過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とロッキード・マーティンへの投資についてコメントします。
会社概要
ロッキード・マーティン(Lockheed Martin、LMT)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:資本財・サービス
産業グループ:資本財
サブ産業グループ:航空宇宙・防衛
浮動株調整後株式時価総額:893億ドル(2020年12月末、MSCI)
ロッキード・マーティンは、アメリカに本拠を置く、軍用機やミサイル防衛システム、ヘリコプター等を製造・販売する企業です。
資本財・サービスセクターで第10位、資本財で第8位の浮動株調整後株式時価総額で、航空宇宙・防衛に占めるロッキード・マーティンの浮動株調整後株式時価総額比率は12%です。
売上高(セグメント別)の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は654億ドルと、前年度比+9.3%、過去5年間で年率+10.0%となりました。
セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・航空:263億ドル、前年度比+11%
・ミサイル:113億ドル、前年度比+11%
・ヘリコプター:160億ドル、前年度比+6%
・宇宙:119億ドル、前年度比+9%
セグメント別の売上高構成比は、航空が39%、ミサイルが17%、ヘリコプターが24%、宇宙が18%を占めます。
受注残と航空機の引き渡し数の推移
2020年12月末の受注残は1,471億ドル(前年度比+2%)となりました。
航空機の引き渡し数は、以下の通りです。
・F35:120機、前年度比▲10%
・C-130J:22機、前年度比▲21%
・政府用ヘリコプター:120機、前年度比▲6%
・海外軍事用ヘリコプター:120機、前年度比+15%
利益(セグメント別)の推移
FY2020の営業利益は86億ドルと、前年度比+1.2%、過去5年間で年率+12.9%となりました。
営業利益率は13.2%と、前年度の14.3%から悪化しました。
セグメント別の営業利益率は、以下の通りです。
FY2020のEPSは24.30ドルと、前年度比+10.7%、過去5年間で年率+16.2%となりました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは82億ドルと、前年度比+11.9%、過去5年間で年率+9.9%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は12.5%と、前年度の12.2%とほぼ同水準となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは64億ドルと、前年度比+10.1%、過去5年間で年率+9.0%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は9.8%と、前年度の9.7%とほぼ同水準となりました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
自社株買いに積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の益利回り(PERの逆数)は6.8%、フリーキャッシュフロー利回りは6.4%と、バリュエーション面で割安感があります。
FY2020の配当利回りは1.1%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去3年間の配当性向(利益)は、40%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは9.80ドルと、前年度比+8.9%、過去5年間で年率+9.8%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲2.3%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
以下のグラフは、売上高のコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、7勝、1敗です。
以下のグラフは、EPSのコンセンサスおよび実績値の推移となります。
過去8四半期中、7勝、1敗です。
株価上昇率
FY2020(2020年1月から2020年12月末)の株価上昇率は▲8.8%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+10.3%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。
競合他社(航空宇宙・防衛)の株価上昇率(AIR.PA、SAF.PA、HO.PAはユーロ建て、BA.Lはポンド建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ロッキード・マーティン(LMT)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲9%と、13社平均(▲11%)を上回り、13社中第5位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+11%と、13社平均(+27%)を下回り、13社中第6位となりました。
過去10年間(2011年6月から2021年5月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを6.5%、金利が1%上昇した場合は7.3%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+5%、6年目〜10年目+1%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は419ドルとなります。
ロッキード・マーティン(Lockheed Martin、LMT)への投資について
FY2020(2020年1−12月期)の売上高は654億ドル(前年度比+9.3%)、EPSは24.30ドル(前年度比+10.7%)と、増収増益となりました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:673〜687億ドル(コンセンサス682億ドル)
・営業利益(セグメント合計):73.8〜75.2億ドル
・EPS:26.40〜26.70ドル(コンセンサス25.96ドル)
DCF法による目標株価は419ドルのため、2021年5月末時点の株価382ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.3倍(年率+3%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンが10年間継続することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
米国政府の軍事予算が削減されたり、政府から指定されなくなるリスクがあるうえ、ESGの観点から機関投資家の資金流入は期待できないかもしれませんが、魅力的な企業です。