過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とヴィーバ・システムズへの投資についてコメントします。
会社概要
ヴィーバ・システムズ(Veeva Systems Inc.、VEEV)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:ヘルスケア
産業グループ:ヘルスケア機器・サービス
サブ産業グループ:ヘルスケア・テクノロジー
株式時価総額:476億ドル(2021年6月末)
ヴィーバ・システムズは、アメリカに本拠を置く、製薬会社向けに、顧客関係管理(CRM)や文書管理などソフトウェアをクラウドベースで提供する企業です。
創業者のピーター・ガスナーは、セールスフォースでCRMのプラットフォームを構築しました。
ヴィーバ・システムズのCRMはセールスフォースのクラウドプラットフォームに接続されているため、セールスフォースとの競合はありません。
(参考)競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
エムスリー(2413.T) | 480 |
ヴィーバ・システムズ(VEEV) | 476 |
アリババヘルス/阿里健康信息技術(0241.HK) | 304 |
サーナー(CERN) | 236 |
テラドック・ヘルス(TDOC) | 257 |
グッドアールエックスHD(GDRX) | 142 |
チェンジ・ヘルスケア(CHNG) | 71 |
オムニセル(OMCL) | 65 |
インスパイア・メディカル・システムズ(INSP) | 53 |
イノベーロン(INOV) | 53 |
売上高(セグメント別、地域別)の推移
FY2021(2020年2月-2021年1月期)の売上高は14.7億ドルと、前年度比+32.7%、過去5年間で年率+29.1%となりました。
2022Q2(2021年5−7月期)の売上高は4.6億ドル(前年同期比+28.8%)と、コンセンサス(4.5億ドル)を上回りました。
顧客数は、1,000件を超えています。

2022Q2の1株あたり売上高は前年同期比+27%、PSR(売上高は各四半期の売上高×4倍、株価は各会計四半期末)は29.7倍となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・サブスクリプション:3.7億ドル、前年同期比+29%
・その他:0.9億ドル、前年同期比+27%
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプションが80%、その他が20%を占めます。

請求額(会計上未認識だが顧客と契約済みの案件も含めた売上高)は4.1億ドル(前年同期比+33%)となりました。

利益の推移
FY2021の非GAAP 営業利益は5.8億ドルと、前年度比+41.4%、過去5年間で年率+39.9%となりました。
非GAAP 営業利益率は39.8%と、前年度の37.3%から改善しました。
2022Q2の非GAAP 営業利益は1.9億ドル(前年同期比+32.7%)となりました。

FY2021の非GAAP EPSは2.94ドルと、前年度比+34.2%、過去5年間で年率+42.0%となりました。
2022Q2のEPSは0.67ドルと、コンセンサス(0.70ドル)を下回りました。
非GAAP EPSは0.94ドル(前年同期比+30.6%)と、コンセンサス(0.86ドル)を上回りました。

キャッシュフローの推移
FY2021の営業キャッシュフローは5.5億ドルと、前年度比+26.0%、過去5年間で年率+47.1%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は37.6%と、前年度の39.6%から悪化しました。
2022Q2の営業キャッシュフローは1.2億ドル(前年同期比+13.1%)となりました。

FY2021のフリーキャッシュフローは5.4億ドルと、前年度比+25.3%、過去5年間で年率+55.9%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は37.0%と、前年度の39.2%から悪化しました。
2022Q2のフリーキャッシュフローは1.1億ドル(前年同期比+13.8%)となりました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元の実施はなしです。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2021の益利回り(PERの逆数)は0.9%、フリーキャッシュフロー利回りは1.2%です。

(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率+2.1%となりました。

売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、10勝です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、8勝、1敗、1引き分けです。
非GAAP EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去10四半期中、10勝です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | 非GAAP EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q1 | 2.4 | 2.4 | ○ | 0.47 | 0.38 | ○ | 0.50 | 0.45 | ○ |
2020Q2 | 2.7 | 2.6 | ○ | 0.50 | 0.42 | ○ | 0.55 | 0.49 | ○ |
2020Q3 | 2.8 | 2.7 | ○ | 0.52 | 0.45 | ○ | 0.60 | 0.54 | ○ |
2020Q4 | 3.1 | 3.0 | ○ | 0.42 | 0.42 | ▲ | 0.54 | 0.52 | ○ |
2021Q1 | 3.4 | 3.2 | ○ | 0.54 | 0.46 | ○ | 0.66 | 0.59 | ○ |
2021Q2 | 3.5 | 3.4 | ○ | 0.58 | 0.52 | ○ | 0.72 | 0.64 | ○ |
2021Q3 | 3.8 | 3.6 | ○ | 0.60 | 0.52 | ○ | 0.78 | 0.68 | ○ |
2021Q4 | 4.0 | 3.8 | ○ | 0.64 | 0.52 | ○ | 0.78 | 0.68 | ○ |
2022Q1 | 4.3 | 4.1 | ○ | 0.71 | 0.61 | ○ | 0.91 | 0.78 | ○ |
2022Q2 | 4.6 | 4.5 | ○ | 0.67 | 0.70 | × | 0.94 | 0.86 | ○ |
株価上昇率
FY2021の株価上昇率は+88.6%と、S&P500(+16.3%)を上回りました。
過去5年間(2016年2月から2021年1月末)の株価上昇率は年率+62.9%と、S&P500(年率+13.9%)を大きく上回りました。
2022Q2の株価上昇率は+17.8%と、S&P500(+5.1%)を上回りました。

競合他社(ヘルスケア・テクノロジー)の株価上昇率(M3は日本円建て、その他はドル建て)は、以下の通りです。
ヴィーバ・システムズ(VEEV)の株価上昇率は、2020年の1年間で+94%と、8社平均(+81%)を上回り、8社中第4位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+392%と、6社平均(+240%)を上回り、6社中第2位となりました。

2013年10月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
近年は、最高値から15%程度下落すると反発する傾向にあるため、その時が狙い目です。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。

① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜2年目+25%、3年目〜8年目+20%、9年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜5年目+25%、6年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+25%、2年目〜4年目+20%、5年目〜10年目+15%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は314ドルとなります。
・メインシナリオ:314ドル
・アップサイドシナリオ:376ドル
・ダウンサイドシナリオ:261ドル
ヴィーバ・システムズ(Veeva Systems Inc.、VEEV)への投資について
2022Q2(2021年5−7月期)の売上高は4.6億ドル(コンセンサス4.5億ドル)、非GAAP EPSは0.94ドル(コンセンサス0.86ドル)と、これまで通りコンセンサスを上回る実績となりました。
2022Q3のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:4.64〜4.66億ドル(コンセンサス4.60億ドル)
・非GAAP EPS:0.87〜0.88ドル(コンセンサス0.86ドル)
FY2022のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:18.30〜18.35億ドル(コンセンサス18.2億ドル)
・非GAAP EPS:3.57ドル(コンセンサス3.50ドル)
DCF法による目標株価は314ドルのため、2021年9月末時点の株価288ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が5.7倍(年率+19%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが40%(FY2021:37%)まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
ヘルスケアセクターのなかでは、成長率は比較的高いうえに、キャッシュフローマージンが高く、魅力的です。
ただ、製薬業界向けのセールスフォースと言われるくらいなので、情報技術セクターとしてみると、普通です。






