1,050億ドル(2021年6月末、MSCI)
チャールズ・シュワブは、アメリカに本拠を置く、証券仲介や資産管理など金融サービスを提供するネット証券最大手です。
2020年10月に大手ネット証券のTDアメリトレード・ホールディングを260億ドルで買収しました。
金融セクターの各種金融で第6位の浮動株調整後株式時価総額で、投資銀行・証券会社に占めるチャールズ・シュワブの浮動株調整後株式時価総額比率は25%です。
純収益(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月)の純収益は117億ドルと、前年度比+9.0%、過去5年間で年率+12.9%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の純収益は45.3億ドル(前年同期比+85%)と、コンセンサス(44.6億ドル)を上回りました。
セグメント別の純収益は、以下の通りです。
・純金利収入:19億ドル、前年同期比+40%
・資産運用&管理収入:10億ドル、前年同期比+31%
・トレーディング収入:10億ドル、前年同期比+395%
・銀行預金口座手数料:3億ドル
・その他:2億ドル、前年同期比+260%
セグメントの純収益構成比は、純金利収入が43%を占めます。
2021年6月末の預金は0.37兆ドル(前年同期比+27%)となりました。
2021Q2の資金運用利回り(純金利収入)は1.55%、預金等の資金調達コストは0.09%となりました。
2021年6月末の顧客資産残高は7.57兆ドルと、前四半期比+7%(+0.51兆ドル)となりました。
2021Q2の顧客資産残高増減額のうち、純流出入額が+0.11兆ドル、含み損益が+0.40兆ドルとなりました。
2021Q2の投資信託、ETF等運用資産残高(平均)は1.70兆ドル(前四半期比+5%)、報酬率は0.11%となりました。
2021Q2のフィー・ベースの運用資産残高(平均)は0.45兆ドル(前四半期比+6%)、報酬率は0.44%となりました。
2021Q2の1日あたり顧客平均トレード回数は604万回(前四半期比▲28%)、1トレードあたりの純収益は2.51ドル(前四半期比+6%)となりました。
(参考)過去5年間のセグメント別の純収益
(参考)過去5年間の顧客資産残高(会計年度末)
利益の推移
FY2020のEPSは2.12ドルと、前年度比▲20.6%、過去5年間で年率+15.5%となりました。
2021Q2のEPSは0.59ドル(前年同期比+23%)と、コンセンサス(0.58ドル)を上回りました。
非GAAP EPSは0.70ドルと、コンセンサス(0.71ドル)を下回りました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
FY2020は、自社株買いの実施なしです。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は4.0%と、競合他社と比較して低い水準です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向は、40%以下です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは0.72ドルと、前年度比+5.9%、過去5年間では年率+24.6%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+1.6%となりました。
ROEの推移
2021Q2のROEは10%です。
(参考)過去5年間のROE
FY2020のROEは9%です。
純収益およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、純収益のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、6勝、1敗、1引き分けです。
以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、4勝、4敗です。
以下のグラフは、非GAAP EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、5勝、1敗、1引き分けです。
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は+11.5%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+10.0%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。
2021Q2の株価上昇率は+11.7%と、S&P500(+8.2%)を上回りました。
競合他社(各種金融)の株価上昇率(ドル建て)は、以下の通りです。
チャールズ・シュワブ(SCHW)の株価上昇率は、2020年の1年間で+12%と、12社平均(+21%)を下回り、12社中第9位となりました。
2018年1月から2020年12月末の3年間では+3%と、12社平均(+48%)を下回り、12社中第12位となりました。
過去10年間(2011年7月から2021年6月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
株式市場の下落相場に弱いと言えます。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
BPSとPBRの推移
以下のグラフは、過去5年間のBPSとPBRの推移(株価は会計年度末)となります。
目標株価
以下のグラフは、株式市場全体および11セクターのPBRと予想ROE(2020年12月末、MSCI)の散布図となります。
ROEが高いほど、PBRも高いことが言えます(決定係数は0.857と、説明力は非常に高い)。
金融セクターやエネルギーセクターは、ROEが低いためPBRの観点で割安に放置されています。
メインシナリオの予想ROEを14%、アップサイドシナリオの予想ROEを18%、ダウンサイドシナリオの予想ROEを9%とし、回帰式をもとに目標株価を推計しました。
メインシナリオの目標株価は74ドルとなります。
チャールズ・シュワブ(The Charles Schwab Corporation、SCHW)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の純収益は45.3億ドルと、コンセンサス(44.6億ドル)を上回ったものの、非GAAP EPSは0.70ドルと、コンセンサス(0.71ドル)を下回る実績となりました。
顧客資産残高は順調に拡大しています。
目標株価は74ドルのため、2021年6月末時点の株価73ドルとほぼ同水準です。
ビジネスモデルは良いため、ROEが以前のように改善すれば株価上昇が期待できます。