過去の業績の推移を解説し、目標株価の算出とエアービーアンドビーへの投資についてコメントします。
会社概要
エアービーアンドビー(Airbnb Inc.、ABNB)
ホームページ(SECファイル):リンク先
国:アメリカ
セクター:一般消費財・サービス
産業グループ:消費者サービス
サブ産業グループ:ホテル・リゾート・クルーズ船
株式時価総額:946億ドル(2021年6月末)
エアービーアンドビーは、アメリカに本拠を置く、宿泊施設を提供するホストとその宿泊者をマッチングさせるプラットフォームを提供する企業です。
エアービーアンドビーは、宿泊者から予約手数料を取ることで収益を得られます。
ホストに宿泊施設をプラットフォームに掲載してもらうことで宿泊部屋を増やすことができるため、固定資産が不要である点がホテルと大きく異なります。
(参考)競合他社(ホテル・リゾート・クルーズ船)の株式時価総額(2021年6月末)
株式時価総額 (億ドル) | |
エアビーアンドビー(ABNB) | 946 |
ブッキングHD(BKNG) | 898 |
マリオット・インターナショナル(MAR) | 445 |
ホワジュー・グループ/華住酒店集団(HTHT) | 342 |
ヒルトン・ワールドワイドHD(HLT) | 336 |
カーニバル(CCL) | 314 |
エクスペディア・グループ(EXPE) | 241 |
ロイヤル・カリビアン・クルーズ(RCL) | 217 |
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG) | 122 |
ノルウェージャンクルーズラインHD(NCLH) | 109 |
アコー(AC.PA) | 98 |
ハイアット・ホテルズ(H) | 79 |
売上高の推移
FY2020(2020年1-12月期)の売上高は33.8億ドルと、前年度比▲29.7%となりました。
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は13.4億ドル(前年同期比+298.8%)と、コンセンサス(12.7億ドル)を上回りました。
総予約代金は134億ドル(前年同期比+320%)となりました。
宿泊予約数は0.83億泊(前年同期比+197%)となりました。
平均宿泊単価は161ドル(前年同期比+41%)となりました。
地域別の売上高構成比は、アメリカが49%、その他が51%を占めます。
利益の推移
FY2020の非GAAP EBITDAは▲2.5億ドルと、前年度比同水準となりました。
非GAAP EBITDAマージンは▲7.4%と、前年度の▲5.3%から悪化しました。
2021Q2の非GAAP EBITDAは2.2億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
FY2020のEPSは▲16.12ドルと、前年度比赤字幅拡大となりました。
2021Q2のEPSは▲0.11ドル(前年同期比赤字幅縮小)と、コンセンサス(▲0.43ドル)を上回りました。
キャッシュフローの推移
FY2020の営業キャッシュフローは▲6.3億ドルと、前年度比赤字転落となりました。
営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は▲18.6%と、前年度の4.6%から悪化しました。
2021Q2の営業キャッシュフローは7.9億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
FY2020のフリーキャッシュフローは▲6.7億ドルと、前年度比赤字転落となりました。
フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲19.7%と、前年度の2.0%から悪化しました。
2021Q2のフリーキャッシュフローは7.8億ドル(前年同期比黒字転換)となりました。
売上高およびEPSの実績値とコンセンサスの推移
売上高の実績値(コンセンサス比)は、過去3四半期中、3勝です。
EPSの実績値(コンセンサス比)は、過去3四半期中、1勝、2敗です。
売上高(ドル) | GAAP EPS(ドル) | |||||
実績値 | コンセンサス | 勝敗 | 実績値 | コンセンサス | 勝敗 | |
2020Q4 | 8.6 | 7.5 | ○ | -11.24 | -8.81 | × |
2021Q1 | 8.9 | 7.2 | ○ | -1.95 | -1.14 | × |
2021Q2 | 13.4 | 12.7 | ○ | -0.11 | -0.43 | ○ |
株価上昇率
2021Q2の株価上昇率は▲18.5%と、S&P500(+8.2%)を下回りました。
2020年12月から2021年8月のドローダウン(最高値からの下落率、月末株価)の推移は、以下の通りです。
(参考)株価の推移(月末株価)
通常の目盛り表示の場合、近年の株価のブレ幅(上昇もしくは下落)が過去より非常に大きいと錯覚するため、対数目盛りで表示しています。
DCF法による目標株価
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来に渡って生み出すキャッシュフローを割り引く(WACC、加重平均資本コスト)ことで理論価格を算出します。
以下のシナリオに基づき、フリーキャッシュフローの現在価値とネット有利子負債を合計して株主価値を算出し、株主価値を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの株価を算出します。
なお、WACCを8.1%と推計しました。
以下のグラフは、各シナリオのフローキャッシュフロー(億ドル)の推移となります。
① メインシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目20億ドル、2年目〜4年目+30%、5年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
② アップサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目20億ドル、2年目〜7年目+30%、8年目〜10年目+20%。11年目以降の永続成長率は0%
③ ダウンサイドシナリオ
フリーキャッシュフローの成長率:1年目20億ドル、2年目〜10年目+10%。11年目以降の永続成長率は0%
メインシナリオの目標株価は191ドルとなります。
・メインシナリオ:191ドル
・アップサイドシナリオ:235ドル
・ダウンサイドシナリオ:83ドル
エアービーアンドビー(Airbnb Inc.、ABNB)への投資について
2021Q2(2021年4−6月期)の売上高は13.4億ドル(コンセンサス12.7億ドル)、EPSは▲0.11ドル(コンセンサス▲0.43ドル)と、コンセンサスを上回る実績となりました。
DCF法による目標株価は191ドルのため、2021年8月末時点の株価155ドルより高い水準です。
なお、メインシナリオは、10年後の売上高が9.2倍(年率+25%)、10年後に向けてフリーキャッシュフローマージンが42%まで上昇することを想定したので、売上高またはフリーキャッシュフローマージンがさらに上向けばより高い株価上昇が期待できます。
巨額な設備投資が必要で、固定資産を多く抱えるホテルよりは魅力的です。