過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とノバルティスへの投資についてコメントします。
会社概要
ノバルティス(Novartis AG、VOVN.SW、NVS)
ホームページ(IR):リンク先
国:スイス
セクター:ヘルスケア
産業グループ:医薬品・バイオテクノロジー・ライフサイエンス
サブ産業グループ:医薬品
株式時価総額:2,048億ドル(世界ランキング第50位、2021年6月末)
ノバルティスは、スイスに本拠を置く、大手医薬品メーカーです。
(参考)競合他社(医薬品)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 4,338 |
ロシュHD(ROG.SW) | 3,257 |
イーライリリー(LLY) | 2,201 |
ファイザー(PFE) | 2,192 |
ノバルティス(NVS) | 2,048 |
メルク&カンパニー(MRK) | 1,969 |
ノボ・ノルディスク(NVO) | 1,923 |
アストラゼネカ(AZN) | 1,573 |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY) | 1,492 |
サノフィ(SNY) | 1,317 |
グラクソ・スミスクライン(GSK) | 1,002 |
ゾエティス(ZTS) | 885 |
メルクKGaA(MRK.DE) | 811 |
中外製薬(4519.T) | 655 |
バイエル(BAYN.DE) | 599 |
武田薬品工業(4502.T) | 531 |
第一三共(4568.T) | 377 |
アステラス製薬(4503.T) | 322 |
エーザイ(4523.T) | 283 |
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は487億ドルと、前年度比+2.6%、過去5年間で年率+2.7%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は130億ドル(前年同期比+14.2%)と、コンセンサス(124億ドル)を上回りました。
プロダクト別の売上高は、以下の通りです。
・コセンティクス(乾癬治療薬):12億ドル、前年同期比+24%
・エントレスト(心不全治療薬):9億ドル、前年同期比+53%
・ジレニア(多発性硬化症治療薬):7億ドル、前年同期比▲2%
・ルセンティス(眼疾患治療薬):6億ドル、前年同期比+37%
・その他:96億ドル、前年同期比+11%
プロダクト別の売上高構成比は、コセンティクス(乾癬治療薬)が9%、エントレスト(心不全治療薬)が7%を占めます。
地域別の売上高構成比は、欧州が38%、アメリカ大陸が41%、その他が21%を占めます。
利益の推移
FY2020の営業利益は102億ドルと、前年度比+11.7%、過去5年間で年率+3.6%となりました。
営業利益率は20.9%と、前年度の19.2%から改善しました。
2021Q2の営業利益は35億ドル(前年同期比+47.9%)となりました。
FY2020の調整後EPSは7.93ドルと、前年度比+7.0%、過去5年間で年率+3.4%となりました。
2021Q2のEPSは1.29ドルと、コンセンサス(1.11ドル)を上回りました。
調整後EPSは1.66ドル(前年同期比+22.1%)と、コンセンサス(1.49ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは137億ドルと、前年度比+0.2%、過去5年間で年率+2.8%となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は28.1%と、前年度の28.7%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは41億ドル(前年同期比+4.3%)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは111億ドルと、前年度比▲2.7%、過去5年間で年率+5.7%となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は22.7%と、前年度の24.0%から悪化しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
株主還元に積極的です。
(参考)過去5年間の株主還元利回り(株価は各会計年度末時点)
FY2020の調整後益利回り(PERの逆数)は6.1%、フリーキャッシュフロー利回りは5.1%です。
FY2020の配当利回りは3.3%です。
(参考)過去5年間の配当性向、総還元性向
過去5年間の配当性向(調整後利益)は、50〜60%程度です。
(参考)過去5年間のDPS(1株当たり配当金)
FY2020のDPSは3.09ドルと、前年度比+8.9%、過去5年間で年率+3.0%となりました。
(参考)過去5年間の発行済株式数
発行済株式数は、過去5年間で年率▲1.2%となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、3勝、5敗です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、2勝、6敗です。
調整後EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去8四半期中、7勝、1敗です。
売上高(ドル) | EPS(ドル) | 調整後EPS(ドル) | |||||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2019Q3 | 122 | 127 | × | 0.90 | 1.05 | × | 1.41 | 1.35 | ○ |
2019Q4 | 124 | 123 | ○ | 0.50 | 1.20 | × | 1.32 | 1.31 | ○ |
2020Q1 | 123 | 119 | ○ | 0.96 | 0.89 | ○ | 1.56 | 1.36 | ○ |
2020Q2 | 114 | 118 | × | 0.82 | 0.85 | × | 1.36 | 1.33 | ○ |
2020Q3 | 123 | 126 | × | 0.85 | 1.06 | × | 1.52 | 1.45 | ○ |
2020Q4 | 128 | 129 | × | 0.92 | 1.31 | × | 1.34 | 1.39 | × |
2021Q1 | 124 | 125 | × | 0.91 | 1.38 | × | 1.52 | 1.42 | ○ |
2021Q2 | 130 | 124 | ○ | 1.29 | 1.11 | ○ | 1.66 | 1.49 | ○ |
株価上昇率
FY2020の株価上昇率は▲0.3%と、S&P500(+16.3%)を下回りました。
過去5年間(2016年1月から2020年12月末)の株価上昇率は年率+4.6%と、S&P500(年率+12.9%)を下回りました。
2021Q2の株価上昇率は+6.7%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
競合他社(医薬品)の株価上昇率(ROG.SWはスイスフラン、MRK.DE、BAYN.DEはユーロ建て、4519.T、4502.T、4568.T、4503.T、4523.Tは日本円建て、その他はUSドル建て)は、以下の通りです。
ノバルティス(NVS)の株価上昇率は、2020年の1年間で▲0%と、19社平均(+6%)を下回り、19社中第9位となりました。
2018年1月から2020年12月の3年間では+28%と、19社平均(+46%)を下回り、19社中第9位となりました。
過去10年間(2011年9月から2021年8月)のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを5.4%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+5%、2年目〜10年目+2%。11年目以降の永続成長率は0%。
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目〜10年目+5%。11年目以降の永続成長率は0%。
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目+5%、2年目〜10年目+0%。11年目以降の永続成長率は0%。
メインシナリオの目標株価は96ドルとなります。
・メインシナリオ:96ドル
・アップサイドシナリオ:122ドル
・ダウンサイドシナリオ:82ドル
ノバルティス(Novartis AG、VOVN.SW、NVS)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は130億ドル(コンセンサス124億ドル)、調整後EPSは1.66ドル(コンセンサス1.49ドル)と、コンセンサスを上回りました。
FY2021のガイダンスは、以下の通りです。
・売上高:1桁半ばから後半
DCF法による目標株価は96ドルのため、2021年8月末時点の株価92ドルとほぼ同水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が1.3倍(年率+2%)、FY2020のフリーキャッシュフローマージンが横ばいで推移することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
売上高の成長率が低いことから、長期的にみて市場平均を上回る株価上昇率は厳しそうです。


